私が女性限定コミュニティを守る理由:三原勇希とYuinaが語る、スポーツとジェンダーのはなし

女性のためのランニングコミュニティ「GO GIRL」主宰や国内外のマラソン大会に参加するなど、"楽しいランニング活動"を続けている三原勇希と、女性専用フィットネスクラブのトレーナーでもあり、ナイキ トレーナーとしても活躍するYuina。ウェルネスなライフスタイルを送る2人にきいた、日常的なスポーツの楽しさとスポーツにまつわるジェンダーのはなし。

by Natsu Shirotori; photos by Shina Peng
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30 April 2021, 5:02am

日々のルーティンというとどんなものを思い浮かべるだろうか。掃除、洗濯、料理、仕事──。人それぞれの答えが返ってくることだろうが、実はここ数十年の間にじわじわと人気を伸ばしているのが運動だ。今さら運動?と思う人もいるかもしれないが、メンタルヘルスやセルフケアへの関心はコロナ以降ますます高まっており、スポーツ庁の調査では2020年、日本におけるスポーツ実施率は過去最高を記録している。

けれども、スポーツもジェンダーの問題と無縁ではない。調査によれば、男性と比べて女性のスポーツ人口はほぼすべての年代で少ないという。爽やかなイメージのあるスポーツにも見えない壁はたしかに存在しているのだ。

そこで今回は、女性のためのランニングコミュニティ「GO GIRL」主宰や国内外のマラソン大会に参加するなど、“楽しいランニング活動”を続けているタレントの三原勇希と、女性専用フィットネスクラブ「ENERGY FIT」トレーナーでアクティビストのYuinaの対談を実施。ランニングやフィットネスは普段の生活に欠かせないという2人に、スポーツを習慣化させることのおもしろさと続ける秘訣、そして女性限定コミュニティにこだわる理由について聞いた。

友だちと過ごす1時間なら、お茶よりもランニング

──おふたりとも日常的に運動しているとのことですが、どんなところに楽しさを感じますか?

三原勇希:スポーツを理由にみんなで集まれるのも楽しいし、1人で汗かくのも気持ちいいです。元々は運動が苦手で、6年間やった部活でもずっと補欠でした。だけど初めてフルマラソンに挑戦した時に想像よりもいい結果が出たんです。誰かと競うのではなく、頑張って自分の立てた目標を達成していくところにも楽しみを見出しました。

Yuina:私は学生時代にチームスポーツをやっていたんですけど、チームメイトと協力して同じゴールを目指すのは楽しいなって思いますね。それからランニングやトレーニングは自分と向き合う時間でもあって、これまでにできなかったことができるようになると自分が常にレベルアップしているんだと感じられて楽しいです。

三原:超共感します。これが限界だってところでちょっとだけ頑張って、少しずつ自分の限界が広がっていく。スポーツはそれが目に見えて感じやすいですよね。

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YUINA WEARS TOPS NIKE SPORTSWEAR. NECKLACE STYLIST’S OWN. SKIRT ARIES. TRAINERS NIKE.

──運動を習慣化することで何か変化は生まれましたか?

三原:最初はダイエット目的で友達と一緒に走り始めたんですよね。けど、走りながら面白い写真を撮ってSNSにアップするのにハマって、楽しくて続けていたら習慣になっていました。そのうちにだんだんと自分の体のことがわかるようになっていきました。今日は体調が良くないとか、疲れがどこからきているのかとか。今では体調の乱れを調整するために走ったりもします。

習慣化できたのは、仲間の存在も大事でした。一緒に走ってくれる友達が見つかると、どうせ1時間お茶するなら、それよりも走りながら喋ろうってなるんです。辛い印象のランニングからライフスタイルの一部、友達との遊びに変化していったのが大きかったかなと思います。

Yuina:トレーナーの立場からいうと、運動を続けている人は自信がついていきます。最初にクラブに来たときは肩も丸まっていて自信がなさそうな子も、通っているうちに、背筋が良くなり口角も上がっていくんです。それから個人的には、運動を日常的にしていると、一日の生産性が上がるなあと感じます。集中力が全然違う。今は毎日継続的に体を動かしているので、やらない日が本当に物足りなく感じます。

三原:私は何かうまくいかなかった日は「反省ラン」をします。うまくいかないことがあっても、走ることによってその日のうちにひとつは頑張った事実ができるので、1日の印象が変わるんですよ。「まあ、悪くないか」って。

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YUKI WEARS JACKET AND TOPS NIKE SPORTSWEAR. NECKLACE STYLIST’S OWN. PANTS CYCLE BY MYOB. TRAINERS NIKE.

お洒落して踊りにいくマラソン大会

Yuina:高校時代はアメリカの学校だったんですけど、そこでスポーツ観が日本と大きく違うなと感じました。日本の学校だと部活でひとつのスポーツを長くやると思うんですけど、アメリカだと1年で3種目をやるカリキュラムになっているんです。だから必然的にいろんなスポーツを体験することになります。その影響なのか、学校や国全体でスポーツを楽しむ一体感があるようにも感じます。

──日本だとスポーツはストイックにやるもの、というイメージが強いように思いますが、海外ではスポーツにコミットしながらもおしゃれを楽しんだりする人も多く、バランスがいい気がします。

三原:NYのブルックリン・ハーフマラソンに出た時に同じようなことを感じました。大会前日のエキスポにDJブースがあったり、お酒が売られていたり。前日なのにみんなでどんちゃん騒ぎしていて、こんなにはっちゃけていいんだ、と楽しみ方の違いを感じました。ランニングしてからアートギャラリーに行くと無料になる日もあるみたいでした(地元のランニングコミュニティがギャラリーと交渉して作っているものかもしれないんですけど)。アメリカだと、普段からランニングやフィットネスを楽しんでいる人も多いんですか?

Yuina:フィットネスを日常生活に取り入れている人口には大きな差があると思います。日本だとフィットネスの参加率が4%くらいなのに対し、アメリカだと19%とも言われています。普段の生活にスポーツが組み込まれていて、ハードな運動ができない人でもヨガなど、何かしらできる形で取り組んでいる人が多い印象です。

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YUKI WEARS JACKET AND TOPS NIKE SPORTSWEAR. NECKLACE STYLIST’S OWN.

日常に潜む女性とスポーツの問題

──お二人が主宰・所属されているクラブは女性限定ですが、女性限定にする背景やメリットはどこにあると思いますか?

Yuina:アメリカにいた時は、レギンスにスポーツブラ1枚というスタイルで運動するのが当たり前でした。でも日本に帰国して、同じ格好で男女共用のジムに行ったら、周りからすごく視線を感じて全然集中できなかったんです。ただ運動がしたくてきたのにそれって残念だなと思って、女性専用であることによって得られる安心感もあるんだなとその時実感しました。

三原:そうですね。より安心して入会してもらえるし、女性同士だと運動面だけでなくライフスタイルにも共感できるから、結束が高まっていると実感しています。運営側には、指導と活動がしやすくなるメリットもあると思います。女性同士だと、メニューが組みやすかったり、バイオリズムを理解しやすかったり。私もYuinaさんみたいにタイツとブラで走りたいんですけど、自分は気にしていなくても周りから「それでいいの?」って言われたりすることはありますね。そういう格好をしたい時は、勝手に「ブルックリンスタイル」って呼んで友達と一緒にしています(笑)。

Yuina:周りの友達だったり、馴染みのある人がやっているとできそうな感じがしますよね。あと、今は女性限定のメリットもあるとは思うんですけど、どの基準で「女性」とするのかは葛藤がありますね。トランスジェンダーやノンバイナリーの方々のことも考えると、男女で区切るのは応急処置なのかなと思います。

Yuina:女性特有の問題でいうと、ライフステージやホルモンバランスに沿った運動の仕方が知られていない現状もありますよね。例えば、海外だとお腹が大きい方もヨガなどにシフトしてハードではない形で運動しているのに対して、日本だと妊娠をきっかけにすぐに辞めてしまう人が多い気がします。他にも、学生の方だと特に部活などの指導者が男性の場合、生理痛のケアやスポーツブラの知識などが追いついていなくて、スポーツから離れてしまうという声も聞きます。いろんな要因で日本の女性たちの中でスポーツの優先順位が低くなってしまっていると思いますが、女性専用のジムだとそういった悩みにも答えやすいのかもしれません。

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YUINA WEARS TOPS NIKE SPORTSWEAR. NECKLACE STYLIST’S OWN.

──女性がもっとスポーツを楽しめるようになるためには何が必要だと思いますか?

三原:仲間が欲しいって声をよく聞きます。なんとなく日本だと「必死に運動している姿を見られるのが恥ずかしい」という声も聞くんですけど、誰かと一緒なら楽しみやすいし、運動=一生懸命しなきゃいけないもの、でもない。もちろん、必死に頑張っている姿はかっこいい。でも必要のない価値観は、コミュニティや仲間内から少しずつ壊して、広げていきたいです。

Yuina:そうですね。それに、今までスポーツをする動機としてはダイエットが大きかったと思うのですが、メンタルケアだったり、生産性の向上だったり、体を動かすことにはいろんな魅力があると知ってほしいです。

そしてこれはメディアの課題だと思いますが、ロールモデルの少なさも改善されたらいいなと思います。大坂なおみ選手みたいに、女性で活躍するリーダーがスポーツ界や日頃自分たちが目にする世界で増えたら、もっと多くの女性が自分のポテンシャルにも気づけるはずです。


CREDIT

Text Natsu Shirotori
Photography Shina Peng
Styling Kodai Suehiro
Styling assistance Asuka Serikawa
Hair&Make-up Yunn
Edit Sogo Hiraiwa

Tagged:
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