玉名ラーメンについて知っておきたい10のこと

国内外での活躍が注目される19歳のトラックメイカー/アーティスト、玉名ラーメン。幼少期はクイズ番組のBGMを聞いていた? 作曲は「絵」を描くことからはじまる? 詩的でポスト・ジャンルな楽曲が生み出される、その背景に迫る。

by Sogo Hiraiwa; photos by Ittetsu Matsuoka
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29 October 2020, 11:00pm

「音楽はひとつのコミュニケーション」。そう話すのは、2001年生まれの玉名ラーメン。トラップ、アンビエント、ハウスが調和したトラックと詩的で繊細なボーカルで独自の世界観を作り出す、注目の若手トラックメイカー/アーティストである。そのエクスペリメンタルでポエトリーな魅力はすでに海外にも伝播しており、韓国や香港などアジア諸国からの出演オファーが来ることも珍しくない。

2019年7月にリリースされた2nd EP『organ』では、UK名門レーベル〈XL Recordings〉のプレイリスト「XL Play」にピックアップされて話題を呼んだ。10月28日には、ビクターの新レーベル「CONNECTUNE」所属後の一作目となるEP『future』のリリースした。

現在19歳、大学生になったばかりの彼女は、どのようにして音楽と出会い、アーティストになったのか。ポスト・ジャンルの注目アーティスト、玉名ラーメンについて知っておきたい10のこと。

1. 現代音楽、クイズ番組を浴びて育つ

玉名ラーメンの音楽との出会いは、幼少期まで遡る。「民族音楽、クラシック、ロック、現代音楽などの音楽を父が大音量で家で流しているのが日常でした。意識しないでいろんなジャンルの音楽を聴いていた気がします。あと、当時やっていたクイズ番組のBGMが好きで、番組の内容はよくわからないままクイズ番組をよく観ていました」

2. ラッパーとしての初舞台は「ワーグナー・プロジェクト」

高校に入るタイミングで、玉名はノートパソコンを親に(課題用と称して)買ってもらい、YouTubeの動画でソフトの使い方を調べながら、少しずつトラック制作を学んでいった。学校は「友達もできず、全然好きじゃなかった」と話す。「窓ぎわでずっと音楽を聴いてました」。転機となったのが、2017年10月にKAATで9日間にわたって開催された「ワーグナー・プロジェクト」。劇場内に“ストリート”を持ち込んだこの高山明(PortB)主催の演劇では、初日にラッパーのオーディションが行われ、玉名ラーメンはそこに参加していた(他にはラッパーのなみちえや劇作家の宮﨑玲奈もいた)。当時まだ、高校一年生だった。「最終日の発表会の課題で作った曲を、記念にサウンドクラウドにアップしました」

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3. 〈玉名ラーメン〉の由来

〈玉名ラーメン〉という一度聞いたら忘れられない&食欲をそそる名前の由来はどこにあるのだろうか?「ツイッターを始めるためにアカウント名が必要だったんです。手元を見ないでiPhoneを打ったら「玉名」が出てきて、「ラーメン」はその予測変換でついてきました」。他の候補はなく、即決だった。ちなみにラーメンは「好きです」とのこと。

4. 作曲は「絵」から始める

玉名のトラックメイキングは一枚の風景を起点にして行なわれる。「曲のイメージはすごく鮮明にあります。最初にそのイメージを画用紙に描いて、その絵から音を抽出するかたちでトラックを作ります」。その風景とは、本人も見たことのない場所で、「写真みたいな感じ」で浮かび上がるものだという。

5. 歌詞は体に染み込んだら完成

玉名の魅力のひとつでもある歌詞は、モノローグであるかのような印象を与えるのと同時に、聴いている一人ひとりの深部に響く親密性を持ち合わせている。そうした歌詞はどのように立ち上がってくるのだろうか。「普段から大切にしたいと思ったことや気になるニュースをメモしているのですが、それが自然と言葉としてぽつぽつ出てきます。あとはトラックを作るときから想像している風景を言語化してみたり、その絵の周りに連想したことばを書いていったりしながら、書いては消してを繰り返しています。自分のなかで染み込んでいく感覚というか、ちゃんと身体みたいに機能してくれると思ったら完成です。言葉がしっくり自分のそばに来てくれるまでが長くて、正直歌詞を書くのは大変です。でも、結構すきです」

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6. 好きな詩

「中原中也の「秋」と黒田三郎の「道」という詩が好きで、ふとしたときに読み返します。「秋」は高校のときに父親から突然渡された中原中也全集のなかにありました。秋の憂鬱さがありありと描写されていて、読むと暗い気持ちになるのですが、空気感というか雰囲気を言葉にするのがうますぎて。黒田三郎の「道」は短いなかに、大きくて、うまく言えない感覚が詰まっている詩で、不思議と惹かれます」。音楽はインストを聴くことが多いという玉名だが、ことばに対する興味は強く、大学では文芸部を専攻している。「最近は、三島由紀夫の『海と夕焼け』と大江健三郎の『奇妙な仕事』にくらいました」。古本屋巡りも好きで、思想誌『エピステーメー』や海外の古雑誌を集めているとのこと。「最近はドイツの家具雑誌を買いました」

7. シスター・コラボレーション

玉名ラーメンのアートワークやMVを制作しているのが、彼女の2歳年上の姉・ハナだ。この姉妹コラボレーションは、玉名が高2のときに主催したライブイベントに端を発している。「ライブにビデオを流したいと伝えたのがきっかけで、制作を一緒にするようになりました」。ヴィジュアルの制作が阿吽の呼吸で進んでいくのは、イメージもグラフィックやレコード屋の好みも似ている姉妹ならではだという。「最近は、アイデアを即座に共有しあえる姉妹って便利だなと感じています」

8. コロナがもたらした影響

「4月に大学に入学したのですが、すべてオンライン授業になりました。クラスメイトとZoomではじめましてをするのが新鮮でした」と学生生活におけるコロナの影響を語る玉名だが、楽曲の制作にも変化はあった。「コロナ禍になってから、しばらく絵がイメージできなくなった時期がありました。コロナの前後で比べると、歌詞もトラックも全然違う」

9. EP『future』はより内省的に

そんな転換期の真っ只中で制作したのが、最新EPとなる『future』。「去年の8月から制作を始めていたんですけど、コロナ禍になってから、それ以前に作った曲は違うなと思ったんです。以前のトラックは壮大で、相手がいる前提で喋っていたりと、外に向いていたんですが、それを作り替えていきました。内向きだけど、自分だけじゃないような曲に」

10. 玉名ラーメンにとっての音楽

音楽は感情とことばの狭間にある色みたいなものを表現できる、と玉名はいう。「音楽はひとつのコミュニケーションですね。小さい頃は喋るのがうまくなくて、初めてことばにできない感情を表現できたと思ったのが音楽でした。音楽はなくても死なないけど、生きてもいけない」。2030年にはどんなアーティストになっていたいかと聞くと、玉名ラーメンははっきりとした口調でこう答えた。「国や性別とか関係なく、自由で混沌としていて、みんなが集まれる大きなテントになりたい」

11(おまけ). クラブ

「友達がいないんですけど、クラブに行くと、挨拶するような人はいて。会話できる人がいるのでけっこう好きですね。コロナ禍で行けなくなってからは、家で爆音で音楽かけて、踊ってます。一応窓は閉めて(笑)」

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玉名ラーメンのタワーレコード限定EP 『future』は2020年10月28日に発売、購入者特典のzineはなくなり次第配布終了。