ソウルの若きクリエイター7人が語る、コロナ禍の生活とこれから。Dasom Hanが彼らを撮りおろす
既存の価値観や習慣を変えたパンデミックは、若者の日常にどんな影響を与えたのか。韓国、ソウルを拠点とするクリエイティブユース7人に彼らが考える現在の問題と、未来への思いを聞いてみた。 フォトグラファーDasom Han が彼らをキャスティングし、撮影。
Photography Dasom Han
2020年にコロナウイルスのパンデミックが発生したとき、韓国政府は効果的な検査と追跡方法で迅速に対応し、国内の症例数を比較的低く抑えることに成功しました。しかし、ほぼ1年が経過した今、当初の成功例は新たな現実へと薄れつつあります。真冬の今、国内では再び感染者が増加しており、多くの人々の日常生活が制限され続けています。
首都に住む若者たちがどのように適応しているのかを知るために、文化の形成に貢献している才能ある人たちに、彼らの生活やパンデミックが将来の見方をどのように変えたのかについて話を聞いてみました。

YOONDAERYUN, artist management
──なにをしてる人?
引越し業者。
──今いちばん興味があるのは?
自分の意識と、どうすればより良い暮らしができるのかということ。それを考えてたら、自然と内なる世界に向き合うことになった。そういうこと全般に興味がある。
──韓国の未来についてどう思う?
いろんな角度から考えられると思う。アートに限らず、自分も含めて世界のあらゆるものは絶えず変化してるから。こういう変化に僕たちがどんな態度で向き合っていくかということは、不安でもあるけど、同時に期待もしてる。未来はつらく厳しいものかもしれないし、大好きになれるかもしれないし、もしかしたらただやり過ごすだけになるかも。結局すべてはなるようにしかならないから。
──あなたの世代は韓国をどう変えると思う?
一度母に、どうして子どもを産んだのか訊いたことがあるんだけど、結婚した女性にとっては当たり前のことだから、といわれた。でも、今の世代は違う。誰もが当たり前とされてるものを疑うようになった。 今なら世界中の情報が一瞬で手に入るし、異なる価値観を知ったり、間接的にさまざまな体験ができる。つまり、この世代は素早く情報を吸収して、合理的な疑問を投げかけることができるってこと。今の世代が成長して韓国社会を引っ張っていくようになったら、この国自体も、文化、産業、芸術の分野ももっと勢いが増すはず。
──10年後の世界はどうなっていてほしい?
世界に共存する多様な考え方を尊重すれば、世界はもっと良くなると思う。でも、世界を黒か白かでしか捉えられないひとも多い。例えば自分を主体、自然を客体として捉えて、だから人間は自然を踏みにじってもいいと考えたり。この世界にはいろんな差別が存在していて、それは〈自分〉と〈相手〉を区別した瞬間から始まる。僕たちはひとつで、みんな同じだと考えるのは簡単じゃない。知識や情報を通して僕たちはひとつだということを受け入れるというより、適切な方法でそれを実際に体験することが大切。まずは世界の見方を変えること。この世界で僕たちが目にする現実は、日々変わっていくのだから。

Myokahara, artist
──韓国やソウルでオススメの場所は?
慶州かな。特に夏の慶州は最高。緑が果てしなく広がっていて、『リリイ・シュシュのすべて』を思い出す。それに建物が低いから、星もよく見える。
──これまでの人生でいちばん心躍った瞬間は?
実はワクワクすることはあまり好きじゃない。もちろん悪いことじゃないけど、何かミスをするんじゃないかって不安になるから。だから興奮したときは、「うわ、今私興奮してるな。ちょっとクールダウンしよう」って思うことにしてる。ヨガでは、自分自身を遠くから見つめることを教わる。特に怒りを感じたり、動揺したときはね。だから少し距離を置いて、自分を遠くから見つめ直すの。
──韓国の未来についてどう思う?
韓国には才能ある誠実なひとがたくさんいる。私の韓国人の友だちは優しくて、内面も外見もすごくキュートな子ばかり。韓国の未来もそうなるって信じてる。水滴穿石という言葉を体現するような、強くて優しい国。
──あなたの世代は韓国をどう変えると思う?
そういうことを予想するのは難しいな……。前はこの時代が私にはあまりしっくり来てなかったから。私の未来についての考えはすごく主観的で、自分が成し遂げたり努力したことの結果になると思う。未来の自分がどこにいても、何をしていても、とにかく自分が感じた変化を誇りに思えるといいな。

Seungmin Lee, designer
──なにをしてる人?
followlessbeautyというファッションブランドの運営。
──今いちばん興味があるのは?
最近は自分の生活。健康的でより良い生活を送って、今やっているプロジェクトを成功させ、次の計画も成功させたい。2021年はもっとお金を稼いで賢く生きたい。
──韓国の未来についてどう思う?
前は韓国人でいるのがイヤだったけど、今はもう韓国のことは否定しないし、気に入ってる。韓国に望むのは、もっと市場と文化を発展させること。韓国を拠点とするすべてのアーティストがやりたいことを全部やって、良い暮らしができるようになってほしい。未来はもっと良くなるはずだし、そうなるに違いないって信じてる。
──あなたの世代は韓国をどう変えると思う?
特定の誰かや世代に限らず、みんなが韓国を変えるために努力してると思う。あらゆる職業のひとが力を尽くせば、どんなにゆっくりで小さな変化でも、状況は変わっていくはず。
──10年後の世界はどうなっていてほしい?
みんなが自分だけの何かを持っているハイクオリティな世界。楽しくて幸せな世界。
──新型コロナウイルスによって生活に変化はあった?
最初はもっと憤りを感じていたけど、この状況が長引くにつれて怒りは収まった。
──旅行できるようになったら、まずどこに行きたい?
彼女と一緒に日本に行きたい。前はそんなに興味はなかったんだけど、なぜか旅行できなくなってからすごく行きたくなって。あとはベルリンにも行ってみたい。

Jibin, songwriter and performer
──なにをしてる人?
作曲家とパフォーマー。
──これまでの人生でいちばん心躍った瞬間は?
19歳でソウルに来たとき。
──今いちばん興味があるのは?
心から愛する方法。
──あなたの世代は韓国をどう変えると思う?
諦めることも諦められることも恐れなくていい国にする、かな?
──2021年の願いは?
この質問に答えられるようになること(笑)。ステキな仕事仲間と出会いたい。
──新型コロナウイルスによって生活に変化はあった?
実際そんなに変化はなかった。でも、いちばん悲しいのは誰かと過ごしたり直接会うチャンスが減ったこと。

Tabber, singer, songwriter, and record producer
──なにをしてる人?
シンガー、作曲家、音楽プロデューサー。
──韓国でいちばん好きな場所は? 理由も教えて。
梨泰院。差別がなくて、多様なところが好き。いろんなひとを眺めるが楽しい。
──今まで訪れたなかでいちばん心躍った場所は?
以前ハリウッドに住んでたから、僕にとっていちばん心躍る場所はLAかな。
──これまでの人生でいちばん心躍った瞬間は?
最近、初めて公式のミックステープをリリースしたこと。人生が一変したとまではいわないけど、変わりつつある予感はする。それが人生でいちばん心躍った瞬間。
──今まででいちばんワクワクした体験は?
若い頃、韓国から米国にひとりで引っ越したこと。当時は自分には挑戦が必要だと思ってた。だから思い切って挑戦して、なんとかうまくいった。今まで挑戦してきたことに後悔したことは一度もないよ。
──今いちばん興味があるのは?
音楽、映画、建築。
──10年後の世界はどうなっていてほしい?
10年後の世界は、きっとユートピアとディストピアの両方になっているはず。でも、そのふたつをうまく両立させるような世界になっていてほしい。
──2021年の願いは?
僕の曲が韓国の街なかでかかって、今よりももっと多くの人に届いてほしい。
──好きな韓国の音楽は?
ひとつに絞るのは難しいけど、もしどうしても選ぶとしたら、今の韓国の音楽業界でいちばんホットなBTSの「Dynamite」かな。

Doori Kwak , video and content director
──なにをしてる人?
映像・コンテンツディレクター。
──韓国でいちばん好きな場所は? 理由も教えて。
済州島。韓国一きれいなビーチがあるから。
──今いちばん興味があるのは?
哲学、宇宙、藻類学、音楽、ネコ。
──韓国の未来についてどう思う?
ポジティブな未来を願ってる。韓国には、どんな問題も素早く解決して変化に慣れようとするひとが多い。対立はなくならないと思うけど、きっとそれが表面化する前に解決できるはず。
──あなたの世代は韓国をどう変えると思う?
個人的には、この世代は外見や価値観、ライフスタイルなど、人びとが持つ違いを大切にし、理解することができると思う。この世代が成長したら、韓国社会はありのままの私たちの違いを認められるようになるんじゃないかな?
──10年後の世界はどうなっていてほしい?
テクノロジーは人間の脳よりもずっと早く発展するといわれているけれど、人間が善悪を判断する前にテクノロジーが世界を変えてしまうんじゃないかと思ってる。10年後も〈美しき世界〉と呼べるような世界であってほしい。
──2021年の願いは?
パンデミックが終わって、世界中でマスクをつけずに思い切り遊べるようになること。

──なにをしてる人?
俳優。
──韓国でいちばん好きな場所は? 理由も教えて。
全羅南道の華厳寺。特に信心深いわけじゃないんだけど、初めて訪れたときに荘厳な雰囲気に圧倒された。あの場所を取り巻く自然、僧侶たち、建築様式などから、言葉では言い表せないものを感じた。信者ではなくても、特別な体験ができる場所。
──今まででいちばんワクワクした体験は?
フィルムカメラで写真を撮ること。4年前から、偶然見つけた父の古いフィルムカメラで写真を撮ってる。どこへ行くときもカメラを持っていって、その瞬間を記録するようにしてる。最近は自分でフィルムを現像して、部屋にも暗室をつくった。こんなに夢中になって一生懸命取り組んでるのはこれが初めて。
──韓国の未来についてどう思う?
韓国は早ければ早いほどいい、という社会。韓国の未来も同じだと思う。今でも十分早いけど、きっともっと加速していく。それが悪いとはいわないけど、変化に追いつけないひとも、息つく暇も与えずに急かしてばかりの社会にうんざりするひともいるはず。この社会には、立ち止まってじっくり考えたり、過去を振り返る余裕を持ってほしい。
──あなたの世代は韓国をどう変えると思う?
今の世代はこれまでの世代よりもずっと早くたくさんの物事を観て、学んで、感じることができる。だからもっと多様な考え方が共存していて、より自由に自分の意見を表明できる。
──10年後の世界はどうなっていてほしい?
相手の目を見て話せる世界。最近は、面と向かってのコミュニケーションがすごく懐かしくなる。文字での会話や共有には限界があるから、相手の目を見て、表情を読みながら話せる社会を守っていきたい。
──2021年の願いは?
世界平和。それから自分も含めてみんなが羽を伸ばす時間を十分にとれること。
──旅行できるようになったら、まずどこに行きたい?
ヨーロッパ。ときどきアルバムを見返しているんだけど、最後に行った旅行がベルリンだったから。ヨーロッパの他の国にも行ってみたい。
Credits
Photography Dasom Han
Styling Yeyoung Kim
Production Eunhae Seo