Photography Hick Duarte

写真家ヒック・ドゥアルテがブラジル、リオのスケーターたちを撮る

写真家のヒック・ドゥアルテが、最新プロジェクト〈Comuna〉制作の舞台裏を語る。大都市を離れ、大自然に立つスケーターを撮るなかで見えたものとは。

by Mahoro Seward; translated by Nozomi Otaki
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05 January 2021, 10:00am

Photography Hick Duarte

サンパウロが世界でもっとも活気あふれる街だというのは、まぎれもない真実だ。ブラジルの文化と経済の中心として、国際都市の名にふさわしい多様な住民たちがめまぐるしい日々を送っている。

確かにそこでの生活は心踊るかもしれないが、誰もがホームと呼べるほど寛大な場所とはいえないかもしれない。中心街のアパートの窓から外を見ると、地平線のはるか彼方までコンクリートの海が広がっている。数ヶ月に及ぶロックダウンは街に大きな打撃を与え、もともとあった閉塞感は強まっていくいっぽうだ。サンパウロ市民が現実逃避のことばかり考えているのも無理はない。

「ブラジルでの外出自粛期間は、ずっとサンパウロのアパートで過ごさなければいけないのがすごく憂うつだった」とフォログラファーのヒック・ドゥアルテは語る。

「繁華街に住んでいるから、ずっとここで世界で何が起きているのかを観続けるのは本当につらかった。心と身体の健康のためにも、2〜3週間現実から離れる期間が必要だったんだ」

Hick Duarte Comuna

そこで彼は、街から車で数時間の場所に借家を探しはじめた。街を離れようと決意したことで、すぐに心は晴れ、落ち着いていったという。「前向きに考え、落ち着いてアイデアをまとめられるようになった。ずっと考え続けていた問題に対する不安も減った」と彼は回想する。「街の騒音もプレッシャーも消え、作品づくりやクリエイティビティにも良い影響があったと思う」

フランス全土よりも広大な、コーヒーと牛乳の産地として知られるブラジルの南東の州、ミナスジェライスで育ったヒックは、根っからのカントリーボーイだ。「23歳でサンパウロに引っ越してから忙しくなり、ストレスや不安を感じやすくなった」と彼はいう。「それで自然に帰ろう、という呼びかけのようなものを感じるようになったんだ」

自然への逃避という閃きに従い、彼はその機会を利用して、リオデジャネイロの街なかでのMV撮影で知り合った友人たちを招き、最新プロジェクト〈Comuna〉の被写体になってもらうことにした。「彼らはイラストレーター、タトゥーアーティスト、スケーターで、アップサイクリングブランド〈Shutney Molho〉と〈DVA Deluxe〉のオーナーでもある」とヒックは説明する。「ブラジルでは、リオに住む人たちはみんな、雑に言ってしまえばビーチが大好きな遊び人というステレオタイプがあるけれど、彼らはその反対。真の意味でのコレクティブを体現している。いつも一緒に滑り、作品をつくっているんだ」

この若いスケーター集団にとって、ロックダウンによる規制は耐え難いものだった。「みんなおかしくなりそうだったよ!」とヒックはいう。「彼らにとって、外に出て、街を滑るのは必要不可欠なこと。家庭環境が複雑で、家族とあまり仲が良くない子もいるから、四六時中家にこもりっきりというのはかなりのストレスなんだ」

Hick Duarte Comuna

ヒックとスケーターたちは、彼らのひとりの父親が所有するリオデジャネイロ郊外の農場で、8日間キャンプをして過ごした。1日1回の家族との連絡以外はネットを断ち、都会生まれの彼らは、電気も水もない、スローダウンした原始的な生活を体験した。「自然豊かな場所で、美しさや嘘偽りのない物語を見出したかった。そういう環境では、人は世界や大都市の文化との繋がりに頭を悩ませることなく、より自分らしくいられると思うから」

「田舎では誰もが自然体で、物事の本来のペースを尊重してる。ゆったりとした生活を送り、サンパウロの人びとが向き合う時間のないものを大切にする」

農場での時間は、大自然のなかでゆったりと過ぎていった。ヒックはすべての撮影で、被写体に街から運んできた古着と2台の家庭用ミシンを使って、ハットやシャツといった衣装の制作を依頼した。それ以外の時間はスケート、サッカー、そしてヒック曰く「リゼルグ酸タイム」、すなわち「LSDを使ったりウィードを吸って、既存の枠にとらわれずに思考する時間」に費やしたという。

そうして完成したのが、親しい友人同士でのんびりと過ごす時間の心温まる記録だ。これらの写真からは、ゆったりと過ごすことの意味、すなわち、より本質的な思考や存在に回帰するとはどういうことかが伝わってくる。

「ルーツに立ち返ることもテーマのひとつだった」とヒックは振り返る。「もちろん、サンパウロでの暮らしにも良い面はある。リオでの生活や仕事がなければ、そもそも彼らとは知り合えていないからね」

「でも、この街は僕たちをルーツから切り離そうとする場所でもある。そういうものから自分を遠ざけた8日間は、とても純粋な時間だった。肌に触れ、目と目を合わせ、本当の繋がり、本当の関係を築くことができたんだ」

Hick Duarte Comuna
Hick Duarte Comuna
Hick Duarte Comuna
Hick Duarte Comuna
Hick Duarte Comuna
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Hick Duarte Comuna

Credits


All images courtesy Hick Duarte

Brands Shutney Molho and DVA Deluxe
Styling @niceflocka

Models

@giblackrj
@amogatofofo
@thedo99
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@fetalpoison

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