陰キャはクラブハウスでサバイブできるのか

招待制+音声SNSという特徴を兼ね備えた、史上最も親密なSNS〈クラブハウス(Clubhouse)〉。ネットで度々「陽キャ向け」と指摘されているが、実態は如何に……?

by MAKOTO KIKUCHI
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17 February 2021, 10:28am

昨年4月にアメリカでリリースされ、シリコンバレーのIT関係者を中心に人気に火がついた〈クラブハウス(Clubhouse)〉。イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグといった著名人の会話をリアルタイムで聞けて、運が良ければ彼らと会話までできてしまうこのアプリは、コロナ禍でリアルタイムな会話に飢えていた人々のニーズに答えてくれる新たなソーシャルメディアの形として驚異的なスピードで広まった。今年1月に2百万人ほどだったユーザー数も現在は6百万人超えという人気ぶりだ。

私がこのSNSの存在を認識したのは先月末頃。インスタグラムのストーリーズに投稿されたクラブハウスのプロフィールページの数々を眺めながら、すぐに招待枠をもらえる彼らの人脈をなんとなく羨みながらも「新しいSNSなんてもう追えないな」と憂いていた。それでもメディア業界に少なからず関わる者として、こうした新しいネットの動きを追わないわけにはいかない。どうしようかと悩んでいるところに、心優しい高校時代の友人から招待をもらい、晴れてクラブハウスデビューできたのが今からおよそ一週間ほど前だ。正直に言うと、現状まったく使いこなせていない。

Twitterに投稿されている反応を見る限り、現在クラブハウスが多くのツイッタラーに「陽キャ向け」SNSとして認識されているのは確実だ。確かに今年1月の後半に人気芸能人やインフルエンサーがこぞってアカウントを開設しはじめたとき、私もクラブハウスに対して「イケてる人と繋がっていないと参加できない排他的なアプリ」という印象を抱いていた。すでにアカウントを持っている人からの招待がないと自分のアカウントを開設できないというこのSNSの最大の特徴は、自分から積極的に社交の場を広げようとしない陰キャからすると大きな関門だ。公式サイトによれば、この招待制は排他的であることを目的に設けられているわけではないらしい。あくまで「コミュニティをゆっくり成長させること」が、招待制である理由だそうだ。しかしそのおかげで(せいで)、現在アプリ内での人々のやりとりは極めて親密なように見える。トークルームの最大の参加人数が5000人という制限がある上に、日本語圏ではまだユーザーそのものの数がそこまで多くない。そのため有名人がモデレーターとしているようなトークルームでもその規模はかなり小さく、それ故に陰キャ達はいつ自分がスピーカーに指定されるのか分からないという恐怖を感じる必要が生じている。私が面白そうなトークルームを見つけても、いつも入るのを躊躇してしまうのはそのためだ。仕事以外の目的で、知らない人と社交的にインタラクティブな会話をする勇気がない。

もちろんユーザー数が増えるにしたがい、当然大規模なトークルームが多く出現するようになれば、この傾向は大きく変わってくる可能性はある。 実際英語圏ではすでにニッチなトピックに特化した数万人規模のフォロワーを持つグループが多く存在し、定期(または不定期)にトークセッションが行なわれている。そういったトークルームでは自動的に多くの人が「聞き専」に回ることになるため、普段音声通話が苦手なひとでも、自分のギークな興味を深掘りできる手軽なポッドキャスト感覚で楽しめそうだ。それまではしばらくひっそり身を潜めていようと思っている。

このSNSがここまで急速に普及した背景には、コロナ禍で人とのリアルタイムな会話に飢えた人達が増加していたことにあるだろう。有名人やインフルエンサーを使ったマーケティングも相まって、一気に知名度が上昇したことも理由のひとつだ。リアルタイムの活発な議論を好むシリコンバレーのビジネスマン達がこぞってこのアプリを好むのは、当然のことと言える。しかし、学校でも会社でも会議中なるべく目立たないように黙ってやり過ごす人の割合が極端に高い日本で、彗星のごとく現れた史上最も親密なこのSNSに勝ち目はあるのだろうか? 今後の動向に注目したい。

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