「私はコントロールフリーク」ペギー・グーが語る、ポジティブ思想と批判への反論

2019年、「Starry Night」をヒットさせた韓国人DJのペギー・グーが、インターネット上で受けたバッシング、2020年の抱負について語る。

by Benoit Loiseau; translated by Ai Nakayama
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26 February 2020, 7:00am

2019年、韓国人DJ/プロデューサーで、現在はファッションデザイナーとしても活動するペギー・グー(Peggy Gou)は多忙のなかにあった。世界中で100公演近いライブを行なった彼女は、洗練された最高のディープハウスセットを流すDJとしてだけでなく、Instagramでも人気を誇っているが、さらに最近、自身のレコードレーベルとストリートウェアラインを立ち上げたのだ。

「めちゃくちゃ楽しいから、自分が疲れてるってこと忘れちゃう」と彼女は笑って言う。2020年の元旦、私たちはOMAがデザインを手がけた、バリの新しいホテル/イベント会場〈Desa Potato Head〉でアイスコーヒーを飲みながら話をした。

シルクのショートスリーブシャツにMuglerのスポーティなショートパンツを合わせたペギーは、本当に明け方近くまで3000人を盛り上げていたひとなのか、と疑ってしまうほど爽やかだ。ビーチに面した会場で開催された〈Gou Year's Eve〉と題されたイベント(宣伝ポスターが島中に貼られていた)と同日、インドネシアのPotato Headとコラボして制作した新しいカプセルコレクションを発表した。

センセーショナルなアーティストとして注目を集めてきた彼女だが、今年はライブを減らし1stアルバムに注力するつもりなので、より落ち着いた1年になる予定だという。「クリエイティブな人間って、クリエイティブでいるためには何もしないことが必要なの」とペギーは語り、現在の拠点であるベルリンに新しいホームスタジオをつくったことを教えてくれた。

彼女は2016年以来、様々なジャンルをミックスしたダンスミュージック(彼女いわく〈Kハウス〉)のEPを発表しており、最近では人気シリーズ〈DJ Kicks〉もリリースした。制作中のアルバムは、彼女が韓国で暮らしていた頃、何度もインターンシップの応募メールを送るほど憧れていたXL Recordingsから発売される予定だ。「いちども返信もらったことないけど!」と彼女は笑う。

また現在29歳の彼女は、自身が立ち上げたレーベル〈Gudu〉も成長させていくつもりだという。これまでは、Rephlex RecordsのDMX Krewや、米国出身のベテランDJ、モーリス・フルトンなど、カルト的な人気を誇りつつもいまだに正当な評価を受けていないエレクトロニカ・プロデューサーたちのためのプラットフォームとして機能してきた。彼らは「もっと注目を浴びるべき、私の憧れのアーティストたち」だとペギーはいう。

しかし究極的には、特に女性/アジア系の新人ミュージシャンと契約したい、と彼女は考えている。「初めて契約したときはかなり苦労した」と彼女は回想する。初めて契約したレーベルからほぼサポートしてもらえなかった、というかつての自分自身の経験が、彼女を業界の変革へと駆り立てている。「アーティストが求めるものを与えたい」

ペギーといえば音楽業界での活躍が有名で、今や世界中のクラブやフェスで何千人もの観客が集まる人気DJだが、その前はファッションへの愛が深かった。十代をロンドンで過ごした彼女は(「韓国にはこの子の未来はない」と考えた彼女の両親が、英語を学ばせるため彼女を英国に送ったそうだ)、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションに入学してスタイリングを専攻。「そこで(スタイリングは)得意じゃないなって気づいた。自分のスタイリングは楽しいんだけど」と彼女は笑う。それから短期間、韓国の『Harper’s Bazaar』の通信員として働いた。

このファッション業界での経験は無駄ではなかった。Louis Vuittonのアーティスティックディレクターを務めるヴァージル・アブローと親交を深めたペギーは、Off-Whiteを擁するイタリアのラグジュアリーカンパニー、New Guards Group(去年Farfetchにより買収された)の援助を受け、2019年、自らのウィメンズストリートウェアブランド、Kirin(彼女の好きな動物〈麒麟〉から名付けた)をローンチ。コレクションは様々な要素をミックスしたカラフルなアイテムが揃い、ロゴプリントシャツ、ローブ、ジャンプスーツなどすべてに、韓国の伝説に着想を得たアイコンが散りばめられている。

そのリファレンスは彼女のファッションデザインだけでなく、音楽のVIとしても使用されている。たとえば、彼女のデザインしたアイテムに繰り返し登場するライオンに似た獬豸(カイチ)という想像上の霊獣、あるいはイラストレーターのチェ・ジェウク(Jee-ook Choi)が手がけたGuduのロゴでも登場している伝統的な仮面など、韓国の文化はペギーにとって、いまだに強力なインスピレーション源となっている。

「韓国と自分との繋がりは失わないようにしてる」と彼女はいい、最近ソウルで行なったライブで、ペギーの韓国語トラック「Starry Nights」を観客が大合唱するのを聴き、泣いてしまったことを語ってくれた。「信じられない、って。鳥肌が立った。バリでは鳥肌って吉兆なんだって!」と彼女は興奮して叫ぶ。

「Starry Nights」のMV監督は、ペギーの恋人でドイツ出身のフォトグラファー/映像作家、そしてケンドリック・ラマーの「ELEMENT」の共同監督も務めたヨナス・リンドストローム(Jonas Lindstroem)。都会の裏道から一面に広がる山間の湖まで、それぞれまったく異なる様々な韓国の風景を切り取った、どこか不気味な作品だ。登場するのは女学生、伝統舞踊のカンガンスルレを舞う踊り手たち、そして『パラサイト』を想起させるような、高級住宅でひとりで踊る中年女性……。「あれも鳥肌立ったな」と彼女はこぼす。

サウジアラビアで2019年に初開催された音楽フェス、MDL Beastでのパフォーマンスについて訊くと、彼女は困ったような表情を見せた。同国のエンターテインメント機関General Entertainment Authorityが主催したとされ、12月19日から3日間にわたって開催されたこのフェスは、政権を批判していたジャーナリスト、ジャマル・カショジ氏の殺害など、人権侵害で世界から非難を浴びたサウジアラビアのイメージを立て直そうとする宣伝キャンペーンだったとされ、ワシントンポストのオピニオンライターであるカレン・アッティア、モデルのテディ・クインリヴァン、Instagramの人気アカウントDiet Pradaなど、世界各国のひとびとが、リディアでの体験を褒めそやすPR投稿をして報酬を得た参加セレブたちを糾弾し、議論の的となっている。

ペギーも、このフェスについて口を開いてくれた。デヴィッド・ゲッタ、スティーブ・アオキなど人気DJたちと肩を並べてラインナップされた彼女は、130万人のフォロワーをもつ自身のアカウントでフェスのビデオを掲載し、ネット上では〈裏切り者〉と激しいバッシングを受けた。それについて彼女は遺憾に思うと語り、「(自分は)インフルエンサーとは違う」と反論する。

彼女はこのフェスで唯一の女性ヘッドライナーであり、それがサウジアラビアの音楽シーンの変化に寄与すると思っているという。「私がフェスに参加したのは、ファンに音楽を届けたかったから」と彼女は言明し、それは道理にかなった判断のように思えるが、そう考えないひともいる。

たとえば2019年の夏には、女性の人権、LGBT+の人権、表現の自由を擁護する立場を明確にするため、ニッキー・ミナージュはサウジアラビアのJeddah World Festへのオファーを断った。NYの非営利団体〈Human Rights Foundation〉の要請を受けての決断だった。

しかしペギーは、2018年のDGTL Tel Avivへの出演キャンセル時にもバッシングにあい(その後彼女は、自らがSNSに掲載した文章について謝罪)、自称「生まれながらにして、自分で選択する人間」であるペギーは、いろいろな学びを得て、今は政治に関わらないようにしているという。

サウジアラビアのフェスの出演で多額のギャラをもらったのは事実だが、「イスラエルだろうが北朝鮮だろうが関係ない」と彼女は断言する。「もし私の音楽を聴きたいひとがいるなら私は行く。ただそれだけ」。そう、彼女の信条はファンファーストなのだ。

最後に、2020年の抱負を訊いた。「自分のすべきことに取り組むこと」と彼女は微笑む。瞑想やポジティブ思考も、上位の目標に入るという。「私はコントロールフリークだから」

彼女のメンターでフランス人DJローラン・ガルニエから、休むときは外界との接触を一切断て、と教わった。「みんなは君のことを忘れやしない」とローランは言ったそうだが、それは正しい。ペギー・グーのことを忘れるなんて、誰にもできない。

This article originally appeared on i-D UK.

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