Giggs wears jacket Versus Versace. Hat, T-shirt, jeans, watch and shoes model’s own.

Giggs ロングインタビュー

「名声と聞いて思い浮かぶのはそこらじゅうにポスターが貼ってあって、看板にもなって、TVに出たりとか。俺がどんなやつか知っている人間は数人しかいない。それって本当に有名ってわけじゃない、そうじゃない?」

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08 December 2017, 10:00am

Giggs wears jacket Versus Versace. Hat, T-shirt, jeans, watch and shoes model’s own.

This article originally appeared in The Sounding Off Issue, no. 350, Winter 2017.

ストリートのアンセムであっても、大盛り上がりするパーティのスタートチューンであっても、氷のように冷たく歌うホロウマンの声。それこそがGiggs(ギグス)をアンダーグラウンドからUKシーンの頂点に立つスターへ上り詰めた理由だ。世の中がめまぐるしく変化するばするほど、彼らのスタンスは変わらない。音楽フェスのヘッドライナーを務め、ドレイクとの仕事を手がけるナサニエル・トンプソンは音楽シーンのトップラッパーと言えるだろう。しかしi-Dのオフィスに現れた彼は驚くほど控えめだった。手にはジュースの缶と車のキー、VERSUS VERSACEのジャケットとブルージーンズという出で立ちだ。しかしそこには(微かではあるが)南ロンドンはペッカムのグロスター・グローヴ6人衆のうちのひとりだったという過去を裏切るものがあった。ジャケットもそのひとつ、腕には光り輝く金色のロレックスをはめていた。「もらったんだよ」。彼はにやりと笑った。いたずらっぽくミステリアスに。

彼自身は10年前に「Talkin' The Hardest」を発表し、ストリートの星となったときとまったく変わらない。それから何年ものあいだ仕事を得たり失ったりしながら、マーク・ロンソンやワイリー、スケプタ、ストームジー、マイク・スキナー、エド・シーランらとタッグを組んできた。2017年までロンドンでのライブを禁止されている身としては驚異的な立ち直りの早さだ。「警察さ」彼はため息をついた。だが彼はここ最近イギリス国内でも指折りの名ライブを披露してきた。口数の少ない彼はドレイクとのコラボ曲「KMT」のあと、2017年5月にO2で行われたのライブで主役を凌ぐような「Whippin' Excursion」を披露し話題となったことに触れるとすぐに照れ始めた。目も顎も胸につくほどに下がり、ワイドブリムのキャップの下には隠しきれないはにかみ笑いが見て取れた。「そんなふうには思っていないよ。ステージに出るのを待って、そこへ行き、そして帰るだけ。頭に浮かぶのは『まだまだ足りない、もっとがんばらなきゃ』ってことだけだよ」。200人規模の蒸し暑いリーズのクラブであっても、ハマースミス・アポロでの単独ライブでも、ステージ上の彼の放つエネルギーは日常でのペルソナと対極をなすものだといえる。

「シャイなんだ」彼はあっさりと認めた。「歌っているときは内気じゃない。音楽を愛しているからね。自分の愛している歌を歌っているだけ。だからシャイな気持ちはどこかへいってしまう。でも音楽を止めてしゃべろうとしたら?そうはならないね。」。そう言って彼はモゴモゴしゃべっているときの真似をしてみせた。なぜそんなに内気なのだろうか?「わからないよ。そんなこと掘り下げる価値もないしね」とまたもや照れ笑いが返ってきた。

シャイな部分があったとしてもギグスはUKのラップシーンの純然たるリーダーという役割を務め始めた。そしてだんだんと慣れてきたようだ。2016年にリリースしたセカンドアルバム『Landlord』の成功に続くかたちで最近発表したミックステープ『Wamp 2 Dem』は権利を奪われ、不信感を抱く世代にとってのオールドスクールなラッパー、そして代弁者としての地位を確固たるものにした。ギグスが曲を作れば作るほど、彼はおもしろくなっていく。晴れた9月の午後にi-Dはギグスに親であることから、政治、名声、教育まで、人生で大切なことについて質問を投げかけた。

Landlord:「キャリアの中で俺がしていることは誰もしていないと気づいたんだ。誰も。この世界でこんな音楽を作っているやつは誰もいない。自分を今までの音楽人生の中で最高の状態まで高めたんだ。今はそれよりも良い状態にいるよ(はにかみ笑い)」

Wamp 2 Dem:「これは何についての曲かっていうのはどういうこと?この曲についてまだよくわかっていなんだ。下調べが不十分。だって何についてか聞くんだから、こいつはいけないな。次の質問だ。心配いらない大丈夫だよ。俺が言ってるのはハードなミックステープについて。ハードなね」

名声:「わからないよ、だってすべて変わらないように思えるから。人の振る舞いを見ていると、ちょっと違うなって思うくらい。みんなおかしな感じなんだ。家族、友だち、周りの人、みんな違う見方をするし、媚びてるみたい。普通に接してくれたらいいのに。だから今、前よりも人と話さなくなっている。前と同じように振舞ってくれるのは仕事をしている人たちだけ。例えば(マネージャーで古い友人でもある)バックとか。だって彼はチームの一員だからね。俺たちはただ仕事をして、終わったらその次に向かうだけ。それにこれって本当に名声なのかい?名声ってなんだ?名声と聞いて思い浮かぶのはそこらじゅうにポスターが貼ってあって、看板にもなって、TVに出たりとか。俺がどんなやつか知っている人間は数人しかいない。それって本当に有名ってわけじゃない、そうじゃない?」

UKシーン:「すべてのひと、彼らがやっていることからインスピレーションを受ける。スケプタやBBKもO2でパフォーマンスしたから、俺たちにもできることがわかった。毎日新しいものを目にしてそこから学ぶ。俺たちが主導権を握ったんだ。。自分たちがいま、音楽シーンでどんな立ち位置にいるかはわかってる。前は学びの途中だったけど、今は物事をもっと楽しんでるし大人になった。権力を持っているのはレーベルやTV、ディストリビューターなんかじゃない違う人間だ。当時(2007〜2012年)はそいつらが力を持ってて、誰に対しても手伝おうなんて気がなかった。こう言われたよ。『今まではこうやってきた。もしこの方法でやらないなら、サポートなんてしない』。それに対抗しなきゃならなかったんだ。そのあとでみんなそれに賛同してくれて、今じゃみんながちょっと権力をほしがってる」

ドレイク:「俺たちの友情は当たり前だけど音楽だ。「Landlord」をリリースしたとき彼はこんなメッセージを送ってきたんだ。『これはバッドボーイのアルバムだな。かっこいいよ』。そのあと彼が『More Life』を発表したんだけど、まだ『More Life』というタイトルをつける以前に言ったんだ。『今レコーディングの最中なんだ。何のためなのかはわからないけどこいつで何かをしたいと思ってる。どう思う?1曲を送っていいかな?』。俺は『送ってくれ!』と返したよ。俺たちは最初に「No Long Talk」、そのあと「KMT」を作った。それをきっかけに彼と話すようになったよ。そして2017年1月。、彼と<Boy Meets World>ツアーで3ヶ月一緒にを回ったよ。毎日一緒にいて、笑ったり、怒ったり、話したり……。お互いを良く知るには十分だった。彼だけじゃなくて、チーム全員が一緒にヨーロッパを回ったんだ。最高な3ヶ月だったし、すべてのプロセスを見るのも最高だった。去年、曲をレコーディングしたことから始まって、ツアーに行ったんだ。そのツアーが終わったとき『More Life』が発表されて、ここロンドンのO2で「KMT」を披露したのさ。初めから終わりまで彼と関わって、そこが章の終わりって感じだった。でもまだ続いているんだ。彼はレディングで「KMT」を演るためだけに飛行機で飛んできたんだ。あれはすごかった。何千人という群衆の後ろのほうまでみんな手を上げてさ。あれほどのエネルギーは初めてだ。そのあと続けてBBKのところに行ったんだよ。彼らのためにパフォーマンスしたのさ。そのあと家に帰って2〜3本ジョイントを吸ってから眠った。忙しい1日だったよ」

アメリカへ突撃:「もし俺が行くことができるならそういう話もあったはずなんだ……(以前に銃刀法違反の罪を犯しているため、ギグズはアメリカで仕事ができない)。法律を何とかしようと思っているんだ。でもこっちからいろいろやって気づいたんだ。俺は今やっていることをやり続けなきゃいけないんじゃないかって。そうすればやつらも気にかけてくれるだろう。「KMT」についてイヤなことを言うやつらもいるけど、無知ゆえのことだよ。ただひとつわからないのはあいつらはイギリスに黒人もいなけりゃ問題や深刻な貧困もないんだと思っていることだ。それがイラつくね。あいつらが俺たちがここで何をしてると思ってるのかは知らない。けどもし何が起こっているのかわからないのなら何が起こっているのか見せてやるまで」

金:「金は気を散らすものだね。金がからむことはどうしていいかすらわからない。フラットを買う、車を買う、服を買う、家族に少しやる。それで?もうどうしたらいいかわからない。そんなもの手にしたことがないからね。だからバカなことをしてしまうんだ。俺もやったことがあるよ。最初に大量の金を稼いだときジェット機に乗るとかそういうことをしたんだ。そういうバカみたいなことをね。だから今はぜんぶやっちまうことにしたんだ。本当にどうしたらいいか見当もつかないからね」

父親であること:「(遊園地で着ぐるみと一緒にいる娘のビデオを見せて)自分がそれほど変わったとは思わないな。ちょっと柔らかくなったかもしれないけど、でも娘といるときだけだよ。息子は11月で16歳になるんだ。あいつは昔俺のことをうじうじしてるって言ってたんだけど、今じゃ俺がしていることに夢中になってる。あいつにとっては俺の存在は普通なんだ。バックみたいな感じ、ただの仕事なんだ」

ペッカム:「どんなものかは知ってるだろう。あそこはまだペッカムだ。外からは違ったように見えるかもしれないけど、中身は一緒だよ」

政治:「俺は政治とかそういうことには興味がない。だってやつらはビルを燃やしても何の罪にも問われないんだから。グレンフェル(・タワーの火災)は大量殺戮だ。たくさんの人を殺しておいて罰を逃れた。もし俺が大きな建物を燃やしたら、チームの奴らが俺たちを探し出して、見せしめに盛大な罰を与えるだろうね。人でいっぱいのデカい建物が生きたまま焼かれたんだ。小さな子どもも、ティーンも、老人たちも。だから俺は政治には興味がないんだ。誰が権力を握ろうがそいつのやり方でしか物事が進まないからね」

インタビュー:「インタビューは苦手だった。話せるようになる前から権力とは口をきくなと教えられていたから。そういう環境で育つと教えられるのは警察と話すなってことだけ。社会事業の人間も、教師も話しちゃダメだ。全員権力の手先だからな。だから俺は28年間一切話さなかったんだ。28年経ってインタビューなんて理解できなかったね。ポール・モーリーとのインタビュー(『ガーディアン』が2010年に行ったもの)をこの前見たんだ。とんだ間抜けに見えただろうね(笑)。やつは俺に『なぜあなたは銃を持っているんですか?』と聞いたんだ。俺は『わからない、ただ持ってるんだ。みんな持ってるし、誰かが俺をつかまえようとしたら、出て行って戦うまで』と言っていたよ。でもその話し方は物静かだったけど(笑)。間違いなく間抜けだと思われた。 俺にとってはそれが普通だったってこと。あそこには脇に追いやられた若者の社会があったんだ。それは普通じゃない、普通であってはいけないんだ。だけど俺の成長が誰かの助けになればいいね。俺がしてきたことを見て可能性を見出してくれればいい」

教育:「教育システムは変える必要がある。やつらは生きていくためにはいくつかできなきゃいけないことがあると教えるだろう。そしてそれができないとバカ扱いだ。時代は変わっているのに教育はそれに気づきもしないし、子どもたちが能力を発揮できるような別のやり方を考えることもない。音楽やマネージメント、基盤を築いたり、映像をディレクションするなんてことを学校でやらせたら、たくさんの子どもが才能を開花させて自信につながるはずさ。自信がつけばそのほかの教科にもちょっとは興味がわくかもしれない。得意分野があればほかの分野にもまじめに取り組むようになる。何ができるかわかっているからね。ワイヤレスでステージに立ったSLっていう16歳(のラッパー)がいる。ああいうキッズはワンステージで1000ポンドも稼ぐんだ。すげえよな。それでも足りないって?やつは今自分でビジネスを立ち上げてるんだけど、学校でも知られてるはず。子どもたちにエンターテインメントや起業家精神、それにマネージメントを教えて資格を与えたほうがいい。医者や法律家になる訓練をしてるやつらより多くの金を稼ぐぜ。そういう子たちは借金して教育の場からを去ることもない。教育システムは変える必要があるね。俺はサウンドエンジニアリングを学ぶためにウェストミンスター・カレッジに行こうとしたことがあるんだけど、そのための資格がなくて入れなかった。その代わりに何をしたか。何が起こったかはもう知っているだろう。最終的にはここに来たけどもし教育が俺に対して、そして俺のスキルに対してオープンだったなら違った道も選べたかもしれない。教育は個人を見て子どもたち一人ひとりがそれぞれ違った才能を持っていることに気づかなければダメなんだ」

将来:「新人たちの世話をしようと思ってる。築き上げるのさ。誰も俺たちのことは助けてくれなかった。ただ『それじゃダメだ』って言われただけさ。もし俺が意志の弱いやつだったらストリートに戻っていただろうね。だから次の世代のキッズにはそんなことが起こらないようにしたいんだ。俺がこんなに頑固でよかったよ。『よくも俺のことを見下してくれたな』って感じだったからね(笑)。それが俺を前進させる力だったんだ。結果的にうまくいってよかったよ、そうじゃないか?」