Photo by Hayley Eichenbaum.

〈ルート66〉のキッチュな景色とロマンティシズム

誰もが憧れる〈ルート66〉を8度走破したLA在住の写真家、ヘイリー・アイチェンバウムによる、南西部のひなびたロマンティシズムの記録。

by Laura Pitcher; translated by Ai Nakayama
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31 May 2019, 9:00am

Photo by Hayley Eichenbaum.

サンフランシスコ芸術大学とミルウォーキー芸術学校で学んだ写真家、ヘイリー・アイチェンバウムは、2013年の卒業時、進路に悩んでいた。当時彼女は、故郷のミルウォーキーにある、アーティストが経営するスタジオ〈The Pitch Project〉で働いていたが、1ヶ月かけてひとりでルート66を車で走破することを決めた。それを皮切りに、彼女はこれまでルート66という歴史的な国道を8度走り、そしてその道すがら、映画のように美しい建物を写真に収めてきた。

過去には、「女性をかたどったファサードに表れる西洋的理想像」をテーマに、分野を超えた作品を生み出してきた彼女だが、ルート66の旅により、彼女の関心は外観と風景写真へと移った。「初めてルート66を走ったあと、LAに移って本気で写真に取り組もう、と決めたんです」と現在30歳のヘイリーは回想する。そして2015年、彼女はその決意を実現し、以来LAを拠点に活動してきた。彼女の作品は、ロマンの対象たるドラマティックなルート66や、その道端の建物を深く掘り下げる。そのうちのひとつが、〈The Mother Road〉と題されたシリーズだ。

しかし、今でもヘイリーの核には、分野の垣根を超えるアーティスト精神が息づいており、今年はより多くのインスタレーションや動く彫刻、ビデオ、パフォーマンスアート作品をつくっていきたい、と彼女は抱負を語る。そんな彼女の創作姿勢を表す名前(@inter_disciplinary)が授けられたInstagramアカウントは、すでに数多くのフォロワーを抱えている。「今でも信じられないですね」とヘイリー。「何も期待せずにつくったアカウントだったんです。でもこのアカウントのおかげでいろんなことが実現していて、感謝しています」

再び旅に出る前の彼女が、作品について語る。

Photo by Hayley Eichenbaum.
Photo by Hayley Eichenbaum.

--学校で写真を学んだわけではないとのことですが、どのように写真を始めたんですか?

これまでも常に、写真は私の創作活動にある程度関わっていましたが、今からおよそ6年前、私が頻繁に旅に出るようになるまでは、主要な創作手段ではなかったんです。でも、写真の即時性に夢中になりました。何年も前から、自分のカメラの複雑な機能を学ぼうとがんばってます。技術的な知識が増えるほど、私の美的表現も進化してるんです。楽しいですよ。

--かつてあなたは女性性をテーマに作品をつくっていましたが、どのように風景へ関心を抱くように?

女性をかたどったファサードに表れる西洋的理想像を表現する作品をつくっていたときは、女性がどのように自らを表現し、それを維持するよう求められるのかについて疑問を抱いていました。それが回り道をして、最終的に建築としてのファサードに行きついた、という感じですね。

--建造物を撮影することの魅力とは?

建造物の外観は、それ自体がドラマティックな物語を語っていると思うんです。国道やその道端に建つ建造物は、ネオンの看板やノスタルジックな色味で、臆面もなくこちらの興味を惹こうとする。ひとを誘い込もうとする建物たちのあっけらかんとしたところが魅力的です。

Photo by Hayley Eichenbaum.
Photo by Hayley Eichenbaum.

--〈The Mother Road(マザー・ロード)〉と題されたプロジェクトについて教えてください。

このシリーズは、私がルート66を旅するなかで、自然に発展したものです。昔からの道路に残された建物は、ひなびてはいても、同時に希望も感じさせます。ルート66がいまだに社会経済的に生き残っていられるのは、美化され、その名声が守られているからこそ。私は、栄華を誇った黄金期のイメージに頼りきっている風景をじっくりと観察したかったんです。あとは、時代を生き抜いてきたキッチュな景色を称えたかった。

--本シリーズの写真を撮ったプロセスを教えてください。

撮影も大事ですが、そのあとのポスプロのプロセスも同じくらい重要です。私はひとりで旅して、ひとりで撮影するのが好き。車を走らせるルートや、どの町に寄るかだけざっくり決めておいて、瞬間的に撮影することもあれば、じっくり待って撮影することもあります。空模様は写真の出来上がりを左右するので、天気を読むことが第二の仕事ですね。最終的には、映画のセットのような不思議な質感を目指してます。

--写真を撮りに行きたい場所は?

たくさんあるし、日々変わっているけれど、モロッコとポルトガルは常に〈行きたい場所リスト〉の上位に入っています。

Photo by Hayley Eichenbaum.
Photo by Hayley Eichenbaum.

--〈interdisciplinary(分野を超えた)〉という言葉をInstagramのアカウントに選んだ理由は?

このアカウントを開設したときには、かなり分野を超えた創作アプローチをしてたんです。今も、いろんなカテゴリーを行き来する、そして様々な文脈に根ざす作品を目指してます。検索しやすいアカウント名ではないですが、今はもうこの名前と添い遂げる覚悟です。

--今後の予定を教えてください。

今年は、米国外を拠点にした新シリーズに取り組みます。細かいことはまだ詰めているところですが、早く作品をかたちにして、公開できればと思っています。あと、この〈The Mother Road〉シリーズの書籍化の話も進んでいます。まだ初期段階ですが。あとは4月にオンラインショップも再開しました。新しい限定プリントを用意しています。

Photo by Hayley Eichenbaum.
Photo by Hayley Eichenbaum.

This article originally appeared on i-D US.