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世界に向けた「ファック・オフ」:Comme des Garçons AW19

「暗闇のなかに美を見い出す。暗闇がなければ光はない」

by Steve Salter; translated by Ai Nakayama
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31 January 2019, 3:47am

Photography Mitchell Sams

2019年の社会、政治情勢は完全なる暗闇のなかにある。もしあなたが政治情勢に怒りを覚えていないというのなら、注意を払っていないだけだ。〈黄色いベスト〉運動が10週目に入ろうとするその前日、川久保玲は反抗の姿勢をクリエイティブに、挑戦的に打ち出し、パリに漂うムードをあるいはそれ以上のものを表現した。彼女が教えてくれたのは、こんな暗闇のなかにも美が存在するということ。

comme des garcons homme plus autumn winter 19

川久保玲が口を開けば、私たちは耳を傾ける。そして彼女の言葉を心に刻み込む。彼女のショータイトルはいつも謎めいており、詩的で哲学的だ。〈Body Meets Dress–Dress Meets Body〉〈Lumps and Bumps〉〈Bad Taste〉〈2 Dimensions〉〈Infinity of Tailoring〉〈Not Making Clothes〉。個人的なお気に入りを挙げるだけでもこんなにある。貴重なインタビューが発表されれば、敬虔な川久保ファンたちは行間を読み取ろうと必死に考察する。2019年秋冬のComme des Garçons Homme Plusコレクションでは、狂乱のようなショーが終わるとこんな詩的な一文が発表された。「暗闇のなかに美を見い出す。暗闇がなければ光はない」

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Comme des Garçonsの川久保玲はこの50年ものあいだ、服のルールをねじ曲げ、壊し続けてきた。急進的なリファレンス、シルエットの改革、卓越した技術による革新を通して、現状を打破してきた。ニューヨークのメトロポリタン美術館は「Comme des Garçons: Art of the In-Between」という展覧会で、先見の明のある彼女が生み出した、反逆のファッションを賛美した。今でも彼女の革命は続いている。〈黒い〉革命だ。1982年、川久保がパリで発表した〈Destroy〉コレクションはオールブラックで、挑発的でファッション界を中心から揺さぶるインパクトがあった。このコレクションを〈ヒロシマ・シック〉と称し非難したフランスメディアもあったほどだが、当時増えつつあった彼女の熱狂的なファン、通称〈カラス族〉はそれを愛した。それから37年経った今年、彼女が発表したのは詩的で挑発的な、(ほとんど)オールブラックのコレクションだった。

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招待客たちが案内されたのは、暗闇に覆われた地下の会場。場内は満員でロサンゼルスを拠点とする〈オーストラリア・デス・ポップ〉バンド、VOWWSの重低音が私たちの胸郭を振動させる。不気味な雰囲気だ。強いスポットライトの周りには、ランウェイカメラマンたちが集まっている。川久保玲の魔法にかけられて、私たちは暗闇のなかで待っていた。待ち続けていた。そしてVOWWSのライブパフォーマンスが始まると、ランウェイは大混乱のダンスフロアへと変貌した。

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モデルたちに施されたメイクは、黒のリップスティック、崩れたアイライナー、カラーヘア。緑の髪を矢印型に剃られたモデルや、〈RIP〉メッセージが入ったヘアのモデルもいた。しかしそれはゴスでも、グラムでも、パンクでも、ダークエレクトロでもない。一定のジャンルにとどまらないのがComme des Garçonsだ。複数のレイヤーが融合された、1アイテムで二役をこなすトリックが用いられたテーラリング。その上に重ねられた、スタッズ付きのシャックルネックレスやハーネス。カット&ペーストされたり、何らかのかたちで手が加えられた、性別を飛び越えるクラブファッション。Comme des Garçons初となる、カスタマイズされたエアジョーダン。最後のモデルはカメラマンピットに向けて中指を立てた。最高だ。「ファック・オフ」を叫び、それでいて称賛を受けるデザイナーは川久保玲しかいない。そしてVOWWSの演奏が終わった。川久保はクリエイティブな反抗の光を消し、私たちは再び闇のなかへと潜っていく。しかしComme des Garçonsが灯台であり続ける限り、未来は明るい。

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This article originally appeared on i-D UK.

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