Photography Kyohei Hattori

都市機能をもたらす:BALMUNGデザイナー Hachi interview

2018年度の〈Tokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門〉の入賞に併せて東京都知事賞を受賞したブランド・BALMUNG。12月8日(土)に開催される「Tokyo Fashion Arc 2018 Dec. @ Laforet」でショーを行うデザイナーHachiに、ブランドコンセプトと将来のビジョンを訊いた。

|
dec 7 2018, 11:54am

Photography Kyohei Hattori

従来のハイブランドの考え方にのっとれば、ルックやショーに映る姿こそが理想像だといえる。それゆえに、消費者が自身の体型や顔を理想と照らし合わせてはその矛盾に葛藤を覚えていた。だが、近年はそうした固定概念は崩れ始め、各々がハイブリッドした姿を楽しむことこそファッションの醍醐味のひとつだ。自由にめちゃくちゃに化かす現象は原宿で生まれ、“ストリート”の代わりをInstagramが担うようになってからも消費者の遊び場は拡張され続けている。〈#balmungtokyo〉で検索した先に広がる光景はまさにそれと似ている。直接的にデザイナーの手が加わらなくとも、BALMUNGのシルエットという“繋がり”をもとに、人々が各々のストーリーを紡ぎ出しているように見える。

その世界観をつくりだすデザイナー・Hachiもまた、相反するものや、無関係で一見すると価値のないものに様々な個性や関係性を見つけて楽しんでいる。一緒に街を歩くと、聴覚、視覚、感覚から様々なものを時空を超えて関係付ける想像力に、ふと少年らしさを感じることもある。今年度の〈Tokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門〉に選ばれ、CREATORS TOKYOというカテゴリーにも所属するようになった彼が、アトリエから見える「東京」を感じる景色を背に、ブランドコンセプトである「都市」について語った。

1544171959237-_MG_7773

—— 今回〈Tokyo新人デザイナーファッション大賞〉に応募した理由を教えてください。
ブランドとしてDIYの要素が強かった頃に比べて、現在はブランドディレクションのような感覚でクリエーションを考える場面が多くなってきています。そういう点で、ファッション大賞は、展示会のための資金サポートを受けることができるので、ビジネスとしての展示会のあり方や表現にしっかり注力したいという今の想いと合致しました。ブランドとしての勢いを、緩やかな漕ぎ出しから最高速度で勝負できる時期まで継続的に支援してくれるので、今後は取り扱いショップのさらなる展開にも挑戦したいと思っています。

—— ブランド初期の頃はbodysong.、obsess、runurunuなどと合同展示会を開催していました。これまでの活動の中で一番のターニングポイントを教えてください。
2013-14年秋冬シーズンで、友人のブランドとともにパリで合同展示会を開いたことです。ショップのバイヤーやDiane Pernetをはじめとするジャーナリストなどが見にきてくれて。初めて日本以外の場所での発表とあって、そこで生まれる出会いや会話に強い影響を受けました。このことがきっかけで、BALMUNGのネームタグに「東京」という文字を入れるようになりました。自分の中でBALMUNGに対する意味付けがはっきり定まった時期だったと思います。

1544172128156-_MG_7819

—— ブランドコンセプトは「都市と人間」、物事の見方に影響を与えた出来事はありますか?
理数系の高校に通っていたときに出会った数学の先生からですね。数学の本質的な使い方として、物事の筋道を立てた考え方などを教えてくれました。社会現象や歴史、日常風景といったこととそれらを布や服や風習が持つ”様式”などと関連付けて考える想像力を養ってくれました。

——「都市と人間」は〈街と人/服と装う人〉という二項の関係性にも置き換えられるように思います。それを実際に感じた体験はありますか?
学生時代の原宿ですね。当時は原宿が大好きだったので、週7で通い、街や人を観察する生活を1年以上続けていました。徐々に原宿のなかでもトレンドが3ヶ月おきにどんどん移り変わっていく光景を感じるようになって。人々の服装やコミュニティの変化を眺めているうちに、それらが相互に影響しあいながら変化や発展を続けていく関係性や法則性のようなものが感じられるように見えました。今の言葉でいうところのビッグデータと言われるような記録みたいなものを自分の環境で体験したことは今でも服作りにおいても大きな影響があると思っています。

—— 様々な人が混在し、小さなコミュニティがいくつも立ち上がりながら相互作用するストリートの様子は、インターネット上でも起こっています。最近、そうした感覚を覚えたことはありますか?
今は国をまたいで影響や変化が起きていると思っています。例えば裏原カルチャーは、本来アメリカのヒップホップを輸入して、和製英語化したものだと思います。そもそもヒップホップには人種の違いを含めたヒエラルキーがありますが、裏原では途端に誰でも参加可能なファッションシステムに変化し、新たに構築されてていきました。その裏原の感覚が今、世界中へ逆輸出されている。こういうふうにネットワークの中で物事やコミュニティ、時代による見え方までもが変化したりシフトしていく現象も僕にとっては「都市」だと言えます。”観察”するような感覚をクリエイションするのが好きなんです。

1544172166655-_MG_7716

—— BALMUNGのシグニチャーであるビッグパーカーも似たような役割を持っているのでしょうか?
そうですね。BALMUNG独自のシルエットが「容器」、着る人が「中身」という関係性を築いているように思います。変幻自在とは言い過ぎかもしれませんが、モデルが着用したルック写真が完璧な装いの理想像だとは考えていないので。あくまでも、一つのシルエットを世界中の人が着ることで生まれ得る、日常の中で色々な側面を見せる/見る時の面白さが、BALMUNGの服の最大の魅力になっていると思います。それは従来の西洋ファッションの見方であるトップダウンの価値基準ではなくて、ボトムアップ。色々なブランドイメージがお客さん同士の間で生まれ、同時にブランドの持つ幅も広がるように感じます。

—— まさに原宿のストリートで自由にハイブランドも古着もミックスした着こなしが生まれる感覚ですね。そこは、みんなにとってのプラットフォームであり、遊び場でもあると。
BALMUNGを着ることで繋がりが生まれたりするような。それこそ、BALMUNG自体が「都市機能」を持っているとも言えるのかもしれません。そうしたことを前提に組み込んだデザインも、BALMUNGらしさのひとつだと思っています。

1544172203821-_MG_7777

—— グラフィックデザインでは、素朴な自然・原始のモチーフを使っていますよね。例えば石、花、ある意味、都市の自然としてゴミ袋も入るかもしれません。そうしたモチーフに惹かれる理由を教えてください。
人工的ではなく、自然の持つそれぞれの個性があるものに惹かれるんだと思います。あとは、一般的にみんながイメージしている「豊かさ」とは縁が遠そうな素材をビジュアルにしていますね。近年の日本人が持つ「綺麗なものが好き」という感覚ではなく、少し埃や土、腐っていたり「汚れ」とされているものがみせる綺麗さもあると思ってます。

—— グラフィックや撮影場所として使われる「家」のモチーフにも日本の美意識を感じているのでしょうか?
そうですね。西洋であればファッション雑誌の撮影で宮殿を使うように、日本であれば、アパートの中での撮影は、日本の空気を感じられる日常の普遍的な象徴だと思っています。

1544172248178-_MG_7692

—— 過去のコレクションでは、グラフィックデザインから独自の美意識を感じていましたが、ここ数シーズンは素材からもそのような感覚を感じます。2019年春夏シーズンでは、工業資材の素材を服に落とし込んでいました。
そのままだと身体によりそわない素材を、デザインで形にする時に身体に引き付けるように仕立てる感覚がとても面白かったです。そうした衣装に近い素材を日常着で着られる服にギリギリ落とし込むところに、この素材ならではの緊張感がありました。また、今シーズンを特徴づけるジャージ生地は、シーズンレスに世界中の人がアクセスできる基本的な素材として象徴的に使用しています。

—— まるで最近のストリートファッションの拡張によってラグジュアリーの意味が拡張・変化している様子とも似ていますね。
普通にしていたら、なかなか価値が見出せないものを別の性質に変身させることが、作り手として興味を惹かれる部分なのです。お客さんにとっても、不思議な素材への興味が生まれるコントラストが、驚きに繋がるのではないでしょうか。

1544172301167-03
1544172361770-17
1544172377750-24

—— 今後、様々なアウトプットをする中でBALMUNGの将来像を教えてください。
唯一無二な何かを残せるようなブランドを目指したいですね。自分自身で自分の足元やローカルな言語を込めるクリエーションを創り続けたい。

1544172403687-_9222928

「Tokyo Fashion Arc 2018 Dec. @Laforet」
日時:2018年12月8日(土)11:00~19:00 *入場無料
場所:ラフォーレミュージアム原宿
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6
http://www.creators-tokyo.com/feature/1016/

《インスタレーション》
BALMUNG 13:00/17:30
YUKIHERO PRO-WRESTLING 14:30/16:00

《POP-UP SHOP》
BALMUNG
divka
jean genie & hungry freaks, daddy
l’A.S
Licht Bestreben
MIDDLA
Motohiro Tanji
NAPE_
RIEKA INOUE GNU
rikolekt
SEVESKIG
SHINYA KOZUKA
SHIROMA
Ventriloquist
YUKIHERO PRO-WRESTLING