Photography Mitchel Sams

パリに宛てた恋文:Chanel 18-19AW クチュールコレクション

クチュールがファッションの本質なら、シャネルはクチュールの本質だ。

by Osman Ahmed; translated by Aya Takatsu
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06 juli 2018, 5:38am

Photography Mitchel Sams

フランスが誇るブランドがその最新コレクションを通して思い出させてくれたのは、オートクチュールという分野でChanelが持つパワーと魔法だった。先月、Chanelは108年におよぶブランド史上初めて、香水部門の決算報告を行なったが、そこで明らかになったのは、このブランドが毎年およそ100億ドルの収益を上げていること。それはこのメゾンを世界最大に仕立て上げるだけでなく、ひいては香水やリップの売り上げをもアップさせる幻想的なオートクチュールコレクションを繰り返し行なう目的ともなっている。

フランス学士院の紙製ドールハウスの向かい側にカール・ラガーフェルドがつくり出したのは、シャネル女史に関する古書、セピア色のパリの絵葉書、古い『ヴォーグ』誌を並べた暗緑色の古本屋がある、セーヌ川沿いの風景だった。そしてラガーフェルドのお気に入りの男性モデル、シャンパン色の髪をした教え子たちも、ウォッシュのかけられたグレーのデニムとツィードをまとい、ショー全体を通して登場した。Chanelのクチュールショーはいつもそうだが、今回は特に私的で、グラン・パレをブロブディンナグ国の滝や森につくり変えた前回のものより、壮大さが薄れていた。(おぼえ書き:環境的なことに疑問を感じているなら、安心してほしい。このセットの80%はリサイクルかリユーズされることになっている)

ショーはそのほとんどがパールグレーとパウダーピンクの組み合わせで構成されていた--ミッドナイトブルーや黄褐色、プラム色、ときにはマゼンタやタンジェリンなどのアクセントも登場したが。グレーのトタン屋根、スモーキーカラーのアスファルト、あずき色の秋の葉、セーヌ川に映る朝焼けなど、それらの色彩はどれもこのフランスの首都にヒントを得ていた。

タンポポの綿毛のようなスカートやバルーンスリーヴ(かつてウォールストリートで働く男たちの妻やガールフレンドの制服だった)もあったが、コレクション自体はシンプルで、そうした目立つものだけでなく、完璧に丸みをつけた肩から袖や、直線的なスリットのヘムライン全体に施されたふち飾りにも注力しているようだ。最近のプレタポルテコレクションより緻密で、よりエレガントに仕上がっている。アクセサリーなどつけずに、ラガーフェルドの手による美しい衣服をまとって歩くモデルたちは、ファッションというフィールドにおいてこのドイツ人デザイナーが持つ洞察力あふれるスキルを確信させた。例えば、黒いベルベットの着物は裏地全体にきらめく花々が敷き詰められていたし、羽飾りのついたベルベットのボートネックトップは、銀色のティッシュペーパーを編んでつくられた第2帝政時代ふうスカートに合わせられていた。

そして、『パリの恋人』のオードリー・ヘプバーンのようなロマンティックな斬新さにあふれた、今をときめく南スーダン出身モデル、アドゥ・アケチがChanelの花嫁として登場。身に着けていたのは、巧みにラウンドさせられたショルダーラインと、アカデミー・フランセーズの制服にあるような葉のモチーフの装飾が印象的な、ペパーミント色のルダンゴートだった。その姿はまるで、パリのあちこちにある威厳に満ちた銅像のようであり、またそれ以上にパワフルなものだった。

This article originally appeared on i-D UK.