Photography Vanni Bassetti

日常のヒーローと異生物の邂逅 Craig Green SS19

私たちのあいだを天使が歩く? あれはより良い世界への入り口か? 私は犯罪現場に足を踏み入れてしまったのだろうか? Craig Greenのトラベラーが新しい見方を開拓する。

by Steve Salter; translated by Aya Takatsu
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jun 20 2018, 6:46am

Photography Vanni Bassetti

ユニフォームと実用的なもの、機能と感情、制約と自由といったコンセプトを結びつけるCraig Greenのビジョンは、2013年秋冬コレクション以来の最高傑作をロンドンファッションウィークにもたらした。機能的でありながら想像によってつくられたユニフォームに絶えずインスパイアされるデザイナーである彼にとって、服飾の現実と精神世界こそ、その意識の中心にあるものなのだ。彼のショーは観る者を異世界へと誘い、その旅は彼らの心の状態に挑んでくるーークレイグの2015年春夏コレクションは感情的なパワーに満ち、多くの者を涙にくれさせた。信者、戦士、フォロワーをコラージュするというその定番的手法は変化を続け、高い評価と商業的な成功をありとあらゆるところでもたらし、ファッションアワードでブリティッシュ・メンズウェアデザイナー・オブ・ザ・イヤーを2度も勝ち取った。ロンドンで生まれ、この街に拠点を置くこのデザイナーは2019年春夏コレクションで故郷を離れ、ジョナサン・アンダーソンやヴァージル・アブロー、ラフ・シモンズらに続くかたちで、フレンツェで年2回開かれるメンズウェアの展示会、ピッティ・ウォモのゲストデザイナーとなったのである。「これは一生にいちどの機会です」と、クレイグ・グリーンはバックステージで語った。

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フィレンツェのボーボリ庭園(16〜18世紀の彫刻コレクションといくつかのローマ遺跡が置かれている)のなかにある忘れ去られた一角が、足場とデヴィッド・カーティス=リングによる21世紀の彫刻で生まれ変わった。「フィレンツェを訪れたとき、最初は、私たちがロンドンで利用していたような未使用のスペースーー工場、労働する場所、学校ーーを探していたんです。そのあと、ロンドンだとやるのが難しいようなこと、つまり屋外でのショーをしたほうがいいのではないかと思いつきました」とクレイグは説明する。「それなら伝統的なフィレンツェらしい場所がいい、でもちょっとそれをひねったところということになったのです」

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その開催場所と同様に、コレクションもまたあらゆる点でひねりが効いたものだった。ものの見方で遊び、慣れ親しんだものを異世界のものへと変えてしまうクレイグ。そこにはいくつかの見方が存在した。「ホラーが大好きなんです」。ボーボリ庭園の闇から生まれたショーの後で、彼はそう話した。「ときに、想像しうるなかでもっとも恐ろしいものは現実であったりする。そして、想像しうる最高のものは、あの世や天国など、わからない何かであるということもあります」。彫刻から、切り貼りして複製したプリントまで、このコレクションの多くは、クレイグの目を引き、その想像力に火をつけた、通りを歩く女性の写真から派生している。「この写真が撮られた瞬間、彼女の背後にある別の女性の輪郭が、彼女の身体の周りに後光のような効果をもらたしたのです。天使や後光といったポジティブな考えも大好きですが、そのダークな側面もまた大好きなのです。あとを尾けられているとか、犯罪現場のチョークの線みたいに見えるところとか。ある面では守護的なオーラなのに、もう一方で死を意味するのです」。クレイグはこの二重性を深く掘り下げ、正直で働き者の労働者から、“より良い場所”へのヒントとなる理解の範疇を超えたトリップ感あるフィナーレに至る旅へと私たちを導いたのである。

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オープニングに登場したのは、清掃夫や外科医、郵便局員などの制服からインスパイアされた実用的なルック。しかし、もっともシンプルな羽織やスモックでさえ、クレイグ・グリーンの斬新な思考によって素晴らしいものになってしまうのだった。「ちょっと現代の天使というふうでもあります」と彼は説明する。「みんなの人生をその手に握っているような人たち、つまり忘れられた救済者なのです。保護的な服のシンプルさには、なにかとても美しいものがあります。よく働き、善を為すことで、人々はその人生においても天使になることができるのです」。その後、この日常の天使たちの記憶は、そのユニフォームをかすかにプリントしたシャツ生地によって蘇る。「服のなかに閉じ込められた幽霊のようでしょう」

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実用性がファンタジーにまで高められ、平凡が非凡になり、シルエットは絶えずコラージュされ、布地は重ねられ、プリントはゆがめられる。最初に出てきたままのものはひとつとしてない。トリップ感ある橙色のフィニッシュは、パーフェクトなピリオドとなっている。しかし完全な幕切れではない。それは、まだ何かが続くというヒントなのだ。「最後のプリントは3D効果に近いものとなっています。というのも、少しだけ動くことでプリントが振動しているように見えるように、3つのプリントを重ねているのです」とクレイグは解説した。「そこからより良い場所へと逃げられる扉や門のようにも見えます」。クレイグのコレクションは常に3つのシリーズから成っているが、2019年春夏は最新3部作を締めるものだった。「最初のものは楽園のダークバージョン、その次は時間の悩み、そして今回は、私たちに必要なのは他の人や生き物だけだということをほのめかしています」

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This article originally appeared on i-D UK.