Photography Hideya Ishima

紳士的なスポーツマンシップに学ぶこと: WEWILL 20ss

「洋服は誰でも着られるものであってほしい」。近代スポーツに宿るダイバーシティやインクルージョンの概念や、人種差別が厳しい1940年代後半から活躍した黒人メジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンからイメージを膨らませたという〈WEWILL〉。デザイナーの福薗英貴は、何を考えたか?

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Hideya Ishima
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30 August 2019, 9:39am

Photography Hideya Ishima

第二次世界大戦後の1947年、白人だらけのメジャーリーグの舞台にデビューし、後に野球界のみならずアメフトやバスケットボールなどにおいても黒人選手が活躍する道筋をつくった人物 —— ジャッキー・ロビンソン。

2004年から毎年、彼が初めてグラウンドに立った4月15日に行われる全試合では、全選手が、全球団共通の永久欠番「42」を背に掲げてプレイする。理由は説明するまでもないだろう。

そして、追いつ追われつの試合状況を意味する「シーソーゲーム(see-saw game)」を今シーズンのタイトルに掲げたWEWILLは、公平なスポーツの精神を語るうえで欠かせない、かのジャッキーの存在から多くのインスピレーションを得ているとデザイナーの福薗英貴は語った。

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「まず、スポーツをテーマにコレクションをつくりたいと思い、特定の競技を決めることなくリサーチをしていました。同時に、スポーツにおけるダイバーシティやインクルージョンといった概念を考えていく中で、ジャッキー・ロビンソンのことが脳裏に浮かんできたんです」

当時のアメリカでは、当然のように人種差別が横行していた。特に南部にはまだジム・クロウ法もあり、公共施設の使用も、スタジアムへの入り口でさえも、肌の色で明確に区分されていた。

ジャッキー・ロビンソンのデビューは、他球団からも、野球ファンからも、さらにはチームメイトからも痛烈な反対が起こっていたという。

「想像を絶する差別を受けていたはずです。それでも彼は、仕返しや報復をせず、耐え続け、あくまで“紳士的”に振る舞い続けたといいます。今回は、ジャッキーのそうした姿や精神からイメージを膨らませていきました。“紳士”はキーワードのひとつでしたね」

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球場を模したインスタレーション空間は、ナチュラルトーンにダークトーンと、2つのチームカラーで分けられた9人のモデルと9体のトルソーで構成。さまざまな対極性を際立たせながらも、ひとつのフィールド上で共存しているシチュエーションがつくりだされた。

例えば、「ここまでやれば肌の色も、もはや関係なくなるんじゃないか」と考えたというモデルに施したエクストリームなメイクアップ。音楽も2つの音が組み合わさったマッシュアップスだった。いささか挑発的な“プレイヤーたち”のムーブも、たたかいに挑む気概にあふれている。

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彼らが身にまとっているのはすべて、「紳士的なもの」の代表格であるスーツスタイルと、上下一体の野球のユニフォームからの着想がリンクしたセットアップスタイルだ。

カッティングで描く身体を拘束しないゆるやかなシルエットや、パンツのクロップドの丈感は、今よりもずっとルーズフィットだった野球のユニフォームを想起させる。ベースボールシャツのディテールを表現したカーディガンやストライプ柄のファブリックも印象的だ。

が、いわゆるスポーツウェアの機能性素材は使わず、麻やウールといった天然素材で仕立てられていたり、ウォッシュド加工が施されていたりするのは、実に〈WEWILL〉らしい。

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ショルダーラインを強調した男らしい(まさにジャッキーが球界を震わせていた)1950年代のボールドルックスタイルのジャケットを彷彿とさせるが、肩パッドはなく、太めのストレートパンツや裾をファスナーで開閉できるテーパードパンツを合わせることで現代的なリラックスしたスタイルに。

〈PORTER〉とのコラボレーションの「THIS BAG CONTAINS OUR WILL」とプリントされたエナメルバッグに、揃いのソックス。そして、〈New Era〉とのベースボールキャップまで、アクセサリーのバリエーションもいつも通り豊かで、多分にもれずコンセプトに忠実だ。

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福薗は話を続けた。「僕自身も、海外に住んでいた時期に受けた苦い思い出はある。ダイバーシティやインクルージョン、あるいは具体的な差別について考えることは多々あったので、意識は自然と向いているんだと思います」

例えば、デザイナーである彼は、外国人と日本人の差をあまり意識しないと言う。〈WEWILL〉の洋服は、人種を問わず、誰でも着られるものであってほしいという基本の考えがあるからだ。

「世の中は微妙なバランスのもとに成り立っている気がしていて、結局は単純なことなのかもしれない。『どっちもどっちだし、それでいいじゃん』。だから、『シーソーゲーム』という言葉を選んだんです」

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