ハインズ:ロックの未来を担うオール・フィメール・バンド

セカンドアルバム『I Don't Run』をリリースし、ヨーロッパツアーを間近に控えているハインズ。このスペインのバンドでヴォーカルとギターを務めるアナ・ガルシア・ペローテにインタビューを行なった。

by Ariana Marsh; translated by Aya Takatsu
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07 May 2018, 3:57am

セカンドアルバムの発売を2日後に控えたその日、ハインズは見知らぬ人々と共にビア・バイク[訳注:ビールが飲めるバーがついた乗り合いバイク]でマドリードを走り回っていた。SNSを通じて選ばれた幸運なファンが、この車輪のついたアドベンチャー兼うちうちのアルバム試聴会に招待されたのだ。そしてもちろん、そのあとに続くのは、お酒とダンスの夜。「想像どおりに最高だった」とアナ・ガルシア・ペローテは語る。そのどんちゃん騒ぎが故郷の町を千鳥足で通り抜けるあいだ、バンドのメンバー4人全員──ヴォーカルでギターのペローテとカルロッタ・コシアルス、ドラムのアンバー・グリムバーゲン、そしてベースのアデ・マーティン──は、そのニューアルバムの歌詞を快活に歌い上げたのだった。世界中のファンと一緒に歌う日の準備は万端だ。

2018年4月6日にドロップされた『I Don't Run』には、陽気なガレージロックが11曲、最高の状態で詰め込まれている。その音楽はハインズのデビューアルバム『Leave Me Alone』と同じように、ザラついたDIY精神を備えていた。ノスタルジックな魅力にあふれながら、少しだけ、良い方向に洗練されている。ゴードン・ラファエル(ザ・ストロークス)との共同プロデュースで、ミックスはショーン・エヴェレット(アラバマ・シェイクス、ジュリアン・カサブランカス)が担当したこのアルバムでは、その洗練された制作陣のおかげで、ハインズの持ち味であるファズでポップなヴォーカルと、中毒性のあるサビが活かされている。リリックはストレートで、複雑すぎる比喩はない。その意とするところをずばり言うので、聴く者の心の琴線に触れるのだ。「こういうレコードのつくり方をする人は、もうあまりいない」とペローテは話す。「ジャケットやアートワーク、歌詞にベースやギターのソロまで、すべてが一緒になって成立してる。すべてがひとつのピースだから」

以下は、ニューアルバムについてi-Dがペローテと行ったインタビューである。

── バンドとしてツアーをすることで、友情のあり方がすっかり変わったりはしませんでしたか?
一緒に時間を過ごせば過ごすほど、友だちじゃなくて姉妹みたいになっていったの。お互いのことをよく知っているし、それは良くも悪くもあるじゃない? 大事なのは、自力で成長するってこと。まだお互いのことが大好きだし、一緒に楽しめるし、大親友。でもこの関係をより良くするために、それぞれ何ができるかってことが、いちばん大切だと思う。

──『Leave Me Alone』はものすごく忙しいときにレコーディングしたのですよね。その経験は『I Don't Run』に取り組む際に生かされましたか?
100%ね。ファーストを書いているときは、何もかもがすごく急で。すでに世界中をツアーしている最中だったから、休みなんてなかった。自分たちの限界を引き上げるっていう意味では良かったけど、こんなやり方もう2度とするもんかって感じだった。『I Don't Run』では、中断したり、完全にそのことだけに注力する場をもらったから。仕上がりには本当に満足してる。

── 制作的には、ファーストより少しだけ洗練されたような印象を受けます。それが狙いだったのでしょうか?
『Leave Me Alone』と同じで、今の私たち自身を、自分なりの方法でレコーディングしただけ。レコードは1枚ごとに大きな飛躍になるけど、私たちは毎日小さなステップアップを積み重ねてきてるでしょ。ゴードン・ラファエルを共同プロデューサーに迎えたんだけど、英語を母国語とする人と一緒に仕事をするのは、発音の助けになるって意味で、大きな違いをもたらしてくれた。ゴードンは私たちにアカペラで歌うように言い、もし途中でわからない箇所があれば、中断させてこう訊くの。「今なんて言ったんだい?」 それってクール。だって彼は私たちを本当に変えようとはしてないから。この訛りを保ちながら、すべてをクリアにしようとしているの。ロサンゼルスからはショーン・エヴェレットも招いた。彼は私たちにとって本当にマジシャンみたいな存在。制作の世界は私たちも理解してるけど、ミキシングについてはまだ幼児レベルだから。結果は私たちが望んでいたものそのままだった。

── 曲はどういうふうにつくるのですか?
このレコードで私たちが取り上げているテーマはより内省的で、表現の仕方はよりダイレクトになってる。『Leave Me Alone』では、すごくたくさん比喩や隠しトリックを使ったから。歌詞を複雑にしすぎて、ほかの人にはわかりにくくなってしまったかも。『I Don't Run』では、自分たちの言いたいことをただ伝えていこうって決めたの。

── お気に入りの曲や、これはという曲はありますか?
「Finally Floating」ね。ハインズのいちばん情熱的な一面が見える曲だと思う。アルバム全体を通して、夢について語っているの。ベッドに入り、目が覚めて、眠りに落ちることができない。そういうすべてのこと。バンドの、特にハインズの一員であるというのは、フレンドリーで社交的で、しょっちゅう人にあっているってことなの。四六時中ね。もし私がおかしくなって誰にも話しかけなかったら、耐えられなくなると思う。本当の意味でプライバシーが守られていて、心底リラックスできるのは、ベッドに入ろうとする瞬間。そこに到達すれば、もう終わり。1日の仕事はやり遂げた。だからこのアルバムで、私たちはそんなコンセプトにちょっとのめり込んだってわけ。特に「Finally Floating」ではね。

── USツアーを終えたばかりですね。何かいい思い出はありますか?
もちろん。すごくいい話があるの。アルバート・ハモンド・ジュニアと共同ヘッドライナーを務めたんだけど、それはつまり、何度かは彼のあとに、何度かは彼の前にステージに上がるってこと。ヒューストンでのライブでは、私たちが最初に演奏した。ライブは大成功だったから、最後にはすごく酔っ払っちゃって、アルバートのライブを見て楽しんでたの。なんでか知らないけど、ポケットに5ドル札があったから、ステージに上がり、彼の顔の前でそれをヒラヒラさせて振り向かせ、ベルトにそのお金を差し込んで。彼は「何だ?」って顔をしてたわ。最高におもしろいのは、彼がWhatAppでこんなメッセージを送ってきたこと。「明日ステージで会おう。5ドル札をちゃんと用意しておくからな!」 でも私たちがステージに上がる直前、彼はこう言ったの。「なあ、俺はやらないことにするよ。君たちは若くてクールだけど、もし俺が同じことをしたら、薄気味悪く見えてしまうかもしれないからね」

── 以前、音楽業界に入るまで、本当の意味で性差別を受けたことはなかったと話していました。バンドとしてどのような影響を受けましたか?
この業界に入ったとき、自分たちには積極的なフェミニストになる以外の選択肢はないって気づいたの。この業界にいたら、平等のために戦わないなんてことはできないでしょ? そこらじゅうに自分たちを蹴落とそうと目論む男たちがいて、女だから、若いから何もわからないなんて言う。笑ってるから、スカートをはいているから、スカートをはいていないから、きれいすぎないから、醜すぎないから、わからないって。そのすべてと戦わなければならないんだって気づいた。そうしなければこの業界にいることはできない。カルロッタ、アデ、そしてアンバーと一緒じゃなかったら、これまでしてきたように応戦できたかはわからない。仲間がいてラッキーだった。

── もうすぐヨーロッパでのツアーが始まります。ライブで演奏するという興奮は、減ってきましたか?
同じ情熱、同じ“今夜が超待ちきれない”感は今も持ち続けてる。いつもね。いちばん好きなのはライブでの演奏。こんなに何度も演奏したあとでもまだそう言うなんて、クレージーよね。私たちは、今いる場所で自分たちがしていることを、しっかり心得ていると思う。自分たちが何者で、どこにいて、どこに行きたいかということも。

This article originally appeared on i-D US.