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「ヒーロー、現る」:Prada、Dsquared2、MSGM ミラノ・ファッション・ウィーク・メンズ

「とにかく人間的なことがやりたいと思った」と、ミウッチャ・プラダは、コミックの世界をベースとした2018年春夏メンズ・コレクションについて話す。

by Anders Christian Madsen
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28 June 2017, 11:59am

スーパーヒーローという存在ほど、人類の精神構造の単純さを明確に示すものもない。世界大恐慌の最中に生まれ、第二次世界大戦中を通してひとびとの憧れとなったスーパーマンやワンダーウーマン、バットマンといったスーパーヒーローは、ひとびとに勇気を与えてきた。そして、9.11世界同時多発テロの勃発以降、スーパーヒーローの存在が世界で改めて大人気を博しているのにも理由がある。わたしたちは、救済を渇望しているのだ——現実世界でも、架空の世界でも。同じ理由で、ファッション関係のレポーターたちは、まるで救世主からのお告げに助けを求める平民のごとく、ショーの後には必ずミウッチャ・プラダのもとへと駆け寄り、彼女の独創性に救済の答えを求める。彼女は「わたしたちは今、二重の世界に生きている。そう思いませんか?」と、日曜の夜、ミラノでミウッチャは話す。「ひとつはヴァーチャルリアリティ、もうひとつは血の通った生身の現実世界。そのあいだで交わされる対話が面白いと思います」。彼女はPradaの2018年春夏メンズウェア・コレクションで、コミックに目を向けた。しかし、マーヴェルやDCといったアメリカン・コミックとは対照的に、超常的なパワーや現実逃避に解決を求めることはしなかった。「人間味、シンプル、そしてリアル」とミウッチャは繰り返した。「とにかく人間的なことがやりたいと思ったの。人間の物語を」

Prada spring/summer 18

Prada spring/summer 18

それは真新しくさえ感じるほどシンプルに描かれた。最先端素材を用いたつなぎ、裾にカフをもたせたナイロンのパンツ、カーディガン、フォーマルなコート(このコートは、今季Pradaのコレクションのなかで唯一、フォーマルなデザインのアイテムだった)。ウインクルピッカー(先の尖った靴)に、絞った腰まわり、そしてセンターロールリーゼントのヘアを合わせれば、50年代ユース・カルチャーの世界観さながらといったスタイルだ。コレクションは、カジュアルでゆったりとしていた。イタリアのヴィチェンツァにあるフォガッザロにて行なわれたショーのセットは、Pradaが直々に作品制作依頼をしたアーティストたちによるコミックの絵に覆われていた。ミウッチャは、アーティストたちに「スーパーヒーローという側面ではなく、人間性にフォーカスした物語を描いてほしい」と依頼したという。彼女が打ち出そうとしたメッセージは明白だった。ファンタジーを超えたリアル。それはミウッチャの口から聞くまでもないことだった。今回のコレクションはわかりやすいファッション性を打ち出し、服はどれも着やすいもので、ショーではそれらがウエストポーチや、スーパーヒーローの絵が織り込まれた膝丈ロングソックスなどと合わせられてスタイリングされていた。今季Pradaは、観客が無意識のうちに考えていたことを先読みしていた。そして、ミウッチャはコレクションでそれをひとびとに説いていた。ファッションでも実生活でも、ヴァーチャルリアリティを広げていくのではなく、この実際の現実世界を改善していくべきだと。

DSquared2 spring/summer 18

DSquared2 spring/summer 18

ミラノでは日曜の夜、Pradaに続きDsquared2が2018年春夏コレクションで50年代の世界観を追求していた。デザイナーのディーン・ケイティンとダン・ケイティン兄弟はパンクや、容姿端麗な学校きってのスター生徒などが、ビート世代調のバックルやエルヴィス・プレスリーをも唸らせたであろうフリル付きシャツをまとっている世界。それは考えうる最高の、夢のような高校時代の物語だった。50年代調がもてはやされるとき、わたしたちはそこにある一定の世界観を見出そうとする。完璧さは美徳であると考えられた戦後社会——「古き良き50年代」という世界観だ。しかし今季、PradaとMarniは、完璧さを体現した50年代にも"完璧ではないもの"があったのだと訴えているようだった。シャツもいつかはほつれるし、リーゼントも時間が経てば乱れてしまう。MSGMでは、デザイナーのマッシモ・ジョルゲッティが引き続きアメリカン・ドリームの世界を追求していたが、そこでもフローラル・プリントは色褪せ、色彩はおとなしく、ニットはグランジ風な世界観を醸し出していた。ミラノの2018年春夏シーズンは、古き良き時代へと目を向けていながらも、いまある現実にしっかりと根づいていた。

MSGM spring/summer 18

MSGM spring/summer 18

Credits


Text Anders Christian Madsen
Photography Mitchell Sams
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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