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「インサイド・プッシー・ライオット」:ナジェージダ・トロコンニコワ interview

プッシー・ライオットが運営するニュース配信サイトと、観客参加型の舞台。その二つのプロジェクトを通じて、ナジェージダはロシアの残忍な刑務所問題にメスを入れようとしている。

by Frankie Dunn; translated by Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.
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18 December 2017, 11:11am

This article was originally published by i-D UK.

「プーチンは、強くパワフルな女性を恐れている」——プッシー・ライオット(Pussy Riot)が今夏Kickstarterで行なったキャンペーン「Inside Pussy Riot」のページに貼りつけられた動画の冒頭で発せられるのが、この言葉だ。「わたしたちは恐れず声を上げる。だからわたしたちは2年間も牢獄に放り込まれたの」

お忘れの読者もいるだろうから、ここでおさらいを——2012年2月21日、フェミニスト・パンク集団プッシー・ライオットのメンバー5人は、モスクワの救世主ハリストス大聖堂に踏み込み、その場で、プーチン大統領の独裁と政治腐敗、人権無視への抗議として、反プーチンを歌った「Punk Prayer」を演奏した。彼女たちはすぐに逮捕され、裁判では強制労働が強いられる懲役2年の刑を言い渡された。

今秋、ボーカルのナジェージダ・トロコンニコワは大聖堂でのパフォーマンスから裁判、牢獄、強制労働まで、彼女が現実に体験したことをあますところなく見せてくれた。オリヴィエ賞を受賞したこともあるロンドンの劇団〈Les Entants Terribles〉とのコラボレーションによるこの舞台は、バンクシーがプロデュースしたテーマパーク、ディズマランド(Dismaland)で上演される。観客は「今のロシアで政治活動家として生きるということ」「犯罪者として投獄されることの意味」、そして「人びとが人権を守ることの大切さ」について学ぶことができるという。

詳細を訊こうとモスクワにいるナジェージダにSkypeをかけると、彼女はその朝にアレクセイ・ナワルニーと、ある企画を終えたばかりだった。ナワルニーは2018年の大統領選挙に立候補してプーチン大統領と闘うこととなる政治家だ。ふたりはYouTubeで1時間にわたる対話をライブ配信した。「検閲を受けない独立系のテレビ局がこの国にはない。だから、彼はYouTubeのチャンネルを立ち上げたんです」とナジェージダは言う。「ナワルニーはユーモアのセンスがあるから好き。そんな政治家、ほとんどいないでしょ?」

プッシー・ライオットが運営しているニュース配信プラットフォームがあることをご存知だろうか? 2014年に釈放された際に、プッシー・ライオットのメンバーは「ひとが真実を知る手段を持つことは当然の権利だ」と考え、検閲によって職を失っていたジャーナリストたちを集めて〈Mediazona〉を立ち上げたのだ。以来3年間、彼女たちはこのサイトを通じて、ロシア国民に真実のニュースを発信し続けている。現在、月間の平均閲覧者数は140万人。〈Mediazona〉はロシアの政治家たちがもみ消している犯罪の事実を暴いているが、そのニュースを書いた記者への襲撃が起こったり、サイトへの脅迫を受けるなどしている。しかし、閉鎖に追い込まれるようなことがあっても〈Mediazona〉はバーチャルプライベートネットワークなどを使ってニュース発信を続けるだろうとナジェージダは考えている。

「声をあげようとするひとを止めることは誰にもできない——そのひとを殺さないかぎりはね。だけど、ここは口封じのために平然と殺人が行なわれる国だから」

——怖いですね……では、現在取り組んでいる舞台について聞かせてください。

先に言っておきたいんだけれど、わたしは楽観的なの。イメージとは真逆かもしれないけど。裁判の際、わたしが絶えず笑顔だったことはよく知られている。新聞は、わたしが「フェミニストである」「教会で踊った」「裁判中に笑顔だった」という3つの罪で収監されたと書き立てたけれど、そのどれをも恥じてはいない。多くの人がロシアの現状について語っているけど、誰も本当には理解していないような気がする。だから、早くプッシー・ライオットのメディアチャンネルの英語版を作りたい。アートも重要なコミュニケーション手段。ときにはメディアよりも力強いコミュニケーションを可能にするから。それで舞台をやろうと思ったの。

——観客が参加できる舞台のアイデアはどこから? そのような舞台をみて「自分のほうが良いもの、リアルなものを作れる」と思った経験があるのでしょうか?

まさにそう。釈放されてから、いろんなコミュニケーション手段を考えた。プッシー・ライオットは、バンドとして“ステージに立つだけのアーティスト”以上の存在を目指した。だからこそ、わたしたちは違法なやり方でパフォーマンスを決行し、逮捕され2年間収監されたの。

観客参加型の舞台はいくつか観た。ニューヨークのSleep No Moreはとても良いと思った。それ以前にも、ロンドンでLes Enfants Terriblesの「不思議の国のアリス」を観たことがあった。素晴らしかったけれど、政治的なメッセージが込められていたらもっと良いのにと思った。世界がこんな状態なんだから、わたしたちはもっと政治に意識的になるべきだと思う。でないと、政治家たちはいつかわたしたちを強制収容所にぶちこんで、わたしたちは「金正日とその従順な人びと」として歴史に押し流されていくことになる。だから、わたしたちはあらゆるメディアを政治的観点から考えていく必要がある。観客参加型の舞台もそのうちのひとつなの。

——ディズマランドでもパフォーマンスを披露しましたが、その経験がインスピレーションとなったのでしょうか?

そうね。「Refugees In」を演奏したんだけれど、あのときに観客参加型の舞台にするアイデアが明確になったの。観客はプッシー・ライオットのライブを観るつもりで会場に来ていたわけだけれど、そこでは武装警官たちと抗議者たちの衝突が起こっていた。観客席からも抗議の声が上がりだして、来場者は 「自分も逮捕されるかもしれない」と感じ始めたの。

——「インサイド・プッシー・ライオット(Inside Pussy Riot)」では何が起こるのでしょうか?

観客を取り押さえて、独房に放り込んで、警官の制服を作らせるの。どれもわたしたちが実際に経験したことね。

——観客が動揺しながらも学べるような空間を作るわけですね?

実際に体験させるのはとても重要。収監の現実は、エンターテインメントにしてはいけないと思う。刑務所のなかで起こっていることを知ってもらいたい——そして、それがロシアに限ったことではないということを。当局にプレッシャーをかけて、現行の刑務所制度改正を訴えれば、現状を変えられる。できるなら考えずにいたいことだと思う。でも、このままじゃ大勢が刑務所で死んでいくという現実を変えられない。いま収監されているひとの多くは、重罪を犯したわけじゃなくて、いまの政治腐敗があるからこそ間違いをおかして投獄されているにすぎないんです。

——あなた自身、収監されてどんなことを学びましたか?

モスクワで活動するアクティビストとして、これまでにも多くの時間を学生や教授との対話に費やしてきた。モスクワでプーチンを支持しているひとはほとんどいない。だったら、地方に暮らすひとたちが支持しているのかと思っていたんだけど、収監されたときに服役者たちと話しても、プーチンを支持している人はいなかった。彼らはこう言ってた。「わたしたちはバカじゃない。政治が腐敗してるのだって気づいてる。政治家がわたしたちのことなんてなんとも思っていないことは明白。わたしたちは変革を起こせるタイミングを待ってるだけ」って。釈放になるときも「連絡を取り合いたい」「本当の革命を起こすときには連絡をくれ」と言われた。

——その革命はいつ起こるのでしょうか?

いい質問ね。来年には起こしたいと思ってる! 選挙が行なわれるのが来年だから。今年の3月と6月にロシアでは若者たちが街に出て正義を訴えた大きなデモがあった。「プーチンを辞めさせろ」「政治腐敗を払拭しろ」と、明確なメッセージを訴えたの。この動きはこれからも続くと思う。18歳以下も選挙権はないけど、抗議運動でなら声をあげられるから。

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Credits


Text Frankie Dunn
Photography Denis Sinyakov

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