Chanel, Miu Miu, Louis Vuitton

CHANEL、MIU MIU、Louis Vuittonがひしめき合う:2018SS パリ・コレクション 最終日

ファッション界の頂点を争ったCHANEL、Miu Miu、Louis Vuitton——そして、ファッションウィークが幕を閉じる。

by Susie Lau; photos by Mitchell Sams
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06 October 2017, 12:07pm

Chanel, Miu Miu, Louis Vuitton

パリ・ファッションウィークのタイムテーブルに変化が起きたことで、今季のファッションウィーク最終日は大御所ブランドによるショーが相次いだ。一日のはじまりに高さ50フィートの滝を再現したセットに感嘆し、12世紀に要塞として作られたルーブル美術館の地下スペースで一日のスケジュールを終えると、「パリのメゾンはショーの規模を競い合うのが好きなのか」と思えてしまう。「うちのほうが大胆なことをやってのける」と。しかし壮大なセットや歴史的な会場でショーを開催することを競い合っても、肝心の服がそれに見合っていなければ意味がない。

Chanel

パリ・ファッションウィーク最終日、すでに苛烈な競争のなかにあるパリのファッション界のなかでも大きな力を持つメゾンの頂上決戦が行われた。それぞれに財政不安や不穏な噂が囁かれているなかでデザイナーたちは何を見せたのか? それは「自由なファッション」だ。ラグジュアリーだろうがコンテンポラリーだろうがなんだろうが関係なく、ソーシャルメディアで見て気に入ったものを取り込むような客層を獲得しようと思ったら、メゾンもそれぞれが持つ歴史や信条にあぐらをかいているわけにはいかない。

Chanel

昨シーズン、CHANELは宇宙船の発射台を舞台にしていた。今シーズンは、ヴェルドン渓谷を再現し、心洗われる情景を作り出した。高さ15メートル、幅83メートルの滝が作られ、岩の割れ目や生い茂る植物までもが再現されていた。純利益が昨年比で35%の減少を見せているCHANELだが苦境にあっても動じることのない姿勢をセットに見せた。服もまた野心的だった。カール・ラガーフェルドは水の力強い流動性をテキスタイルに落とし込んだ。ショー会場となったグラン・パレに水が流れる轟音を響かせるなか、ラメ糸のルレックスを織り込んだデニム、フリンジやほつれ加工をほどこしたツイード、薄く繊細なレースなど、CHANELならではの生地がときに腹部をのぞかせるシルエットに用いられていた。

Chanel

今季CHANELのコレクションで特筆すべきは機能的でありまたアンドレ・クレージュやピエール・カルダンが打ちだした1960年代スペースエイジのファッションを彷彿とさせる防水ビニール素材だった。現代的な素材を用いることで、今季CHANELのコレクションは、堂々とした反逆的な若者精神を表した。透明の塩化ビニールがCHANEL伝統の技巧で作られた服と並べられるさまは、老舗メゾンが伝統に食ってかかっているように見えた。現在CHANELが発売しているブーツは、いまストリート・スタイルで大いにトレンドとなっている(現在大流行している動画アプリKiraKira+がその人気を後押ししている)。今季コレクションに見られたビニール製サイハイブーツやニーハイブーツは、その進化系として来季にストリートを彩ることだろう。

Miu Miu

対照的にMiu Miuのデザイナーのミウッチャ・プラダは贅を表現するのではなく、ムードやフィーリングに重きを置いたコレクションを発表した。ミウッチャとキャスティング・ディレクターのアニタ・ビットン(Anita Bitton)は、57ルックの半分以上を非白人モデルに着せてキャットウォークに送り出した。多様性が叫ばれて久しい現代、これを「画期的」などと感じるべきではないが、いまもショーのキャスティングで白人モデルばかりが起用さている現実は否めない。とはいえ、今季Miu Miuのキャスティングは多様性を推し進めるためのキャスティングではなかった。ミウッチャは単に彼女が作る服を現実に着ているひとびとをキャスティングしたのだ。

Miu Miu

ミラノでPradaのショーが行なわれた後、バックステージでアメリカ人ジャーナリストが「Prada 2018年春夏コレクションは、Pradaグループの売り上げの起爆剤になると思うか?」と質問していた。これに対しミウッチャは「売上なんかで判断されたくない。わたしの人生は売上などで判断できるようなものではないし、わたしの仕事も売上で測れるようなものではない」と答えた。今季Miu Miuはそんなミウッチャの思想が意図的にわからないようにされて幾重にも重ねられているのは明らかだった。プリントのハウスコート、印象的なソックス、装飾をほどこしたスリップドレス、フリルのブラウスなどがミウッチャ・プラダの思想を力強く打ち出していた。ミウッチャは表面的にではなく心から生きることを楽しむ女性像を作り出すことを使命としている。Miu Miuの服にミウッチャが込めたニュアンスを読み解くにも、表面ではなく奥深いところに目を向けなければならない。キャスティングの多様性も既成概念に従うことを拒むミウッチャの表現手段の一部でしかないのだ。

Louis Vuitton

今季のLouis Vuittonはルーブル美術館でコレクションを発表した。ショー会場へと辿り着くにはI.M.ペイがデザインを手がけたガラスのピラミッドを通り、身を屈めて12世紀から14世紀まで宮殿の要塞として使われていた地下のスペースへと降りていかなければならない。Louis Vuittonのデザイナー、ニコラ・ジェスキエールによる今季のコレクションは、これまでに発表してきたコレクションのなかでもっとも解放的なものだっただろう。Louis Vuittonは「旅」をテーマにわたしたちを魅了してきたが、今季ジェスキエールは旅の目的地を「場所」ではなく「時代」とし、タイムトラベルでコレクションを描いた。わたしたちは、数百年の時をわずか数分で旅したような気になった。金色の糸で繊細な刺繍がほどこされた18世紀調のフロックコートから、ナイロン製のランニングパンツ、特徴的な造形がなされたスニーカーまでを1つのコレクションとしてまとめ上げた。そこには彼が持つパターンと構造へのこだわりが垣間見えた。コートに配された華奢なストラップや、ざっくりと背中が開いたブラウスはリラックスした印象を与えていた。マリー・アントワネットを彷彿とさせる絢爛なバストラインのパニエドレスはブラウスが合わせられ、現代的に、軽さをもって解釈されていた。ジェスキエールが表現したのタイムトラベルはロココ調ブロケードやジャガードに混じり見られた『ストレンジャー・シングス』Tシャツなどがあった(『ストレンジャー・シングス』は、Netflixでシーズン2がまもなく配信開始する)。

Louis Vuitton

歴史的モチーフからジェスキエールはファッションの心を震えさせるビートを探り出した。Louis Vuittonにとって「時代を超越した価値を持ちながら、先進的な考えも打ち出している服を、独自のアクセサリーと合わせ美しい世界観を描く」ジェスキエールの能力は、決して手放すことのできない宝だろう。Louis Vuittonクリエイティブ・ディレクター退任の噂が絶えない彼だが、このショーでそんな噂を一掃し、そしてパリが依然として世界最高峰だと強く印象付けた。

Louis Vuitton
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