Willow wears all clothing Gucci.

異光を放つ10代、ウィロウ・スミス

14歳とは思えぬ想像力と知的好奇心によって独自の世界を打ち出すウィロウ・スミス。彼女は、現在の音楽界でもっとも興味深い活動をするミュージシャンのひとりであり、女性として、そしてアフリカ系アメリカ人として生きる自身の現実を語ることで世界に疑問を投げかけるオピニオンリーダーでもある。ウィロウ・ワールドへようこそ─きっとあなたも、彼女から何かを学ぶはず。

by Hattie Collins
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01 June 2017, 6:23am

Willow wears all clothing Gucci.

Jacket and trousers Gucci.

Coat Prada. Rollneck House of Liza. Skirt Loewe. Boots Costume Studio.

ウィロウ・スミス(Willow Smith)は曲のリリースをしているのではない。彼女は主張を表現しているのだ。「人々の意識を高める音楽を作りたい。内なる声に耳を傾け、この世界の原理と一体にならん。そして、光と愛、調和のもと、皆がひとつに。わたしの音楽を聴いて」--これが、彼女のSoundCloudページに書かれたプロフィール文だ。彼女はSoudCloudで9万5000人のフォロワーを抱えている。実際に会って話していると、彼女がスミス家の末っ子なのだということを忘れてしまう。彼女には、10代の若者なら当然ともいえる好奇心とエネルギーに溢れている。"ウィロウ・ワールド"がいまどうなっているのかについて訊けば、「それは、もう......最高!」と元気いっぱいに答えるが、会話をするときの彼女にはまったく子どもじみたところがない。思ったことをはっきり口にし、興味が向くものに対しては底抜けの好奇心をみせ、とにもかくにも知的欲求の強い、揺るぎない視点を持つ若者だ。面白く、オープンで、思慮深い--欲の渦巻くハリウッドで育った人間の一般的イメージからはかけ離れた存在感だ。しかし、彼女はこれまでにそういったロサンゼルスの典型的なイメージを打ち崩し続けてきた。彼女との会話には、かわいい犬の話も、どうすれば美しいセルフィが撮れるかという話も、どの男の子が気になっているかも、名声とどう向き合っているかといった話題も出てこない。ウィロウは、ロデオドライブでなど買い物はせず、オードリー・ロードやグローリア・アンザルデュア、アンジェラ・デイヴィス、そしてベル・フックスといった急進的フェミニストやクィア理論の第一人者たちの名を列挙したThugz MaisonのThe Goddesses Tシャツを着ていたりする。彼女が口にするのは、時間やフェミニズム、地球環境、そして彼女の世代といった話題が主だ。他にも、木登りについて語ったり、わたしたちが生まれてからいつの間にか刷り込まれているさまざまな概念を問うたりする。「これまでにわたしが得たなかで最高のアドバイスは、兄のジェイデン(Jaden Smith)が言った、『アインシュタインは時間を"相対的なもの"って言った。でも、アインシュタインはこうも説明すべきだった。"ほかに存在するものもすべて相対の関係があって初めて存在している"とね』という言葉」とウィロウは言う。「それでわたしは考えたの。"良い"も"悪い"も相対的な関係のなかで生まれるものだし、道徳と背徳もそう--この世のすべては相対的だって。『あのひとってホントに意地悪』と思っても、そのひとの人生や、どう育てられてどんな経験を経ていまのそのひとがあるのかを考えれば、そのひとのいまは然るべき状態なのであって、それを他人であるわたしが『意地悪だ』って決めることはできないんじゃないかと思う。すべては相対的だから、あるひとをこうだって他人が決めつけるのは無理なのよ」

Coat and dress Louis Vuitton. Socks stylist's own. Shoes TUK.

そういった発言がこれまでたびたび引用され、ウィロウは嘲笑の的となってきた。ウィロウと兄のジェイデンは、プレスから「奇をてらっている」「狂っている」「頭がおかしい」などと繰り返し書き立てられてきた。しかしそんな批判は、メディアと社会が退化し、独善的になっていることを示すものだ。若者が意見を持つとはなにごとだ--こんな小娘が、メディア・トレーニングも受けず、若者らしく過剰な自意識に口ごもることもなく、自由に思想を表現するなど言語道断だ、と。目を向ける先々に、チャート化された情報や芸能ニュース、ゴシップサイトのヘッドラインなどが溢れている現代--そこに、ウィロウは理想の世界を描き出し、主張している。若い女性たちにとって、ウィロウのような存在がいることは、なんと素晴らしいことだろう。彼女は親の後光で有名なわけでもなく(それもないとは言えないが......)、洋服のブランドを展開しているわけでも、セルフィ満載のInstagram(@Gweelos--フォロワー数はなんと66万人を超えている)が人気なわけでもない。2010年、トーク番組の女王と言われたオプラ・ウィンフリーに、「どうすれば慈悲深く優しい子どもを育てられるのか」と訊かれたウィル・スミスは、「子どもには口すっぱくこう言ってる--『お母さんとお父さんは金持ちだけど、お前たちは一文なしだ!』」

ジェイデンはドレスを着て、ウィロウは髪を剃って話題となった。彼らに関しひとつ明らかなのは、スミス兄妹が自由な精神と冒険心を育める家庭に育ったということだ。「わたしが自分の道を自分の好きなように切り開いているのは、そうするよう育てられたから」とウィロウは説明する。「両親はいつも言ってた。『自分で道を切り開かなければ、誰かほかのひとがお前のために道を用意してくれる。でもそれは面白くないぞ』って」。これまで、無垢な魅力が炸裂する「Whip My Hair」、10代のロマンスを描いた「Summer Fling」、2014年発表の「Female Energy」、そして最新曲の「F Q-C #7」と、ウィロウはわたしたちの眼前で変化し、成長していく姿を見せてくれている。彼女の音楽はときに難解ですらある。彼女はマイリー・サイラスやリアーナのような音楽をやる気などさらさらない(少なくともいまのところは)。そして、そういった方向性の音楽を作る必要もない。「音楽については誰にも口出しさせない。『それは売れないからやるな』なんて言わせないわ。何が売れるかなんて、考えるつもりもない」とウィロウは言い切る。「どうすれば人助けができるか、どうすれば『内なる力は誰のなかにもある』ってみんなに気づいてもらえるか--そのほうがよっぽど大切だから」

Willow wears coat Miu Miu. Top House of Liza. Trousers Sonia Rykiel. Jewellery (worn throughout) Willow's own. Shoes TUK.

彼女はそれを自信だけでなく、力強い自我の感覚と個性、そして実験精神をもってやってのける。彼女にとって、個人であることは重要なのだろうか? 「次のレベルにいくことしか考えていない。そうじゃないと、ずっと変わらないまま、誰かを追いかけるだけになってしまうから。ひとがなんと言おうと気にしない。誰かの真似をしたり、ずっと変わらず挑戦しないのは楽しくないから」と、彼女は笑いながら言う。「つまり、人生の歓び--自分の表現を見出して、生きていることの幸せを見つけるということ。自分の道を切り開いていくのは、その一環なの」

ウィロウと接していて感じるは、彼女が世界に対してなみなみならぬ好奇心を持っているということだ。最近訪れたロンドンについて訊くと、彼女はひとりで歩いてロンドンの街を探索したのだと、こともなげに答えた。「街を歩き回って人を観察してたの。それから公園に行って、木の下に寝転がりながら日が落ちていくのを見てた。ロンドンって素敵ね。ニューヨークに、落ち着きとファッショナブルを足したみたいで」

10代のユースが誰もそうであるように、ウィロウにもまた夢中になっているものがある。自然を愛するウィロウは、キャンプやスイミング、木登りがなによりも好きなのだという。「外にいるのが好きなの。大自然のなかで動物や木々、そこに生きるすべての存在と踊って開放感に身をまかせるのが好き」。アニメも大好きだそうで、いまはとりわけ『NANA』にハマっている。「アジアに暮らすふたりの女の子がいて、ふたりともナナという名前なんだけど、性格は真逆なの。ふたりは一緒に暮らすようになって、周りの友達と一緒に自分たちの世界を築いていくの」。もうひとつ、ウィロウが絶えなき愛を注いでいるのが、ジェームズ・キャメロンの映画『アバター』だ。「『アバター』はわたしの人生そのもの。観るたびに胸を打つわ。前世で、あの世界に生きたんだと思う」とウィロウは言う。「そう確信してる。ひとびとが意識を高め、権力に立ち向かうために、いま世界が何をしなくちゃならないか--あの映画を観ていると、それを強く思い起こさせてくれる。アバターは地球人を屈服させる--ああいう強さこそ、いま私たちが持たなくちゃならない力だと思う。ああいう力を、いま世界は育てていかないといけないの」

Coat Maison Margiela. Top and leggings Wanda Nylon. Sunglasses General Eyewear. Shoes vintage from Carlo Manzi.

以前、グロリア・スタイネムとベル・フックスの講演を聴きに行ったそうですがどのように、そしてなぜ、彼女たちに共鳴するのですか?
彼女たちのような強い女性と同じ場所にいられるだけで光栄だったわ。彼女たちが持つエネルギーや経験、知識をじかに感じることができた。そこにいただけで、開眼していく感じがしたの。わたしが小さかった頃、母がよく女神と宇宙が持つ女性のパワーについて話してくれた。その話を聞くたびに、「でも、神様は男性のはず」って混乱したのを覚えてる。わたし個人は、生きているなかでとても力強い女性的なエネルギーを感じるんだけど、社会は全体としてそれとは逆の感じ方が一般的。そのことにいつも混乱してきたわ。だけど、スタイネムやベル・フックスの講演を聞きにいったり、ほかの若い女性たちと女性のパワーについて語っていたら......。わたしの曲「Female Energy」は、そんな女神の存在に、若い女の子たちが気づくきっかけになってくれる作品だと思う。

あなたもあなたのお母さんも、性奴隷・人身売買を訴えていますね。
それは深刻な問題だと思う。アメリカで人身売買が行なわれているなんて誰も信じないけど、実際にはいたるところで毎日のように行なわれている。だからこそメディアが女性を蔑視しているのをみると、とても悲しくなる。女性はこれまでも十分に抑圧されてきた。今こそ女性が皆で団結しなきゃ。団結しなければならないの。貶め合っている場合じゃない。女性が貶め合うのはとても悲しいこと。

新曲はどんなサウンドに?
わたしの音楽にジャンルはない。自分がいいと思う音を作るだけよ。今回の曲は、まさに「これいい」と感じた音を作った。いま作っている音楽には、古代から伝承されてきた伝統楽器から宇宙的な音のパーカッションまで、さまざまな音が織り込まれている。奇妙なサウンドだけど、それがわたしだと思う。たとえば、中国の古琴にシンセドラムを重ねようなんて思うひとはそう多くないでしょ。

Coat Dries Van Noten. Shirt Céline. Trousers Iceberg.

ドレイクはInstagramであなたを「若きミューズ」と呼び、インターネットでは、あなたとドレイクがロンドンのアビーロード・スタジオで共作に取り掛かっているという情報が話題になりました。一緒に曲作りをしているのですか?
そうだといいわね(笑)。いまのところはそれしか言えない。どうなるかしら。

今後、一緒にものづくりをしたいアーティストは?
ハイエイタス・カイヨーテと音楽をつくりたい。グライムスや、マイリー・サイラスとも一緒にやってみたい。わたしがビートを作って、彼女に歌ってもらう。映画の世界ではウェス・アンダーソンとティム・バートン。テレビの世界からは、『Adventure Time』を作り出したペンドルトン・ワード。あっ、それとLOLAWOLFとも一緒に音楽をつくってみたいな。

新しい音楽とはどうやって出会う?
SouldCloudはよく聴くわ。音楽との出会いは、ほとんどが友達を通して。いつもちょっと変わった音楽を紹介してくれる友達のひとりがアマンドラ・ステンバーグ(映画『ハンガー・ゲーム』でルー役を演じた)。彼女にはいつも、「わたしのツボをホントによくわかってるよね!」って言うの。アマンドラがいなかったら、わたしは素晴らしいアーティストたちの存在を知らないままだった。だから彼女のおかげよ。

Jacket and trousers Gucci. Top House of Liza.

あなたの曲作りで一貫して扱われているテーマは?
「F Q-C #7」では、日常を描きたかった。木登りをしたり、川に飛び込んだりしているときの自分を描きたかった。実際にそういう毎日を送っているの。いつもわたしが音楽で表現しているのは、モノの周波やオーラみたいなもの。それ以外は1曲ごとのテーマであって、一貫しているものとはいえないわ。曲のインスピレーションはどこからくるのかわからないから、うまく説明できない。

あなたの世代についてどう考えていますか?
いまわたしの世代がやるべきことは、みんなの心に突き刺さるアートを作っていくということ。思い切り表現して、人々が「何に幸せを感じるのか」に気づけるようなものを作ってほしい。アーティストが心に刺さる作品を作れば、それが、それだけより多くのひとが物事について考えることにつながると思う。たとえば、「マクドナルドなんかを食べていちゃいけないのかもしれない。どうにも気持ちが晴れないのは、学校の教育のせいかもしれない。理不尽な叱り方で、わたしのほうが間違っていると感じてしまうような学校の先生たちの話に耳を傾けるんじゃなくて、外に出て木に登ったりして、自然のなかに自身を見出すべきなのかもしれない」と感じ取ってくれるひとがいるかもしれない。そういう小さなステップを作っていって、人々の意識を高めていくのが、わたしたち世代の役割だと思う。

ミレニアル世代は物事をすばやく理解するように思いますが。それは理解じゃないの。すべては「気づき」だと思ってる。「これを信じなさい」と教わってきたもの以上のものがこの世界にはあると気づくと、それまでには見えなかった人生のさまざまな次元が見えてくる。創造と笑い、生きるということ--生きることのすべてが、目の前にひらけてくるの。

Body vintage at House of Liza.

どうやってそのような考え方に辿り着いたのでしょうか?
100%、両親のおかげ。両親がいなければわたしもいなかったわけだし。ブレることなく、自分の内なる世界を探求することこそ唯一、生きるうえで大切なことだって真理も両親が教えてくれた。他人を批判することもできる。だけど、その反応はわたしたち自身がそれをどう捉えたかによって決まるわけで、それを判断するベースの部分は、その人の心の状態や育った環境に関係しているはず。だってあらゆることは相対的で、人生のすべての出来事に共通している唯一のものが"自分"なんだから。解決したいと思っている問題の原因が、実は自分にあるのかもしれないと考えられるひとは多くないけどね。

成長する上でもっとも大変なのはどんなところですか?
失敗すること。周りのひとたちは「そんなの失敗のうちに入らない」というけれど、わたしは失敗するの恐くて、すぐクヨクヨ悩んでしまう。しかも、たくさん失敗するから大変。まだ若くて、学びの過程にあるときは特にね。ひとが人生に求めるものはそれぞれ違う--自分の人生は、自分でしか生きられないものだから、自分がどうしていきたいのかを知るには、間違いや失敗は不可避だと思う。

ウィロウ・スミスが描く理想の世界は?
世界がひとつの大きな民族(コミューン)みたいになればいいと思う。そうすれば人々が分裂して対立することもなくなって、争いもずっと少なくなるはず。人類を滅ぼすようなパワーを使う必要もなくなる。みんなが自然からのエネルギーを使い、食べ物は木々から得て、水は自然水を飲む。道に車が溢れることもなく、おむつが川に捨てられて自然環境が破壊されるようなこともない。そうやって、人類は新たな次元に進んでいくの(笑)

Bodysuit Dior. Boots Costume Studio.

Credits


Text Hattie Collins
Photography Tyrone Lebon
Styling Julia Sarr-Jamois

Hair Marcia Hamilton at Fr8me using Mizani
Make-up Steven Aturo at The Only Agency using Laura Mercier
Nail technician Tracy Clemens at Opus Beauty using Jin Soon
Photography assistance William Mathieu, Steven Gabriel
Styling assistance Bojana Kozarevic, Roberta Hollis, Sophia Phonsavahn, Victoria Zengo 
Tailor Brian Frank
Production Rosco Production
Production Holly Gore at Dobedo Productions
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc. 

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