アートディレクターになるには byロッテ・アンデルセン

ファッションの世界に生きたいけれど、どんな道を辿れば良いのかわからない——そんなことを考えて足踏みしている読者も多いはず。i-Dファミリーに、彼らがどのようにしてデザイナーに、スタイリストに、ライターに、ディレクターになったのかを聞くこの「How To」シリーズ。今回は、アートディレクターのロッテ・アンデルセンに聞いた。

by Lotte Andersen
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18 October 2016, 3:43am

Photography Lotte Andersen

幼少の頃より、ロッテ・アンデルセン(Lotte Andersen)は世の中のルールを無視して、自分の人生を切り拓いてきた。60年代、若者文化に激震を起こした伝説のスーツ職人ジョン・ピアース(John Pearse)から指導を受けたロッテ。若い頃からアート、ファッション、音楽、カルチャーに造詣が深く、それらをすべて一体化させたカルト的存在のクラブナイトMaxillaと、その世界観そのままのZINEを作り上げたことで名を馳せた。切り貼りとキュレーションの才に長けたロッテは、その後House of Vansのためにポスター制作のワークショップを開き、タイロン・ルボンと共にMount Kimbieのミュージックビデオのアートディレクションを手がけ、またadidasとのコラボレーションでStella SportのZINEとオフィシャルブログも手がけるなど、活動の領域を広げた。現在はジェシー・ジェンキンスやフィービー・コリングス=ジェームズの作品をフィーチャーした本『Problem Child』の制作にあたっているロッテ。彼女が、これまでにたどってきた道筋を語ってくれた。

Photography Cassie Machado

何をしているか、そしてなぜそれでなければならないのか。
私はアートディレクターである一方で、パーティのオーガナイザーでもある。パーティをするのは、パーティが好きだから。ディレクターやフォトグラファーが求めるイメージや雰囲気、美しさ、感覚を作品に生み出すことを生業としている。まずは彼らが何を求めているかを掘り下げて理解し、そこに言葉とヒントを与えてあげるのが私の仕事。ロケーションからキャスティング、スタイリングまでやった後、編集の作業まで付き合うわよ。アーティストたちが求めるイメージや雰囲気、ルックスを力強くクリアに仕上げるためにね。
自分がやりたいことはずっとわかっていたように思う。でも、実際にそれをやるまでは紆余曲折あった。これこそが本当に自分のやりたいことなのかどうかを、時間をかけて確認したの。スタイリングもキャスティングもセットデザインも試して、アートディレクターとしての視点を確実にしたわけ。ファッションの勉強をしたこともあったけど、結局1年で辞めたわ。友達のタイロンが「辞めたのか。いいね。そしたらアートディレクターのプロジェクトをひとつ任せよう」って仕事をくれたの。それでMount Kimbieの「Carbonated」って曲のビデオを一緒に作ったの。
MAXILLAというパーティをローンチしたのが、先にも後にも私にとって最大の影響になったわ。イベントを立ち上げるっていうのは、アートディレクションをするようなもの。スペース選びはロケハンと同じことだし、人を呼ぶのはキャスティングのようなもの。照明を考えるのはムードやイメージを作品として形にしていくのと同じだし、スペースのデコレーションはセットデザインと同じ。ポスター作りはレイアウトとグラフィック。MAXILLAでやったことはすべて今私がやっていることと繋がるの。私はいつも言うのよ。「イベントもインスタレーションもパーティも、すべてライブ形式のアートディレクション」だって。これまでパーティを作り上げてきた経験が、フォトグラファーやディレクターとのものづくりに生かされているの。

日々の仕事
撮影があるときはほとんど早朝に起きて撮影場所に向かうわね。フォトグラファーやディレクターと詰めの作業をおこなうような日は、ずっと電話でやりとりが続く。彼らの話をよく聴いて、アイデアを把握して、それから質問攻めをして、彼らが作品に作り出そうとしている感覚や感情を理解するの。それが理解できたら、今度はそれを形にしていくためのヒントを探っていく。ロケーションや映画、キャスティング、感覚を、彼らに言葉で投げかけて、彼らの求めているものを探る。イメージを切り貼りするように構築していくの。そうやってアイデアを確かなものにしていく。レイアウトを構築する日には、クライアントが手作り感のあるコラージュ的レイアウトを望んでいるのか、それともデジタル処理でのレイアウトを望んでいるのかを探る。写真は、印刷されてしまうとまったく別の意味をそこに浮き立たせてしまうものだから、これがプロセスの第一段階になる。そこからストーリーを構築していくの。もしもそこに選択肢があるなら、私はデジタルじゃなくて実際にものを動かしたりしながらイメージを作り上げていくのが好きよ。
アートディレクターとしてやることすべてが好き。アートディレクターには多くのスキルが求められるから、飽きることがない。好きなことを仕事にできて、私は本当にラッキーなんだといつも思ってるの。ストーリーを作り上げることが大好き。人の心を動かしたり、捕らえて離さなかったりするものが好きで、そこにある情熱にとても魅かれる。ディテールが好きで、ファッションのルックが好き。私がたずさわるからには、可能なかぎり良いルックにしたいと常に思ってるわ。人の心を動かすようなルックを作り上げたいの。私にぴったりのプロジェクトに巡り会えたとき、私は全身全霊でそれに取り組んでしまう。この仕事をしていて良かったと思えるのは、見る者が私の思い描いたとおりの感情を抱いてくれたときね。

Photography Jesse Jenkins

大学には行くべきか、行かざるべきか
どうかしら。私はイギリスのアートスクールのシステムに賛成できない。ロンドンのアートスクールは、富裕層の最終義務教育みたいになっているでしょう?学びのプロセスというものは大切だと思うし、アートスクールで良い先生に出会えればそれが学べるんだとは思うけれどね。
私はファッションの勉強をしたんだけれど、その前にAlexander McQueenでインターンをしたの。マックイーンが最後に手掛けたコレクションの制作に携わったわ。SHOWstudioの歴史を変えた、あのコレクションよ。それと、Tom Dixonのスタジオでは溶接を、Bill Ambergではバッグのデザインを(LotteBagは私がデザインしたもの)、Georgina Goodmanではシューズのデザインを、ニューヨークのRoss Menuezではテキスタイルプリントを学んだわ。すべてインターンシップでね。経験的に言って、自分が尊敬する人のもとで働くことが何よりも大切。大学では自分がダメ人間みたいに思えて、大嫌いだった。友達もいなかったのよ。学生のバーなんか大嫌いだったわ。図書館は好きだったけどね。大学で「コミュニケーションにおけるトレンド予想のプロジェクト」みたいなことをやらされたとき、もう耐えられなくなって先生や他の生徒にこう言ったの。「ネットに情報が見られる状態にあるのに、どうしてみんなお互い知らないフリなんかできるの?」って。そして学校を辞めて、あるテーラーのもとで働き始めたの。そこで、クライアントが求めているものを把握する方法を学んだわ。「クライアントが求めているスーツを理解するために、思いつくイメージを言葉にしていく」という手法を学んだの。

「あの時これを知っていたら」と今思うこと
学校でも社会でも、これまでに私が得た最大の教訓は「クライアントが求めるイメージのヒントは思いもよらないところにある」ということ。思いついたらすぐにリサーチをするのよ。いまやインターネットで誰でもイメージを探すことができるんだから。好きなものはどんどん調べるの。これまで私が得たなかでベストのアドバイスは「ただ、やるんだ。頼まれてから調べるんじゃ遅い。自分のアイデアに自信を持て。ノーということを恐れるな」ってこと。

Photography Lotte Andersen

明日が楽しみ。なぜなら……
去年から『Problem Child』っていう本を制作しているんだけれど、これが私にとって大きなターニングポイントになっているの。adidasとのプロジェクトの後、私は自分のなかに何か大きな変化を感じたの。「problem child(問題児)」という言葉の意味を紐解いてみたい——ちょっと社会から外れていたり、どうにも順応できないあの心地悪い感じを探ってみたくなったの。本には、ジェシー・ジェンキンスやタイロン・ルボン、ジェネヴィーヴ・ガーナー(Genevieve Garner)、フィービー・コリングス=ジェームズらの写真作品が収められているのよ。今はその本の制作と出版のための資金集めをしている段階。ストーリーを世界に伝えるべく、その制作にすべてを捧げているの。MAXILLAが終わってしまった今は、ナオミ・シマダ(Naomi Shimada)とリネット・ナイランダー(Lynette Nylander)とともにMISSWORLDという新しいパーティを企画しているところ。パーティの企画はこれからもずっと続けていくわ。私のスタジオには、パーティ用のアイデアが書き殴られたスケッチブックがたくさんある。アーティストやコラボレーターたちと実現していける素晴らしいパーティのアイデアが、まだまだたくさんあるの。アイデアをどんどん良いものにしていくこと、限界を押し広げること、そして尊敬する人たちと仕事をすることにもっとも幸せを感じるわね。

maxilla.space

Credits


Text Lotte Andersen
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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