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「サム・フリークス vol.1」特集上映

あの自主上映イベントが帰ってきた! 今回のテーマは「はみ出し者」。ジュディ・ホリデイの代表作『純金のキャデラック』と、ジャパン・プレミアとなる『イントゥ・ザ・ホワイト』の二本立て。9月30日(日)は渋谷ユーロライブへ。

by Takuya Tsunekawa
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27 September 2018, 1:28pm

昨年から計3回に渡って開催してきた特集上映企画「真摯な痛み」シリーズが、はみ出し者映画を特集する「サム・フリークス」と名を新たにして、9/30(日)に渋谷のユーロライブで催される。

第一弾となる「サム・フリークス Vol.1」では、1950年代のハリウッドを代表する早逝した名コメディエンヌであるジュディ・ホリデイの代表作『純金のキャデラック』(日本では未DVD化)と、『ハリー・ポッター』シリーズのロン役でおなじみのルパート・グリント出演の日本未公開のノルウェー映画『イントゥ・ザ・ホワイト』が上映される。

『純金のキャデラック』は、製作された1956年当時よりもむしろ、自分を中心に世界が回っていると勘違いしているナルシシスティックで無知で不誠実な人でなしが蔓延る現在の方がより大きな重要性を持っているとさえ思えるロマンティック・コメディの古典である。

ここでジュディ・ホリデイは愚鈍で生意気なブロンドを体現しているが、そのなかに多くの無垢さと素直さを滲ませることで、抑圧的な世界をかきまぜている。隠蔽や捏造を図る縁故主義的で狡猾な大企業の重役である男性たちに対して、小株主である彼女は率直に素朴な疑問を表明するのだ。ホリデイは底抜けの明るさと誇り高さを維持したまま、縛り付けようとする古い性差別主義の伝統に頑固に逆らい続ける。これは『キューティ・ブロンド』におけるリース・ウィザースプーンのキャラクターの先祖だと言えよう。当時のハリウッドの大物ダリル・F・ザナックらからのセクシャル・ハラスメントに徹底的に抵抗した逸話も持つジュディ・ホリデイならではの魅力が詰まった作品であり、いま一度再評価されるにふさわしいだろう。

ジャパン・プレミアとなる『イントゥ・ザ・ホワイト』は、1940年4月、第二次世界大戦中にノルウェーの雪山の狩猟用小屋で共同でサバイバル生活を送ることになったドイツ軍とイギリス軍の史実を基にしている。鉄鉱石など地下資源を求めて独英は空中戦を展開していた結果、両軍はノルウェーの雪山に不時着。独軍は孤立した小屋に辿り着くが、極寒で外にも出れないなか、しばらくすると彼らから撃ち落とされた英軍も訪れてきたことで、対立する両軍は食糧と生存のために平和的に共存しようとするほかない状況が生まれるのだ。

印象的なのは、独軍兵士が英軍兵士を捕虜とし、両軍間で緊張関係が生まれるなか、独軍が恣意的に陣地を区切った小屋内の見えない「国境」が、共同作業のために融解し始める場面だ(独軍は英軍に皿洗いをさせようとするも、キッチンは独領であるためにできないと断られてしまう)。あるいは、落ちそうになった天井を両軍の将官が支え合う場面では互いを理解していく心境の変化が見られるだろう。限られた空間で展開されるため、わずかな武器の所持によって主導権が左右するわけだが、ノルウェー出身の監督ペッター・ネスは世界が分断されたミニマルな状況を作り出すと同時に、対話や協力を通して、憎悪や不信が尊敬や友情につながる様を丁寧に描き出している(『大いなる幻影』を想起させつつもそれとはまた異なる結末も興味深い)。

ペッター・ネスのハリウッド進出作『モーツァルトとクジラ』では、アスペルガー症候群の女性が「自閉症の私たちはいつも置き去り」と発言する。ならば、『純金のキャデラック』は権威主義社会のなかで置き去りにされた女性、『イントゥ・ザ・ホワイト』は封建的な国家に置き去りにされた男性を描いているのだ。

今後、同会場にて10/20(土)に第二弾、1/20(日)に第三弾が開催される予定であり、続けて観ていくことによって個々の主題や細部がつながりを持ち、面白みがが倍増していくような作品選定がなされているので、第一弾から注目してぜひ駆けつけてほしい。

なお、本イベントはすべての子どもたちが社会から孤立することなく暮らしていけるようになることを目的とした学習支援や自立支援のために、有料入場者1名につき250円が認定NPO法人「3keys」へ寄付される。

サム・フリークス Vol.1
日時:2018年9月30日(日) 会場:ユーロライブ(渋谷) 料金:2本立て1500円(入れ替えなし・整理番号制)
12:50~ 当日券販売開始
13:15~ 開場
13:30~『純金のキャデラック』上映
15:25~『イントゥ・ザ・ホワイト』上映

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