Images courtesy of Gagosian 

「過去はどうでもいい」:ハーモニー・コリンが語る、絵画、タコベル、時間論

ハーモニー・コリンの絵画展「BLOCKBUSTER」のインスピレーション源となったのは、毎日通うタコベルの隣にある、うす汚ないレンタルビデオ屋だ。コリンはこう願う──観た人にとにかく良い気分になってもらいたい、と。

by Arnolt Smead; translated by Ai Nakayama
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nov 22 2018, 8:48am

Images courtesy of Gagosian 

薄暗い9月の夜のニューヨーク。アッパーイーストサイドにある〈ガゴシアン・ギャラリー〉の前に、人びとが列を成していた。カクテルドレス姿の社交界の婦人方、そして映画を学ぶ学生たちのお目当ては、「ブロックバスター」展のオープニングに登場するハーモニー・コリン。みんな彼の姿をひと目見ようと、そしてあわよくば写真やサインをもらおうと待ち構えていた(コリンは案の定、登場予定時間に遅れてきた)。『ガンモ』(97)や『Trash Humpers』(09)などのカルト的アート映画を世に放ってきた彼は、今や〈カルト的〉という枠にとらわれないほどの人気を誇っている。そのきっかけは乱痴気騒ぎをポップに切り取った『スプリング・ブレイカーズ』(12)だろう。そしてそれ以来となるコリンの作品は、マシュー・マコノヒーがフロリダでマリファナパーティに耽溺する、壊滅的に服のセンスがない詩人〈ムーンドッグ〉を演じるコメディ映画『The Beach Bum』。ナッシュビルで家族と過ごしながら、マイアミではヘミングウェイさながらの豪奢な生活を送っているコリンの日記からそのまま引っ張ってきたような脚本だ。

ラリー・クラーク監督の『KIDS/キッズ』(95)の脚本で一躍名を上げて以来、コリンは彼独特の世界と美学を構築するストーリーテラーとして技術を磨いてきた。彼の映画は、アメリカの暗部へと観る者を誘う現実離れした旅だ。彼が生み出す、印象深く、なぜか抗えない魅力をもった登場人物は皆、運命や選択の誤りという重荷を背負いながらも前に進む。コリンが描く不快極まりないユースカルチャーは、彼自身が体験した鬱やドラッグ依存との闘いを反映していた。米映画界きっての悪ガキは大人になった(少なくとも心機一転した)が、それでもなお彼の映画、絵画、生活はすべてつながっている。すべては同じひとつのイカれた頭脳から生まれている。だがその頭脳が今じっくりと浸かっているのは、人間の暗部ではなく、「明るいほう」のようだ。

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「ブロックバスター」展もまた然り。これは廃棄されたVHSテープに描いたカラフルな絵画群で、コリンのこれまでの作品のような、抽象的なサウンドや幻覚のようなヴィジュアルとははっきりと違う。過去の幻影はもちろん消えてはいないが、しかるべき場所に収められているイメージだ。コリンはザラザラした想いや寂しい気持ちを、意味のあるものへ転化させた。その裏にある意図はこれまでとすこしも変わらない。つまり、現実がどれほど残忍で容赦なくてもそのなかに美しさを探すこと、だ。

人生の似姿としてのアート、涅槃への接近、果てなきタコベル愛をハーモニー・コリンが語る。

──ここ数年、アーティストとして作品の発表が続いています。なぜ映画ではなくアートに注力しているのでしょうか?

最近はアート制作のほうが楽しいんだ。釣りにもよく行ってる。フロリダ州のキー・ラーゴでボートを1台と、そこ用に電動ポーカーマシンを買ったんだ。マシンの横にイーゼルを置いて、1日中マシンとイーゼルを行き来してる。マウンテンデュー1ケースも用意して、ボートで島をぐるっと周って。最高のルーティンだよ。

──「ブロックバスター」シリーズはこれまでの作品に比べてわかりやすいように思いました。意識的な選択だったのでしょうか。

いや違う。僕は基本的に朝も昼もタコベルしか食べない。行きつけのタコベルの横にレンタルビデオ屋があって、そこのショーウィンドウを毎日眺めてたんだけど、置いてあるVHSのジャケットの雰囲気が良いなと思ったんだ。ひとつの大きなインスタレーションみたいで。客がいるのは見たことがないし、ジャケットにもホコリが積もってたんだけど、それが逆に、白くかすんだような美しさを与えていた。そこでVHSのジャケットに絵を描いてみようと思いついた。もちろんVHSのなかにはストーリーが収められているんだけど、それを変えて絵画で表現できるのは楽しかった。

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──それって映画監督としてのあなたの仕事のやりかたにもつながってませんか? ヴィジュアルにストーリーを語らせる、脚本もどんどん変えてく、俳優に即興芝居を求める。

そうだね。あとカクテルのメキシカンウォーターも飲んでる。

──酔っぱらいそうですね…。ところで映画の話ですが、前作からかなりあいだが空いているのはどうしてですか?

もともと仕事が遅いんだ。人生を楽しんでるしね。映画づくりはかなりしんどい。今フロリダに住んでて、毎日新しいモノをつくろうとしてるけど、野心が欠けてるひともあこがれる。野心が欠けるってかなり反抗的な行動だから。ひとつの立派な人生のスタイルだ。知人に毎日ビール飲んでボート漕いでるだけの男がいてさ。よく気を失ってるけど、目が覚めてもハイ、みたいな。

──その男性がムーンドッグのモデルなのでしょうか? 『The Beach Bum』の着想はどのように得たのでしょう?

キーウェストをぶらぶらして、常に酔っぱらってる人たちを見てたかな。

──あなたの映画作品は観客を不安にさせます。次作も同じですか?

いや、今回は観終わったあと、みんなに気分良くなってほしいと願ってる。

──あなたは時代精神をつかむことに長けています。どうやって現在起きていることに常についていってるんですか?

キッズたちの活動にワクワクしてるだけ。常に注目してる。

──現在取り組んでいる活動について教えてください。

今は主に絵画だね。あとフルーティー・ペブルス(※めちゃくちゃカラフルなシリアル)を食べてる。食べると元気が出るんだ。それから毎日タコベルに行ってチージー・ゴルディータ・クランチを注文してる。週末は趣向を変えてトリプル・ダブル・クランチラップ。食べてるあいだのBGMはCITY MORGUEとヴァイブス・カーテル。食べ終わったら詩を書いて、ぼーっとして。これこそが未来だ。

──多彩な才能を誇るアーティストとして、何かやってみたいことってありますか?

これまでいろいろやってきたからな。オペラとか? でもオペラ嫌いだからな。

──過去を懐かしんだりはしますか?

しない。過去はどうでもいい。僕は未来が好きなんだ。未来では一日中ココア・パフ(※チョコ味のシリアル)を食べられるし、シガーも吸いまくり。ダイヤモンド泥棒といっしょにジェットスキーだってできる。いまや時間は任意なものになってる。インターネットが時間を破壊したんだ。だから僕は明るいほうに歩いていってる。

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This article originally appeared on i-D US.