2016年、注目すべき若手アーティスト16人

i-Dが「大きなことをやらかしてくれそう」と期待を寄せている16人の若き芸術家たちをここに一挙紹介!

by Felix Petty
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17 April 2016, 7:10am

アマリア・ウルマン(Amelia Ulman)

新世代アーティストのなかでも知る人ぞ知る才能、アマリア・ウルマン。彼女を一躍有名にした作品『Excellences and Perfections』は、発表当初、ほとんどメディアにとりあげられることがなかった。それもそのはず、5ヶ月におよぶパフォーマンス・アート作品制作を彼女はインスタグラム上で行っていたのだ。ディストピア的でおとぎ話のようである『Excellences and Perfections』の一部は、今春、テート・モダン美術館とホワイトチャペル・ギャラリーで展示される。ペトラ・コートライト(Petra Cortright)やアシィーナ・パパドプロス(Athena Papadopoulos)らと並び、アマリアは『Forbes』誌の「30歳以下の若き才能30人」のひとりにも選ばれ、またロンドンで開催されるフリーズ・アートフェアでも最新映像作品を発表するなど活躍の場を広げている。

ジャン・ディン(Zhang Ding)

中国人アーティスト、ジャン・ディンによる『Enter the Dragon(燃えよドラゴン)』は、昨年発表された数々のエキシビションのなかでも群を抜いて素晴らしいものだった。このエキシビションでジャンが参照したのが、ブルース・リーの映画『燃えよドラゴン』の最後で繰り広げられる有名な闘いのシーン。会場となった現代美術館(ICA: Institute of Contemporary Arts)内のホールでは、ロンドン屈指のミュージシャンたちが、映画のラストシーンを彷彿とされるような、大小様々な鏡で囲まれたステージでノイズ音楽を演奏した。中国のアートシーン、異国情緒、そして"他者"をテーマにした着想とノイズの波が観るものをとらえて離さない。この若き中国人アーティストがこれからどんな作品を見せてくれるのか、楽しみでならない。

ハンナ・ペリー(Hannah Perry)

ハンナ・ペリーの『水星の逆行(Mercury Retrograde)』は、昨年開催されたエキシビションの中でも五指に入る出来栄えだった。ロンドンのセブンティーン・ギャラリーで開かれたこのエキシビションは、イギリス90年代のユースカルチャーの映像と音響を駆使して編み上げた、五感で味わう体験型トリップだ。ノスタルジアではない哀しみ、繊細さ、そして愛と哀しみが同じだけ入り混じった世界観がそこにあった。ハンナは間違いなく現在のイギリスにおいて並外れた才能に溢れる、挑発的な若手アーティストだろう。

サマラ・スコット(Samara Scott)

昨年のフリーズ・アートフェアでもっとも才能が際立っていたのは、ロンドンを拠点に活動をするアーティスト、サマラ・スコットだろう。彼女の作品を見たひとは、ほぼ例外なく彼女を賞賛する。会場の一角に"四角い堀"を作り、そこに水を張り、様々な色や形の屑でいっぱいにする。フラットで不安定に浮かぶ浮遊物は、見ているうちに観客を引き込み、作品に対して語る言葉を失わせるだろう。日常生活に介入してくるだまし絵のような作品で、とにかく見事であった。

プレム・サヒブ(Prem Sahib)

今後の活躍が大きく期待されているロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ卒業生、プレム・サヒブは、自身初の個展『Side On』を現代美術館で開催した。タイルを敷き詰めたのみの平面、真空に押したパファージャケット、ベビーパウダーを撒いたダンスフロアなど、ミニマリスティックなインスタレーションで、アンダーグラウンドシーンをメインストリームにまで押し上げた。若くしてキャリアの成功をおさめた後のアーティストがそこから次のステージへと移行していくのを見るのは、常に嬉しくワクワクするものだ。サヒブの今後に大きく期待したい。

ジャネット・ヘイズ(Jeanette Hayes)

ジャネット・ヘイズは、「今」を象徴するモチーフとソーシャルメディア空間に蔓延する不安をルネッサンスの絵画にぶつける、ユニークなニューヨーク在住アーティストだ。油絵をスクリーンセーバーにしたiPhoneのロック画面、自撮り画像に過剰なまでのスタンプを配したような作品、モダニズム絵画にアニメキャラクターをはめこんだ作品、古典美術作品の被写体がコンピュータ画面から抜け出そうとしている場面を捉えた作品など、インターネット文化を取り入れた作品を作っている。ジャネットはまたProenza SchoulerやOPENING CEREMONY等とコラボレーションをしたことで、いまやファッション界のアイコンともなっている。

アシィーナ・パパダプラス(Athena Papadopoulos)

ゴールドスミス卒業生のアシィーナ・パパダプラスが昨年ザブラドウィッチ・コレクションでの個展でみせたのは、トーテムポールのような人間型枕の彫刻。作品制作には、ビタミン剤やワインなど、一風変わった染料が用いられたという。アブジェクトアートと抽象主義、フェミニズム、密室的空間における問題を扱ったアシィーナの作品はどれも静かに瞑想的で、粗野な中に美しさがあった。

ユリ・パティソン(Yuri Pattison)

かつてはインターネット・アート集団「Lucky PDF」のメンバーだったアイルランド出身アーティスト、ユリ・パティソンは、2014年よりロンドンのチゼンヘールギャラリーのオフサイト・クリエイト・レジデンシーで契約アーティストとなった。この期間で制作された作品は、同ギャラリーで今年7月から公開される予定だ。「デジタルと現実の不確かな境界線」への関心はまだまだ続くようで、ユリは今年7月のエキシビション開催までの間、展示作品の一部として、彼が行なうリサーチの結果をすべてenquire.workにて順次一般公開していくという。

ハリー・サンダーソン(Harry Sanderson)

テクノロジーの探求に情熱を注ぐもうひとりのアーティスト、ハリー・サンダーソン。光を使った彼の作品が、今月ブリュッセルのLevy Delval Galleryにて展示される。光を用いたこの作品は、2014年当初に彼がノッティンガムでレジデンシーを行っていた際にできあがったもので、2015年にはクリスティーズやトリノのアルティッシマ(Artissima)にて展示された。彼が作るのは、プラスチック板を通した光が壁に絵を浮かび上がらせる彫刻だ。そのものが技術を駆使してつくられた美しい作品だが、そこには私たちが使うテクノロジーの裏にある、デジタル技術に対する問いかけもこめられている。

ÅYR

建築/アート集団ÅYRにとって、2015年は素晴らしい一年だったに違いない。ハンナ・バリーギャラリーでの『Bold Tendencies』や、ロンドンのギャラリー、プロジェクト・ネイティブ・インフォーマント、フリーズ・プロジェクトなどで作品を発表し、いずれも広く評価されたからだ。彼らは、インスタレーションや建築モデル、3Dレンダリングの作品を通して、共有経済への風刺、世間の理想的住空間への熱狂に対する警鐘、ホームライフの象徴などを問いかけている。

アセンブル(Assemble)

昨年のターナー賞を受賞して世界を驚かせたのがアセンブルだ。彼らの作品は、批評家たちを憤慨させることを目的としたような作風の"アーティスト"たちさえをも「これはアートなのか?」と考え込ませたこともあり、彼らが次に何を世に送り出してくるのか楽しみでならない。

ハンナ・クインランとロージー・ヘイスティングス(Hannah Quinlan and Rosie Hastings)

ハンナとロージーは現在に至るまで@gaybarという名のプロジェクトのもとでイベントや作品制作を続けており、最近ではロンドンのPenarth Centreで大晦日のパーティを開催するなど、アート作品の共同制作を行っている。彼女たちは"ゲイバー"をセクシャル・マイノリティの問題提議の場のシンボルとして捉え、性的少数者たちの世界の終末的風景を描いた作品や、レインボーフラッグを再解釈するプロジェクト作品などを発表・発信している。

スチュアート・ウー(Stewart Uoo)

ウー・ツァン(Wu Tsang)の『A Day in the Life of Bliss』と並び、スチュアート・ウーの作品は、昨年現代美術館ICAで開催されたエキシビション『Look』で特に際立っていた。ニューヨークのナイトシーンでスター的存在のエスコバルをモデルに退廃的なSF世界を描くなど、彼は自身のフォトグラフィー作品でソーシャルメディア、ファッション業界、そして社会における性認識問題などを扱っている。彼の最新作には、ボロボロにしたHolisterやJuicy Coutureのショッピングバッグをハトの羽やゴキブリとともに額におさめたものなどがある。社会における美と贅の概念を解体して見せつけてくれる彼の作品はスリリングだ。

エロイス・ホーザー(Eloise Hawser)

ロンドンを拠点として活動する若手アーティストのエロイスは、昨年夏、現代美術館ICAで自身初となる個展『Lives On Wire』を発表した。この展示では、古いシアターオルガンが置かれた空間で、もうひとつの古いシアターオルガンにまつわる映像が流された。古いものと新しいものがスリリングにぶつかり合う展示だ。エロイスは最近、ラスベガスでデイビッド・レイモンド・コンロイ(David Raymond Conroy)とともに、ザブラドウィッチ・コレクションで三月に開かれる予定のエキシビションに向けた制作に励んでいるという。このエキシビションには、i-Dでもたびたび取り上げているコラクリット・アルナノンチャイ(Korakrit Arunanondchai)、デービッド・ブランディ(David Blandy)、アンドレア・クレスポ(Andrea Crespo)、サイモン・デニー(Simon Denny)、そしてエド・フォーニールズ(Ed Fornieles)らも参加する予定。

ロバート・ジャオ・レンフゥイ(Robert Zhao Renhui)

ロバート・ジャオ・レンフゥイは最近、バニヤンの木まるごと一本をヤスリがけでしておがくずにするために、9ヶ月もの時間を費やしたという。シンガポール政府は、この木が立っていた場所に大学を建設する予定で、この木の撤去を求めていた。破壊することと変容していくことの葛藤こそが、ロバートの関心ごとだ。彼は自身の架空の団体Institute of Critical Zoologistsの一員という設定のもと、写真を撮り、生態系と環境の複雑な関係を、写真を通して私たちに語りかけてくる。

シュモン・アーメド(Shumon Ahmed)

シュモン・アーメドは主に写真作品を創作するバングラデシュ出身のアーティストだ。ムンバイの画廊・プロジェクト88にて公開された最新エキシビション『When Dead Ships Travel』で、彼は「"船の墓場"と呼ばれ船舶解体が行なわれる現場の存在がどのような環境的、社会的ダメージを引き起こすか」をテーマに、2つのシリーズ作品を制作・発表した。シュモンが施した加工により、彼の写真からはドキュメンタリー的真実は影を潜め、哀愁を帯びた風景とフォルムの美しい抽象性という"シュモンが体験した感覚"が浮き彫りとなっている。

ロバート・ジャオ・レンフゥイとならび、シュモンは今年のプルデンシャル・アイ・アワード候補に上がっている。受賞者はロンドンの現代美術館サーチ・ギャラリーで今年中に個展を開くことができる。誰がその権利を手にするか、楽しみに待つとしよう。

Credits


Text Felix Petty
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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