キム・ジョーンズと時空の旅

Louis Vuittonのメンズ・コレクション アーティスティック・ディレクターを務めるキム・ジョーンズに、パリと東京での展示会や日本の魅力について聞いた。

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nov 16 2016, 6:00am

キム・ジョーンズがLouis Vuittonのメンズ・コレクション アーティスティック・ディレクターに就任してから5年が経った。ブランドの起源ともいえる永遠のテーマ「旅」。2011年のデビューからインスピレーションを求めて、世界を回り続けた彼が今回赴いたのは、時空の旅だった。ブランドの本拠地であるパリから"Future Heritage"をテーマに、老舗ブランドの新しい時代に常にチャレンジし続けるキム。彼のお気に入りの街である東京にて、彼のインスピレーションの源を探ってみた。

今回のテーマについてお伺いできますか?
パリで行われていた『Volez, Voguez, Voyagez Louis Vuitton』展を見ていて、100年後にこうして展示されるものを考えてみたんだ。いま僕たちが過去の作品を見るようにね。未来に進むためにも一度Louis Vuittonやパリの歴史、伝統を振り返ることが大切だと思った。 今日のパリではVetementsをはじめ、若くてエキサイティングなデザイナーやスタイリストがたくさん出てきていて、街全体にユースのエネルギーがみなぎっている。それにも惹かれて、古き良き伝統と新しいエネルギーを混ぜてみたかったんだ。20世紀のパリ社交界を代表する男爵であるアレクシス・フォン・ローゼンバーグからインスピレーションを得ていますね。彼はオーストリア人で、もともとニューヨークに住んでいたから、パリでは異邦人だったんだ。僕は出身こそ違うけれど、"パリの人たち"に惹かれてインスピレーションを得ている。彼らはパリのことをよくわかっているけど、あくまで客観的な立場をとっているからね。僕も同じような立場だから共感できるものもあるし。

ローゼンバーグが生きた時代にあった社交界が現代にあるとしたら、それはどこでしょう?
ジェットセッターだと思う。彼らはいたるところに行くし、いたるところに住んでいる。みんな成功していて、グラマラスなライフスタイルを持ちながらラグジュアリーに浸って生きているんだ。

今回は時代を超えて、"モノグラム・キャンバス"に新しい息吹を吹き込みました。その誕生までの経緯を教えてください。
"モノグラム・エクリプス"は、古いトランクから着想を得ました。古くなったトランクは表面が黒く艶っぽくなっていて、それをリクリエイトしようと思ったんだ。最初はガンメタルにしたくて、40種類くらい生地を試した。だけど、どれもうまくいかなくて、"ダミエ"の技法を"モノグラム"に落としこんでみたらうまくいったんだよ。定番の"モノグラム・キャンバス"よりも男性的で、シックで、カジュアルにもビジネスシーンにも使える。

臈纈(ろうけつ)染めを施したデニムやレザーが今回のコレクションに登場しました。伝統的な技法がコンテンポラリーに使用されていますが、その経緯を教えてください。
まず、ヴィンテージのデニムをとにかくたくさん集めたんだ。昔のデニムは、いまでは使われていない素晴らしい技術で作られているからね。1950年代にデニムが持ち込まれてから、日本では独自の手法がデニムに用いられ始めたんだ。日本人は何もかも極める性質があるし、他の人が発明したものをより高度なレベルに持っていくよね。だから、僕にとっては日本人が作るデニムが一番素晴らしいと思うし、だからこそ日本の伝統的な手法で今回のデニムを作りたかったんだ。

日本のどんなところが好きですか?
日本の生地が大好き。職人らしいプライドと質がにじみ出ているからね。製造過程がとても細かくて、技術性が高く、すごく惹かれるんだ。大学時代にGIMME5 っていう会社で働いていて、そのときに高橋盾や藤原ヒロシ、NIGO®たちに出会ったんだ。1999年くらいだったかな。もちろんCOMME des GARÇONSやYohji Yamamotoといった日本のブランドは知っていたし、好きだった。すごく自由で、枠に囚われることなく革新的だと思っていたし、その頃からリスペクトしていたよ。

コレクションを製作する際に最も重要視する点を教えてください。
僕はLouis Vuittonのメンズ・コレクション アーティスティック・ディレクターとして世界中を旅しながら、その年のシーズンテーマを決めるんだ。同時にリアル・クローズとして日常で楽しめるスタイルを提案しながら機能性も重要視している。何よりも一番伝えたいメッセージを毎シーズンはっきりと明確に表現することを最も大切にしているんだ。

Credits


Text Kazumi Asamura Hayashi
Photography Keiichi Nitta