音楽界やファッション界が注目するアーティスト、ジャン・アンドレ。

パリをベースに活躍する気鋭のグラフィック・アーティスト、ジャン・アンドレ。女性やエロスについて独創的な視点で描く彼が語る、愛の国フランスの「アムール」とは?

by Tomomi Hata
|
04 May 2016, 8:25pm

グラフィック・アーティスト、ジャン・アンドレ。フランスのエレクトロシーンを牽引するレコードレーベル、エド・バンガーのアート・ディレクターを務めるほかパリ9区のホテル、Le Pigalleのアートワークを手がけ、さらにコレットやファッションブランドからのオファーも絶えない若干30歳のグラフィック・アーティストだ。「JEAN ANDRÉ loves bonjour records」の発売を記念して来日した彼にインタビュー。女性やエロスをテーマにした作品を手がけるアンドレが考える、「愛」とは?

まず、今回のコラボコレクションのテーマを教えてください。
テーマを決めて制作をスタートするというより、ボンジュール レコードと一緒に何かを作りたかったんだ。彼らは僕のやりたいことに対してオープンでいてくれたよ。ハートの中にボンジュールって書いてあるイラストは、僕のタトゥーが元になっているんだ。僕のはmamanって彫ってある。これを見た人から、ハートの中に好きな女性の名前を入れて、って頼まれることもあるよ。だからこれが出来たのはごく自然な流れ。男女がキスしてるのはよりグラフィックなデザインを意識したもの。僕のインスピレーション源?おじいちゃんから譲り受けたフランスの古いポルノ雑誌やタトゥーのデザインからだよ。

男女のキスやハートのイラストをモチーフにしてらっしゃいますね。やはりフランスはアムールの国なんですか?
もちろん!街自体も美しく人々が心地よいと思えるようにデザインされているし、気持ちを表現するための素敵な言葉がフランス語にはたくさんあるしね。アムールをうたう詩人だって何百年も前からいた。フランスはいつの時代もアムールの国だったんだ。学校で習う読み書きだって、ベースにはアムールがある。だからフランス人にとってアムールはすべて。フランス人の血にはアムールが流れてると思う。日本人は愛を表現するのがもっとお上品な気がする。僕らはもっと感情的かな。いい意味でも悪い意味でも。フランス人はいつもアムールについて語り合っていて、時にはどなり合うこともある。僕の作品のテーマがアムールなのは、アートワークだけじゃなく僕自身のことも好きになってもらいたいからね。僕はロマンティックなんだ。

フランス人にとって、またあなたにとって、キス、そして愛とは何を意味するのでしょうか?
フランス人にとって、アムールとは、ちょっとセクシュアルなイメージかな?口説くのが好きだし。誘うときにもきれいな言葉で誘う。僕にとってのアムールはもちろんほかのフランス人と一緒だけど、同時に仕事でもある。でも2つをミックスすることはない。仕事として女性をテーマにイラストを描いているから、いっつも女の子を取っ替え引っ替えしていちゃついてるプレイボーイみたいに思われることもあるんだけど、プライベートの僕はガールフレンドと一緒に穏やかに安定した生活を送ってるよ。キスは、フランス人にとってはカジュアルなものかな。もちろん本気だけどね。

このコレクションでの一番のお気に入りの作品とその理由を教えてください。
『TRÉSOR』。僕にとって5冊目のアートブックだ。単なるイラストブックじゃなくて、僕のこれまでのすべて、僕の人間性だったり本質が詰まっているからね。

ボンジュールレコードでオススメのレコードはありますか?
Moodoïd『Le Monde Möö』この曲を聴くと気分がとてもリフレッシュするんだ。まるで脳内トラベルをしたみたいみたいな気分になる。

最近注目している若手アーティストはいますか?
Inès Longevialって知ってる?彼女は僕と同じ南フランスの出身のオイルペイントで、今一緒に個展をしてるんだ。彼女の絵も僕と同じように女性をテーマにしていて、それを抽象化した絵を描くよ。ピカソみたいに。本当にきれいに色を使うんだ。

あなたが青春時代によくリピートしていた曲を教えてください。
Serge Gaiansbourg『la Javanaise』男の子が女の子に作ったダンスについて歌った曲。美しい曲だから聴いてみて。Drake『Hotline Bling』ドレイクはほかのラッパーと違ってソフトだし、感情表現が見事だよね。

あなたにとって青春とは?
自由。税金も家賃も払わなくていいし、仕事だってしなくていいでしょ。だってほら、両親が面倒見てくれるから(笑)。何の心配もせずスーパー自由で気ままなことかな。先週30歳になったことだし、お母さんへのこれまでの感謝の意味も込めて今回一緒に来日したよ。

最近のテロにより、アートの領域に影響はありましたか?
あった。フランスは人権が尊重された自由の国で、やりたいことを制限されることもなかった。でもそれは昔からそうだったわけじゃない。何百年も前に僕らの先祖が大変な思いをして勝ち取ったものだということをすっかり忘れて、自由があるのを当たり前のことと思っていたんだ。テロリストの攻撃を受けたとき、僕らは自由が奪われた気がして、深く傷ついた。でも怖いからって家に閉じこもってばかりはいられない。街に出て、地下鉄も乗るし、コンサート会場にも気を奮い立たせてでも行かないと。僕らは自由なんだから、それをし続けないといけないんだ。アートも、うん、結果として今までよりもっとパワフルになった。力を合わせていかないといけないという気持ちが人々の結びつきを強くしたんだ。

Credits


Text Tomomi Hata
Photography Shoot Kumasaki

Tagged:
Culture
Paris
Music
fashion interviews
bonjour records
jean andre