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超WAVYでごめんね:JP THE WAVY インタビュー

平成生まれの踊れるラッパーJP THE WAVY。中毒的なトラックとダンスを織り交ぜたバイラル・ヒットしているMV「超WAVYでごめんね」はいかにして生まれたのか?

Ryo Isobe

「超WAVYでごめんね」のミュージック・ビデオは、2017年上半期の日本のラップ・ミュージックを代表するバイラル・ヒットであり、まるでプティ・ジャンルのように美しい。そこでは、Migos「Bad and Boujee」やXXXTENTACION「Look At Me」が引用され、乃木坂46やホームレスがカメラに写り込む。そして、若者たちは夜の渋谷の路上で飛び回り、活き活きとラップをし、踊るように握手を交わして去っていく。果たして、後年、我々はその映像を観たときにある時代が切り取られていると感じるのだろうか、それともここから新しい時代が始まったと感じるのだろうか。93年生まれ、24歳のJP THE WAVYに話を聞いた。

Youtubeで「超WAVYでごめんね」(5月17日UP)の再生回数が16万回、SALUを迎えたリミックス(6月12日UP)の再生回数が48万回を越えました(7月12日現在)。

まさかこんなことになるとは思ってなかったです(笑)。もうちょっと軽い気持ちでつくったんですけど。この前も渋谷で、携帯であの曲を鳴らしながら歩いてるひとがいて、すれ違ったら「え?!」みたいな感じで戻ってきたり。

携帯で鳴らしながら? 文字通りのストリート・ヒットだ(笑)。タイトルに名前を冠したこの曲が〝JP THE WAVY〟としてのデビュー曲になりますが、もともとはLil Rightという名前でしたよね。ラップを始めたのはいつ頃からですか?
18歳ぐらいですね。中学でダンスを始めて、Do The Right Inc.(D.T.R.I)ってクルーに入ったんです。で、そこのリーダーのCarlosが歌もできるんで、ラップも取り入れようということになって。ただ、D.T.R.IにはYoung Rightってラッパーもいるからちょっとややこしいというのと、〝Do The Right Inc.のLil Right〟ではなく個人としても注目されたいなと思って、去年の終わりくらいにJP THE WAVYって名乗りだしました。

現在もD.T.R.Iとして活動していますよね。
D.T.R.Iではデビューして、赤坂BLITZでワンマンもやって。でも、メンバーが7人もいるし方向性もそれぞれで、何かをやろうとしてもちょっとスピード感に欠けて。だから、ラップに関してはソロでがんがん進めていこうと思ったんです。

JP THE WAVYという名前の由来については、散々訊かれていると思うんですが、まず〝JP〟は日本?
そうです。

そして、〝WAVY〟はラッパーのMax Bが流行らせたスラングですよね。
へー、知らなかったです。

あ、それは意識していない?
単純に〝格好いい〟っていう意味で付けました。あと、地元が湘南の平塚で、海が好きだから〝波〟とかけて。それと、自分、めっちゃ天パーなんですけど、癖っ毛も英語で〝WAVY〟って言うらしいんで、ちょうど良いなと。

〝WAVY〟がフッドとキャラクターを共に表しているということですね。では、「超WAVYでごめんね」はどのようにしてできたのでしょうか?
もともと、Instagramのアカウント名が〝Sorry Wavy〟だったんです。で、ビデオにも出てるリッキーっていう友だちとMARCEO BURLONのポップ・アップで一緒に働いてたとき、彼が「Sorry Wavyって、〝超Wavyでごめんね〟ってことですよね?」「そのタイトルで曲つくったら絶対バズりますよ」とか適当なこと言い出して、「ほんと~?」みたいな感じでつくったのがあの曲。

良い意味で、さくっとつくったノリがありますよね。
平塚から表参道に通勤する電車の中で書きました。で、最初はEPの内の1曲程度に考えてたんですが、勝手に暴走していっちゃって、こんなことになったという。

「超WAVYでごめんね」のビデオがうけた要因のひとつには、やはり、独特のダンスがあると思います。アメリカではラップとダンスが結びついてバイラル・ヒットしていくということは当たり前になっていますが、その点は意識しましたか?
うーん……やっぱりずっとダンスをやってきたんで、そういう要素も自然と入ってきたという感じですかね。ただ、前面には出したくなかったんですよ。例えば、友だちから初対面のひとを紹介してもらうときに「ダンサーなんだけど、ラップもやってて」と言われるのがすっげー嫌で。何て言うか、自分の中で〝ダンサーがラップもやっている〟というよりは、〝ラッパーがダンスもやっている〟という意識がある。

なるほど。ダンスをメインにしたビデオもつくったらさらにヒットするんじゃないかと思ったんですが、あくまでもラッパーなのだと。ちなみに、ディレクターのSpikey Johnとは、撮影前にコンセプトについては打ち合わせましたか?
あまりつくり込んだものにはしたくなくて、「いつものように仲間と遊んでるところをさくっと撮ったものにしたいよね」っていうことは話しましたね。撮影も、適当に歩きながら「ここいいね」って場所を見つけたら撮って、また歩いての繰り返し。途中に出てくるホームレスのおばさんとかも、渋谷にいつもいるんで、分かるひとには分かるから撮らせてもらおうって。だから、おれは何も考えてないです。Spikeyのセンスに任せてたんで。ビデオに出るのも、最初はおれとリッキーのふたりの予定だったんですよ。でも、友だちに「いま渋谷で撮影してるんだけど、来ない?」って連絡したら、「原宿だから行くよ」みたいな感じで集まったのがあのメンバー。そうしたら、服の色とかもみんなたまたま一緒だったという。

オレンジが基調になっていますが、偶然だった?
そうなんですよ。あと、水色とか。ほとんど、アパレル系のやつらです。

ダンスだけでなく、ファッションも重要な要素なんですね。
アパレルをやってなかったらこの曲はできてなかったと思います。さっきも言ったように、タイトルを考えてくれたのもリッキーですし、ビデオに出てる他のメンバーもOff-WhiteとかNUBIANで働いてたり、スタイリストをやってたり。リミックスをつくってくれたDubby Bunny君も(BATHING)APEですし……。とりあえず、あまり恐い感じのビデオはつくりたくなかったんですよ。

ラップのステレオ・タイプというか、いかにも悪そうなものとは違うものを目指した?
うん、悪いのはもういいやって。それもあって、自分で自分のことを〝ギャル男〟って言ったりしてるんですけど。

そう言えば、「超WAVY」を知ったのは、たしかビデオが公開されたとき、M6-PO君がJP君の写真に〝ギャル男〟とひと言添えてツイートしていたのがきっかけなんです。
そうなんですね(笑)。ありがたいな。

実際、ギャル男時代もあったんですか?
中学生ぐらいのときにそういうのが流行ってたんですよね。髪が長くて金髪で、みたいな。微妙にギャル男だったのかもしれない。

ビデオでの動きもちょっとフェミニンですよね。
これ(ピースを目にあてる)も、ちょっとギャル男っぽいポーズを入れてみようかと思って、ノリでやったんですよ。そうしたら、この曲と言えばあのポーズ、みたいになって「すご!」って。

出てくる女の子もやっぱり、ラップのステレオ・タイプではなくて、友だちっぽい感じが良かったです。
Spikeyがビッチっぽいイメージは好きじゃないんですよね。最初は、みんな広瀬すずみたいな女の子にしようって話してましたから。

どういうことですか(笑)
超清楚みたいな。でも、周りには広瀬すずっぽい子がいなくて、友だちを呼んだらああなりました(笑)

では、SALUをフィーチャーしたリミックスはどういう経緯でできたのでしょうか?
もともとはSpikeyの紹介でお会いして、そのときに「良かったら、今度一緒に曲でも」みたいに言ってくれて。まあ、社交辞令かなと思ってたんですけど、次の次の日くらいに電話がきて、「リミックスしたい」みたいな。

あ、じゃあSALUからの提案だったんですね。
はい。それで、次の週とかに撮影して。早かったですね。

しかも、撮影の次の日くらいには、Youtubeに完成版をアップしていましたよね?
そのスピード感は、Spikeyが大事にしてるところで。早さ命みたいな。だって、撮ってたら誰かに見られて、InstagramだったりTwitterだったりに書かれるじゃないですか。だから、間を空けたくないらしくて。

それが面白くて。Lui Hua君が撮影している様子をツイートしていたんですよね。それで、何だろう? と思っていたら、次の日にあのビデオがアップされて。その流れが今っぽいなと。
そうそう。そういうのって楽しい。リミックスのビデオもその場の流れで撮影して、Lui Hua君とかWeny(Dacillio)は当日に呼んだんですよね。M6-POも来たいと言ってくれてたんですけど、撮影中で連絡に気づかなくて、残念でした。

先日、egg-manでやったライブにはゆるふわギャングのふたりも遊びに来ていましたね。そういった同世代のラッパーとつながり始めている感じはありますか?
あまり気にしてないですね。普通に仲良くなれたら、って感じです。

リミックスのビデオは、Lui Hua君やWeny君のカメオの他にも、SALUが白石麻衣の写真集を見てたりとか、気になるポイントが色々あります。
SALU君があれと雑誌の『ムー』を持ってきて、「どっちが良い?」って言うんで、白石麻衣の方にしたんですよね(笑)。撮影後にもらいました。使ってない変なシーンもいっぱいありますよ。途中、おれが服を脱ぎかけてるのは、女の子を担いで走るシーンの後で、暑かったからですし。

何度観ても面白い、良いビデオだと思います。
撮影の後、そのままSpikeyの家に行って、とりあえずトレーラーだけつくって。明け方、「あとは頼むわ」っておれは家に帰って寝て。そうしたら、夜にはもうできてたみたいな。それがあんなに観られてるんだから不思議な感じです。

ライブでも大合唱になっていますよね。
あの曲はかなり低い声でラップしてるんですよ。だから、ライブでは歌いにくくて、お客さんに助けられてます。でも、この間、TRUMP ROOMでやったときとかモッシュが凄すぎて酸欠になって。死ぬかと思いました。

デビュー曲から凄いことになっていますが、今後のことは考えていますか?
いやーーー、プレッシャーがハンパじゃないですよ、ほんっとに(笑)。とりあえず、7月中にEPを出せたらと思ってます。あと、テレビにめっちゃ出たいんですよ。目立ちたがり屋ってわけじゃないですし、どっちかと言うと緊張しいなんですけど、アメリカってそうじゃないですか。ラップやって、モデルやって、俳優もやって、全部ひっくるめてひとりのアーティストっていう。そうなっていきたいですね。

Credits


Text Ryo Isobe
Photography Takuya Nagata