生活に遊び心を、ファッションにユーモアを

「日常生活そのものを遊び、ファンシーなものへと変える」。コム デ ギャルソン社よりデビューし、9年目を迎えるデザイナーGANRYUが2017年春夏コレクションで提案した「暮らしの提案」とは?

by Yuka Sone
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04 August 2016, 3:20am

人間、誰しもが持っている日常の生活。ファッションを楽しむものにとって、日常着をいかに自分らしく、スタイルのあるものにするのかというのは共通の悩みであり楽しみである。今回2017年の春夏コレクションを発表したGANRYUのデザイナー、丸龍文人は日常生活という普遍的なテーマに挑んだ。
「日常をいかに非日常のように楽しむかというのが最終的なゴールだったんです。最初はもっと曖昧で、音楽が似合う服とはどんな服なのか、というところから始まりました。同時に、ニューロマンティックやニューウェイブのイメージのヴィジュアルが持つニュアンスも気になっていました。それらの要素を、実際に自分自身が着たいと思う形にしようとすると "プレイングライフ/生活を遊ぶ"というテーマを追求することになったんです」

ショーにおいて主役となる服をさしおいて鮮やかなカラーを施したヘア&メイクアップによって、ニューウェイブへの意識を強く感じさせたファッションショー。奇抜なヘアメイクに対して、デニムやシャツをはじめとした日常着としての馴染みが深いアイテムを皮切りにスタートしたランウェイだが、中盤に進むにつれピンクやグリーンなどのポップな配色のデニムやスウェットのルックが会場を沸かせた。やがて重たいピアノ音のBGMとともに登場した白のツーピースでムードは一気に変わり、より複雑化した染めや加工のアイテムに移行していく。「これこそ、丸龍ならではのプレゼンテーション」と言わしめる構成の妙がじつにおもしろい。
「人生辛いこともあるじゃないですか。でもそれも人生の一部だし、苦難すらも自分の成長するチャンスであって、ハッピーへつながる事柄でもある。そういった意味で、人生をとにかく遊ぶという感覚で捉えられる人というのは強い人だと思うんです。BGMで流れたような重たい音や、カラフルな楽しいアイテムを人生の起伏と捉え、それらを受け入れて自分で乗り越えていくような、強くてポジティブな人に着て欲しいという思いがあります」

もちろん、GANRYU式の遊び心はアイテムにもふんだんに投影されている。本来であればインディゴで染めるようなアイテムを、ピンクやグリーンなどで染め上げることで、一見すると本当にデニムのセットアップなのかと見紛う仕上がりになっている。さらに、ショルダーにアタッチメントがつけられ、バッグのように肩がけも出来るアウターについては、強風にも飛ばず、手元を邪魔しないというデザインとファンクションを両立させた。ショーのムードを一転させた白のツーピースについては、2つのベーシックなシャツを再構築して作りあげ、本来分厚い生地のGジャンは、あえて薄い生地で作りシワ加工を施すことでドライな肌感覚を実現するなど、極めてベーシックなアイテムを実用的かつプレイフルに再現している。デザインで奇をてらうことなく、いかに奇想天外な発想を日常着にほどよく組み込ませるか。究極のベーシックとも言える今回のテーマは彼が10年以上、日常的に研究していることだ。

「例えばスーパーに買いにいくのも冒険心を持っていくというか、生活に必要な行動自体を遊ぶというか。日常に夢と遊び心を与えるのにふさわしい服を作りたい、という考えがあったので、着地点はそこになっています」。
日常を超日常に変えるメソッドを作り出す過程には、丸龍の挑戦が隠されている。
「人がやっていないことをやるというのは、ビジネスをやる以上必要な考え方です。ただし、奇をてらいすぎてもいけないし、やってないことをやるだけでもいけない。自分の思いが乗ったうえで、誰もやっていないことをやるべきなんですよね。そのうえで"生活感があるとおしゃれになりづらい"という方程式に対して挑戦したかった。例えば子供と行くような場所にもふさわしい服というのはなんだろう、という考えがあって、ネオ・ダッズスタイルっていうのを無意識に提案したいと思っていたんですよね。最近は、たまに街中でも子供連れでGANRYUを着ている方をみることがあって、届いているなと感じるようになってきました」

子供ができて丸くなる、とはよく聞くフレーズだけれど、あからさまに挑戦的なファッションとは違う、したたかな挑戦をつづける姿勢は、一見相反する今回のショーのヘアメイクへの思いへと繋がっていく。
「ニューウェイブのスタイルとGANRYUの服との化学反応が見てみたいと思ったんですよね。パンクやロックやヒップホップやミクスチャとは異なり、明確なコレというものが無いもの。また、それらが呼応し合う"混沌"についても、ひと昔前とは違った"淡さを感じる混沌"を表現したかった。それにはニューウェイブがしっくりきたんですよね」

Credits


Photographer Takao Iwasawa
Text Yuka Sone

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