この世は舞台、人はみな役者、吉村界人の思い

厚めの唇に、印象的な切れ長の瞳—— 彼の姿をひと目見れば、誰でもその存在感に心奪われてしまいそうになる。俳優としてデビューすると同時に『PORTRAIT −ポルトレ−』や『太陽を掴め』などの映画作品に主演として抜擢された吉村界人。2017 年最注目株の俳優は自身の今後をどう見据えているのだろうか? その素顔に迫る。

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jul 26 2017, 1:55pm

「ファッション撮影はもう慣れましたか?」「いや全然慣れないですよ」

寒空の下、敢行された撮影を終えて帰路につくロケバスで尋ねてみた。先ほどまでカメラに向かって、鋭い眼差しでポーズをつけていた吉村界人であったが、改めて対峙して話を振ると照れ屋な一面を覗かせた。インタビューの話をしやすいように通路側の席に座り、やや前のめりな姿勢で意識をこちらに向けながら話す。そんなところからも彼の誠実さをうかがい知ることができる。

「映画が好きで、演技の世界への憧れは高校生の頃から漠然と抱いていました」と学生時代を振り返る。高校卒業後、夜間の大学へ進学したものの、学校が肌に合わず、部屋で本を読みあさり映画を見続ける日々を送っていたという。「考える時間がいくらでもありました。そうやって悶々と時間を過ごすなか、諦められない夢に体当たりしようと思ったんです。"俳優になる"と決めて、今の事務所のワークショップオーディションに参加しました」

初の主演作、内田俊太郎監督の自主映画『PORTRAIT - ポルトレ−』について、「主人公の役柄と当時の自分自身が重なる部分が多くあったので、オーディションには絶対受かるという自信を持っていました」と語る。ジェームズ・ディーンやリヴァー・フェニックスが出演する映画やインタビューを参考に、入念に役柄を作り上げていったという。その後、2016年に主演を務めた『太陽を掴め』では、バンド活動に邁進するヤット役を熱演。主人公とクロスオーバーするかのような好演が話題をさらった。「そのときは、甲本ヒロトや尾崎豊のインタビュー動画を役作りの参考にしました。彼らの言動や佇まいそのものに魅了されているんです。だから自分もそうなれたらいいな、とどこかで思っているのかもしれないですね」

演技は完全に独学。体当たりで邁進する姿勢には、凄まじいほどの情熱を感じるが、「僕は基本ビビリなんです」と屈託なく話す。いつも現場で演じるたびにいかに自分がこの仕事に向いていないかを痛感するのだという。「カリスマと呼ばれる人たちのインタビュー動画を見て自分に鞭を打ち、"天下を取る! 星を掴む!"と呟いて自分を鼓舞しないと、魔法が解けてしまう気がするんです。シェイクスピアの『この世は舞台、人はみな役者』という言葉があるように、職業として役者になる前から虚勢を張り続けてきました」

世間からの注目を浴びるようになった一方で、やりにくさも感じているようだ。「僕は背水の陣のほうが圧倒的にパワーが出る。だから今は、演技についての知識や技術もなくガムシャラにやっていた頃よりも難しさを感じています。評価されたくて演技しているのに、褒められると何もできなくなる。いつも自己矛盾しています(笑)」

こうした彼の繊細さと表裏一体を成しているのが、大胆さだ。自身の内なる声に耳を傾け、それを発信していくことで自信に結びつけてきた。「習慣的に自分の考えをメモしていて、以前はそれをSNSで積極的に発信していました。でも自分の言葉で何かを表現したいのであれば、SNSを頑張るより、全部表現にしてしまえばいいんだって気づいたんですよ」。その言葉通り、最近では被写体として写真表現にも熱中しているようだ。

「結局のところ格好つけたポーズを大事にする人より、不器用でも熱く努力している人のほうが高みに行けるじゃないですか」

そんな彼の次なる目標とはなんだろうか。「まだ今は"俳優の"とか、"誰々と共演した"といった枕詞が必要な時期ですが、いずれは個として圧倒的でありたい。説明文を加えなくても誰にでも理解されるほど認知されたいです。例えば、マクドナルドのように(笑)」。車中から見える赤と黄色の看板を指しながら答える。「誰かの二番煎じとしての俳優ではなく吉村界人にしか座れない席がこの世界にあるのかどうかこの1年で確かめたいですね。その席がないならこの世界で戦い続ける意味なんてないですから」

自分を奮い立たせるような言葉の力を借りて、つき進む吉村界人の在り方で、どこまで走り抜けることができるのか。今年は『獣道』や『関ヶ原』などいくつもの映画作品の出演が決まっている。今後の彼の動向から目が離せない。

Credits


PHOTOGRAPHY YUICHI AKAGI
STYLING MASATAKA HATTORI 
TEXT HIROYOSHI TOMITE
Hair and Make-up Tomomi Fukuchi
Photography assistance Hidetoshi Narita
Styling assistance Haruna Aka
ALL CLOTHING DIOR HOMME