人気YouTuberの華麗なる半生

YouTubeで人気を博し、カミングアウトの動画が700万回の再生回数を記録。ポップスターの座へと駆け上ったトロイ・シヴァンに迫る。

by Matthew Whitehouse
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14 June 2016, 7:40am

Troye wears Coat Ports 1961. Coat (worn underneath) Dries Van Noten. Waistcoat (worn underneath) Wrangler from Breuer Dawson Archive. Jeans Evisu. Badges stylist's own. 

現在21歳のトロイ・イヴァン(Troye Sivan)。彼は、オーストラリア西部にある両親の家から10年間、YouTubeに動画をアップし続けていた。彼のすべてを公開し尽くしてしまったのではないかと思わせるほどだ。ありがたいことに、ポップスターのバックストーリーとしては、彼の半生は実によくできている。南アフリカのヨハネスブルグに生まれ、オーストラリアのパースに育ったトロイ。12歳のとき、いとこが「このYouTubeっていうサイト」というメッセージとともに送ってきたリンクで、彼はスターをも生み出すインターネットの力を知ることになる。それまで地元のモールで披露していた歌を、より多くのひとに聴いてもらえるチャンスだと喜んだトロイは、大ファンだったマイケル・ジャクソンの歌をカバーし、その動画をアップした。塩を塗った腕に氷を置き、火傷のような感覚に耐えるチャレンジビデオを作ったり、虹色のケーキを作る(そして大失敗する)様子をビデオに収めたり、ワン・ダイレクションのカバーを数曲アップしたりした後、彼はインターネットで大人気のパーソナリティとなった。そんな彼に転機が訪れたのは2013年8月7日。彼は、『カミングアウト』と題したビデオをアップした。この8分間の動画で、当時18歳のトロイは、ちょうどその3年前に両親へ告げたことを、今度は50万人を超えるチャンネル登録者に向けて打ち明けた。この動画の再生回数が670万回を超えた頃、彼の人生は変わった。

「実生活では完全にゲイだったけどね。公表はしていなかったんだ」と、ブルー・ネイバーフッド・ツアーの一環として、現在ロンドンに滞在しているトロイは話す。「Twitterで何度、ザック・エフロンについてツイートしようとしたことか……でも毎回、考えた末にやめたんだ。『僕は何やってんだ? 何がそんなに怖いの? 僕のオーディエンスはそんなこと、たぶん……』なんて自問もした」。もちろん、トロイの心配は、彼のオーディエンスが想像するよりもずっと深いところで彼を悩ませていた。セクシュアリティ公表に関する不安はもちろんだが、トロイはこのたった2ヶ月前、彼が夢にまで見たEMIオーストラリア社との契約を実現させていたのだ。EMIは、彼がジョン・グリーンの小説『The Fault in Our Stars』に着想を得て書いたある曲を気に入って、トロイにアプローチをしていた。退屈な音楽が溢れるポップス界はこれからもヘテロセクシュアルな世界のままだろうとトロアイは感じていた。同時に、インターネットは従来のポップス界とは違うということも彼は熟知してもいた。「自分を知って、受け入れようとしていた時期、僕は100%、インターネットに頼っていたんだよ。インターネットにあるゲイティーン用フォーラムすべてに匿名のアカウントを持っていたし、YouTubeにアップされているカミングアウト動画は全部見た。そうやってやっと自分を受け入れることができたんだ。だから、インターネットには大きな借りがあると感じていたんだよ。僕の物語はインターネットで語られるべきものだと思ったんだ」

Top Raf Simons. Shirt (worn underneath) Lanvin. Jacket (worn underneath) No. 21. Trousers Paul & Joe. Charm MCM. 

今、YouTubeで「coming out」と検索をかければ、数千のカミングアウト動画がヒットする。トロイと同じくユーチューバーであるコナー・フランタ(Connor Franta)の動画は再生回数1060万回、イングリッド・ニルセン(Ingrid Nilsen)の動画は1470万回、オリンピックの飛び込み選手トム・デイリー(Tom Daley)は1180万回の再生回数を記録するなどしている。オンラインのLGBTカルチャーにおいて、ヴロギング(ビデオブログ)はアップする者が自らのカミングアウトを多少なりともコントロールできるという重要な特性を持っている。そして何より、極めて効率的なのだ。「もうずっと誰にもカミングアウトせずに済んでいるんだ!」とトロイは笑う。「一石百万鳥って感じだよ!」。彼のカミングアウト動画は、圧倒的な肯定をもって受け入れられただけでなく、"ゲイであることを公表することで若い女性ファンを失う"という音楽マーケティングの定説を見事に覆した。トロイのコンサートにも、女の子たちの黄色い声はそれなりに多く聞かれる。「ほんとに、女の子たちはなんで僕のショーなんかに来て、あんな振る舞いをしてくれるんだろうって不思議に思うときがあるよ」とトロイは、普通のティーンアイドルらしく控えめに言う。「なによりも友情みたいなものを感じるんだと思う。ジャスティン・ビーバーみたいなひとだったらセックスシンボル的なものなんだろうけど。僕の場合は、たぶんブランケットに包んで"おうちに帰りましょ"っていう感じなんじゃないかな」

それもあながち的外れではないだろうが、彼のファンの多くは純粋にトロイの音楽に惹かれているのだ。彼の音楽は、控えめに言っても素晴らしい。子役(『ウルヴァリン:X-Men Zero』(2009)に出演している)からネットセレブを経てポップアーティストへと転身したミュージシャンとは思えないほどのクオリティなのだ。「EMIと契約を結んだときは、すごく懐疑的だったんだ」とトロイは当時を振り返る。「『なんで僕なんかと? このひとたちは僕にどうしろと言うのだろう?』って。そんな心配が無駄に終わったのは本当にラッキーだったと思う」。そうして出来上がった昨年のヒットアルバム『ブルー・ネイバーフッド』は、趣味の良いポップスと、彼が公然と示し続けるアイデンティティに関する姿勢(トロアイはコンサートの一部で必ず自身のカミングアウトについて語る)が調和し、世界中の敏感なティーンたちの支持を得た。テイラー・スウィフトでさえも、Twitterで「ワイルドで最高」と彼の音楽を褒めちぎり、『TIME』誌は"最も影響力を持つティーン25人"に、あのノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)とともにトロイを選出している。「ステージから観客席を見るとね、そこには頭の良いキッズ、綺麗な格好をしたキッズ、キッズと呼べるほどには若くない人たちがいて--もちろんそれはクールなことだよ--そしてゲイがたくさんいるんだよね。ハッピーで楽しそうにしている人たちが見えてね、すごく力をもらえるんだ」

他のアーティストたちは、彼のブレイクを見てどんな反応を見せているのだろう? 「そうだね、中にはあまりよく思ってないひともいるかもしれない」と彼は言葉を選びながら話す。「バーで歌ったり、デモテープをレーベルに何度も送った経験が僕にはないからね。でもね、本当に長い間、ビデオを作り続けて、編集したり、オンラインでコミュニティを作り上げようと頑張ったんだよ。これからはもっとたくさんのひとがネットから登場して、バーで歌ったりデモテープを送った経験があるかどうかなんて問題じゃなくなる、そんな時代が来ると思う」。そうは言っても、トロイがインターネットという自身のルーツを忘れることはない。「全部、インターネットのおかげ。キャリアだけじゃなくて、もっと個人的なことでもね。あのプラットフォームとオーディエンスは僕と一緒に成長してくれた。もちろん変化したこともあるけど、だからって僕は恩義を忘れたりしないよ」

https://www.youtube.com/user/TroyeSivan18

Top Haal. Jeans Evisu. Badge stylist's own. 

Credits


Text Matthew Whitehouse
Photography Leon Mark
Styling Tara St Hill
Hair Naoki Komiya at Julian Watson Agency using Kiehl's since 1851
Make-up James O'Riley at Premier Hair and Make-up using Tom Ford
Photography assistance Henry Hewitt
Styling assistance Rebecca Davis, Carmen Hudgens.
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc. 

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