写真表現のヘゲモニーを女性の手に

DVや性的抑圧などのジェンダー問題が、修正され、黙殺される現状を、写真家のアニー・ルトワクが読み解く。被写体の身体にほどこしたアザの意味とは?

by Blair Cannon
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01 June 2016, 7:00am

アニー・ルトワク(Anny Lutwak)が写真を撮り始めたのは、彼女がまだマンハッタンに暮らす13歳の少女だった時だった。これまで様々な写真を試したと話すアニーは、現在、バード大学2年生。女性のセクシュアリティーとその表現のされ方、そしてそれに伴う問題を、写真を通して考えている。最新シリーズ『Female Trouble(女性の問題)』では、女性が直面する身体的な苦悩を扱っている。DVや性的抑圧などのジェンダー問題がいかに世の目から隠され、修正をほどこされ、矮小化されているか。ルトワクは、被写体の目にあざをペイントしたり、ペニスにラインストーンをあしらうなどして、女の性を描き出している。特殊効果が目立たない作品も多いが、むごたらしく、過激な暴力描写がほどこされた作品も少なくはない。"女性として生きること"がこれまでどのような描かれ方をしてきたか、そして写真作品における主導権を女性がどのようにして自分たちのもとに取り戻しているかについて、彼女に話を聞いた。

どのような思考を経てこのシリーズ制作に至ったのですか?
撮った写真がこのプロジェクトへの自然な流れを作っていたの。このプロジェクトを通していかに女性が直面する問題が黙殺されたり、勘違いとみなされてきたかを検証したかった。だけど、アイデアが作品として形になり始めると、自分に委ねられている権限について自問するようになったわ。扱っているテーマには、私がやすやすと語ってはいけないような問題があるように思えたから−−自分の作品には、自分自身で責任を持たなくてはならない。とても悩んだわ。だけど、倫理のことを考えても、私はより大胆になれるし、やるべきなんだと思い至ったの。

シチュエーションに演出をほどこしているのはなぜでしょうか? 特に、暴力的な演出をした経緯について教えてください。
作品のテーマによって、演出する場合もあれば、自然な瞬間を捉える時もあるわ。今回は、"作りもの(もしくはそう信じられているもの)"がテーマだから、世界の現状に対するカウンターとして、少し大げさな演出をほどこすのは効果的な手段だと思ったの。「これが作り物だと思うわけ? ええ、そうよ! 蝶ネクタイをつけて、かわいくしてあげたわ」って。女性が抱える問題は、男性が目を背けたくなるようなものばかりよ。リアルでむごいの。世の中は真剣に受け止めて、もっとよく考えるべきよ。

女性は写真の中で"作り物"であることを期待されるものなのでしょうか?
セクシーであることを期待されるのは確かね。写真の中では特に。写真家と被写体の関係にもよる。個人的には、被写体がカメラを意識していない瞬間を捉えたいといつも思っているわ。

被写体の女性たちとはどんな関係なのでしょう?
彼女たちは私の友達なの。なんでも知っている仲よ。だけど、彼女たちの個人的な経験を写真で撮ろうとは思わなかった。よく考えたのは、"何をやっているときに彼女たちが最もくつろげるか"ということ。女性だからという理由で軽視された経験は女性なら誰にでもある−−それを、このプロジェクトを通して訴えたかったの。友人たちの具体的な経験を語りたかったんじゃなくね。

男性のヌードもシリーズに含まれていますが、なぜでしょう? また、ペニスをデコレーションした裏にはどのような意図があったのですか?
女性の目から見たモノとしての"男性の体"を、男性にも見てほしいと思ったから。世界は美化された、旧套な女性らしさで溢れているけど、アートの世界には、それをよしとしない風潮があるのよね。フェミニンな作品は、価値も低くて、ときには低俗とまで見られることもある。そういったことを逆手にとって作品を作ろうと思ったの。それも女性をインスパイアできるような方法でね。

写真は、自己表現の手段として女性に自信を与えうるものだと思いますか? 女性の苦悩が軽く見られる結果を招いたり、女性が犠牲となる状況を作り出してしまうとは考えられないでしょうか?
良くも悪くも作用しうると思う。女性が直面する問題が写真で修正される場合も多い。だけど、表現や自己実現のツールとして上手に使われているケースが多いのも確かよ。このプロジェクトでもそれにも触れているしね。最近では、女性が写真を使って、人々をインスパイアしているのも多く見かけるようになった。だから、私たちが自らの体験をどう表現していくかを自由に決めていければ、ポジティブな方向に向かっていくと信じているわ。

annysasha.com

Credits


Text by Blair Cannon
Photography by Anny Lutwak
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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