3500人が参加したBLM東京行進【レポート】#BlackLivesMatter
渋谷で開催されたブラック・ライヴズ・マター運動に連帯を示す「ピースフル・マーチ」に3500人が参加。当日の様子を写真と共にレポートする。
6月14日の午後3時前、小雨の降るなか、代々木公園にプラカードを持った人だかりができている。主催者たちは列を整理すべく、参加者たちに声をかけている。英語だ。列に並ぶと、前列にいる7-8人の若いグループの話し声がマスクごしに聞こえてくる。これまた英語だ。けれども、手書きのプラカードは日本語で書かれている。「人種差別 NHKさえ理解がない だから今こそ会話が必要」。同じ列に並ぶ2人組はフランス語でなにかおしゃべりしている。雨が止んで傘をしまう。しばらくするとまた降り始める。後方からは列を整理する声が聞こえてくる。出発まではまだまだ時間がかかりそうだ。
今年5月末にミネソタ州ミネアポリスで白人警官によってジョージ・フロイドが首を圧迫され亡くなった事件を受けて、2013年に始まった「ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命を軽んじるな)運動」が再び大きな広がりを見せている。その波はアメリカ国内にとどまらず、ヨーロッパやアジア各国、そして日本へも伝播した。今回の「ピースフル・マーチ(平和的な行進)」が行われる前週末にも、BLM運動に連帯を示すイベントが東京と大阪で開催されていた。


マーチを主催したのはBlack Lives Matter Tokyo。大学生のシエラ・トッドを中心にした有志たちによってオーガナイズされており、その大部分が学生をはじめとしたユースが占める。彼女たちがクラウドで公開しているグーグル・ドキュメントには、日本語で読めるBLM関連資料や記事がまとまっており、今でも事あるごとに更新されている。

予定時刻から30分ほど経ったころ、気づけば雨が止んでいる。マーチは10以上のグループに分割され、それぞれ数百人となった一群が時間差で代々木公園を出発した。「ブラック・ライヴズ・マター」「ノー・ジャスティス・ノー・ピース」という英語のコールや「差別はやめろ」という日本語のコールなど、グループごとに異なるかけ声があがる。かと思えば、黙々と歩いているグループもある。パルコの横の坂を下っていると、カッパを着た警官たちが逆方向に駆けていくのが見える。まるでなにかただならぬ事件が発生したかのようにぞろぞろと。参加者が予想以上に集まり、マーチに帯同する警備人員が足りなくなったのだろう。

渋谷で開催された今回のマーチには3500人(主催者発表による)が参加し、渋谷・原宿エリアをぐるりと練り歩いた。「人種差別はここ(日本)でも起きている」「〈レイシズムがない〉というのは新しいレイシズムだ」など、日本語や英語で書かれたプラカードが目をひいた。
マーチの終着点は集合場所と同じ代々木公園。細切れになったグループが帰ってくるたびに、すでに歩き終えた参加者たちから大きな拍手が上がっていた。最初に出発した一団が公園に戻ってきても、まだ出発していないグループもあったそうだ(だから、2周したという強者もいた)。



すべてのグループがマーチを終えて公園に戻ってきたころ、どこからともなくケンドリック・ラマーの「Alright」が聞こえてきた。音の鳴るほうに向かっていくと、主催者が用意したポータブル・スピーカーの周りを囲んで十数人が踊っている。アフターパーティが始まろうとしていた。が、すぐに公園の管理人による「音楽は鳴らしてはいけない」という注意が入り、あえなく中止となった。
そこで彼らが強行しなかったのは、最後にスピーチが予定されていたからだ。発起人のシエラは参加者への感謝を述べ、BLM Tokyoのオーガナイザーのひとりであるジュンは、自身がトランスジェンダーであること、警察の暴力に対して共に抗議の声をあげてきたトランスやゲイ・ライツの運動とブラック・ライヴズ・マターは連続体であること、奴隷制が終わってからも形を変えて温存されている制度的な黒人差別などについて語った。


ジュンはこうも言っていた。「黒人の文化を享受しながら、黒人に起こっている出来事(暴力や差別)に無関心でいることはあってはなりません」。現代において日常的に触れる音楽やファッションがいかに多くの黒人文化の影響下にあるかを鑑みるならば、2020年の日本に暮らす一体誰が、当事者ではないと言い切れるだろうか。
あるいは文化うんぬんは置いておくとしても、「肌の色は関係ない」という一見いいこと言ってる感のある差別的発言や、アフリカ系の親を持つミックス(ハーフ)が日常的に経験しているマイクロアグレッション(悪意なき差別)は日本にも溢れている。茨城県牛久の入管センターで発生している外国人の人権侵害や、在日朝鮮人に対するヘイトもある。
どんなものであれ、差別に向き合うためには歴史や文脈を知り、自身の認識を更新していくことが最初のステップとなるはずだ。i-Dではブラック・ライヴズ・マター運動をきっかけにレイシズムや差別を考えるための本・映画・ドラマを紹介してきた。また直接支援したい人は、オンラインで寄付できるアメリカの基金やチャリティ団体をまとめた記事を参考にしてほしい。



