ジェイデン・スミスが語る、意識を広げることの大切さ

23歳のスターが幻覚体験、ジャスティン・ビーバーとのツアー、自身のレーベルMSFTSの10年間について語る。

by Frank Nesbitt; translated by Nozomi Otaki
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04 July 2022, 8:17am

この記事はi-D The Out Of Body Issue, no. 367, Spring 2022に掲載されたものです。注文はこちら

子役としてデビューし、23歳にして兼業クリエイターへと成長したジェイデン・スミス。確かにハリウッドを代表するセレブ一家の出身として、その苗字を見過ごすことはできないが、ジェイデンはずっと使命感に燃える努力家だった。彼は決して家族のレガシーによって定義される人物ではない。10年近く前から音楽、ファッション、環境保護のアクティビズムの分野で、独自の道を切り開いてきた。休むことなく自分が進むべき方向へと進んできた彼は、今回のインタビューでも、すべての活動に全力で向き合っていることを証明した。

 ウィル・スミスとジェイダ・ピンケット=スミスの息子として、ジェイデンは今年一緒にワールドツアーを回ったジャスティン・ビーバー、幼馴染のカーダシアン&ジェンナー家の子どもたちなど、ハリウッドの生まれながらの若きエリートたちに囲まれて育った。傍から見れば、彼もクールな若者のひとりだが、若い頃のジェイデンにとっては、自分が周りに馴染めないのではという不安がつきものだった。このような思いが、友人のモイセス・アリアス、¿TÉO?、妹のウィローとともに立ち上げ、最初は社会でアウトサイダーのように感じる人びとのためにデザインされたフーディやTシャツの商品提供から始まったアパレルブランド〈MSFTS〉のインスピレーション源となる。現在は同世代の美学的傾向や文化的価値観に沿う本格的なストリートウェアラインを展開している。

Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue
Jaden wears jacket MARC JACOBS. T-Shirt MSFTS. Jewellery (worn throughout) model’s own.

スカートやクロップトップ、ジーンズ、Tシャツ、そしてアップサイクル商品とデザイナーの定番アイテムの組み合わせなど、ジェイデン自身のスタイルを反映しながら、MSFTSはサステイナビリティとジェンダーフルイディティ(流動性)を重視するブランドだ。ここ数年で、LAを拠点とするこのブランドは世界的に認められ、イタリアの年2回のメンズウェアの見本市ピッティウオモでも展示会を開催。それから間もなく、プロダクションの拠点をイタリアに移し、ラグジュアリーファッションの世界に進出する。

今回i-Dはロサンゼルスでジェイデンに会い、ブランドのサイケデリックなインスピレーション源、ジャスティン・ビーバーの前座としてのステージ復帰、パンデミックから生まれた新たなアイデアについて語ってもらった。

Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue

──ハイ、ジェイデン。撮影はどうだった?

よかったよ。すごくクリエイティブだった。この撮影がMSFTSの2022年春夏コレクションの初お披露目なんだ。僕たちのトリッピーなサマーコレクション……神秘的な意識状態について学んだり、意識を広げることについてのコレクションのね。

──昨年、ブランドの売り上げが急増しましたね。パンデミックはアイデアを生み出したり、物事をより深く掘り下げる機会になった?

うん、パンデミック中はそういう時間がたくさんあった。2022年はMSFTS10年目の年だから、今までずっとやりたかったけどできなかったことをやってる。

Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue
Jacket YOHJI YAMAMOTO. Hoodie MSFTS.

──ブランドが象徴するものを説明するとしたら?

このブランドは疎外感を覚えたり自分の居場所がないと感じているひとのためのもの。それがすべてなんだ。みんなで集まって、歴史改変SFでも今僕たちがいる場所でも自分自身のことでも、普段あまり話さないことについて話す場所。ただ一部屋に集まってみんなで意識を広げることもある。つまり、周りに馴染めない人たちのための場所なんだ。だからMSFTS(※misfits:はみ出し者)という名前をつけた。若者が自分自身やアイデアを表現するための場所。世間の人びとは変わった人たちと会話をしようとしないから、仲間と話せる自分たちのコミュニティをつくった。

──そろそろ〈変であること〉を普通のこととして考えるべきでしょうか?

僕たちは普通になりたくない。馴染みたくないんだ。周りとは違う存在でいい。ありのままの自分として、ありのままの自分を受け入れてもらいたい。受け入れてもらえなくてもかまわない。僕たちには仲間がいるから。

Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue
Jacket ASLAN. Hoodie MSFTS. Trousers MARC JACOBS. Trainers (worn throughout) NEW BALANCE.

──あなたの個人的なスタイルは多種多様で、社会的に期待されるジェンダーの境界線を曖昧にするものも多いです。こういうスタイルの信条がMSFTSのブランドにも織り込まれている?

そうだね、僕たちがこの世界について感じていることを自分が着るものに反映させる。妹も僕も自分が着たいものを着て、作りたいものを作るんだ。

──最新アルバム『Cool Tape Vol. 3』は、コンサートができなかったパンデミック中にリリースされました。リリース後オーディエンスと直接会えないというのはどんな体験でした?

アルバムを出したあとに誰にも会わないのは最高だったよ。誰にも何も説明しなくていい。誰とも直接会えないときに出たアルバムだから、パフォーマンスしないことを前提につくった感じがする。

Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue
Coat YOHJI YAMAMOTO. Hoodie MSFTS. Jeans LEVI’S.

──『The Cool Café:Cool Tape Vol.1』をリリースしたのは2012年でしたね。約10年前ですが、それからあなたの音楽はどのように進化してきましたか?

『Cool Tape Vol.1』と『Cool Tape Vol. 3』はまったく別の人、別のアーティストがつくったような感じがすると思う。この前2枚とも聴いてみたけど、自分はめちゃくちゃ成長したな、って思ったよ。

──成長を振り返ってみて、この歳までにこれを成し遂げなければいけない、というプレッシャーを感じたことはありましたか?

昔はそう思っていたけど、最近はそうでもない。いいペースで進んでると思うよ。

Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue

──以前もさまざまな意識や幻覚状態について話していましたね。そういう体験はあなたのものの見方に影響を与えましたか?

完全に変わった。特に自分の外の世界の考え方についてね。これまでの人生で根底から揺さぶられるような体験は、ここ数年、幻覚剤を使ったことだった。幻覚剤は、これまで存在も知らなかった現実の別の面を見せてくれる。説明するのは難しいけど。言葉で説明できないから、音楽や服に反映しようとしてる。

──恐怖心を乗り越える秘訣は?

失敗が恐怖心を乗り越える助けになることもある。思い切って冷たい水に飛び込むことが、僕には役に立った。たとえ失敗したとしてもね。

Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue
All clothing MSFTS.

──環境問題や気候変動について積極的に声を上げていますが、環境問題解決に取り組みたい若者に伝えたいことは?

まずは知識を深めるところから始めてほしい。仕組みさえわかれば、状況を少しでもよくするためにやるべきことがわかるはず。僕自身もそうだった。それは環境問題のことに限らない。知識を身につけることが、自分に起こせる最大の変化だと思う。

──完全なヴィーガンですか? それも解決策のひとつ?

ハチミツは食べるし、ときどきバターが入ってるものを食べることもあるから、完璧なヴィーガンとはいえないけど、肉はまったく食べない。全員がベジタリアンだったら、温室効果ガスの排出量は劇的に減るはず。そういう小さな選択でも、変化を起こすことはできる。でも、別にベジタリアンになる必要はない。なるべきだと主張するひとも多いけど、僕は肉を食べる量を減らしさえすれば大丈夫だと言いたい。肉を絶対食べるな、とは言わない。そうしたらみんな敬遠してしまうから。平日はベジタリアンとして生活して、週末に肉を食べたっていい。多くのひとに参加してもらうための別の手本があるべきだと思う。

Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue
Jumper RICK OWENS. T-shirt MSFTS. Jeans LEVI’S.

──日常生活の習慣を少しだけ変えるなど、ちょっとしたことから始める方法もある、と。

そのとおり。ただの習慣というより、日常生活の中にある企業、つまりどの企業を支持するのか選ぶことが重要なんだ。企業や政府には、やると言ったことや計画に対して責任を果たしてもらわないと。表明しておきながら何もしないなら、責任を追及する必要がある。そういう場合は支持をやめるんだ。それが大きな変化につながる。

──つまり、個人というよりも組織の問題ということですね。

そうなんだ。個人のカーボンフットプリントも重要だし、きちんと測定するべきだけど、大企業のカーボンフットプリントや責任逃れしていることにも注意しなければいけない。どんなひとのカーボンフットプリントも重要だけど、僕たち全員が子どもが遊ぶ川の上流に化学薬品を捨ててるわけじゃない。

Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue
Coat, jacket and trousers MARC JACOBS.
Jaden Smith in i-D 367 The Out Of Body Issue
T-shirt MSFTS.

Credits


Photography Tyler Kohlhoff.fashion Lana Jay Lackey.Make-up Tasha Reiko Brown for CHANEL.
Set design NU CALIFORNIA.
Photography assistance Collin Smith, Sabrina Victoria and Austin Withers.
Styling assistance Katie Chavez and Amontae Arnold.
Special thanks to BLUSH STUDIOS.
Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING.

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