新進気鋭のデジタルアーティストにフォーカスしたプロジェクト〈Global Gallery〉

タイムズスクエアから渋谷のスクランブル交差点まで、世界中の大都市のデジタル屋外広告を、気鋭のアーティストの作品がジャックする。

by Ryan White; translated by Nozomi Otaki
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09 November 2021, 9:56am

専門家でなかったとしても、アートの消費のあり方が急速に変化していることは、誰の目にも明らかだ。デジタルアート、仮想現実(VR)やオルタナティブリアリティ、拡張現実(AR)は、視覚的コミニュケーションに斬新でワクワクする次元をもたらし、なかにはまだ生まれたばかりの技術もあるが、それらはカメラの発明と同様、アートの世界を根底から揺るがす可能性を秘めている。マリーナ・アブラモヴィッチ、オラファー・エリアソン、KAWSはVRヘッドセットを用いて展示を行い、アイ・ウェイウェイ(艾未未)はピカデリーサーカスで新たなヴァーチャル作品を披露。ジェフ・クーンズはSnapchatとパートナーシップを結んだ。アート界の有力者は変わりつつあり、パンデミックはデジタルの未来のより明らかなヴィジョンを描き出した。しかし、もっと重要なのは、この変化は次の世代にどのような影響をもたらすのか、ということだ。

ポルシェとKönig Galerieのコラボレーションによるグルーバルプロジェクト〈Global Gallery〉は、ギャラリーの外で気鋭のデジタルアートを体験する革新的な方法を推し進めながら、この疑問に対する答えを探ろうとしている。10月9日にローンチされた本プロジェクトで、ポルシェは11人の新進気鋭のアーティストとタッグを組んだ。

その作品は、複数都市の世界最大級のデジタル屋外広告で披露される予定だ。つまり、今年12月5日までは、街なかで顔を上げれば普段は広告が掲載される場所で作品を鑑賞できるというわけだ(10月9日には、ニューヨークのタイムズスクエア、渋谷のスクランブル交差点、マドリードのカジャオ広場で1時間の作品が放映。いまだかつてない規模の展示だ)。大音量の派手な映像が目を引くこれらの場所で、Global Galleryはより考え抜かれた(そしてコンセプチュアルな)作品を通行人に提示し、従来の広告は最先端のテクノロジーに取って代わられる。

アーティストのジョン・ヨウイ、オーリア・ハーヴェイ、ベン・エリオット、ニコール・ルッジェーロ、アンディ・ピッチ、ヨナス・ランド、kennedy+swan、Banz & Bowinkel、Junuwana、ジョン・バーガーマン、マニュエル・ロスナーは、ポルシェが新進気鋭のデジタルアーティストに唯一無二でパワフルな舞台を提供するプロジェクトの一環として、このインスタレーションのためだけに作品を制作した。

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Andy Picci

これらの作品は、単に鑑賞できるだけではない。オープンNFTによって購入も可能だ(従来のNFTとは異なり、数に制限はないが、利用できるのは8週間のみ)。路上のスクリーンからアクセスでき、100ユーロ(約1万3000円)から購入できる。昨年まではNFTという言葉はあまり知られておらず、その意味を理解しているひとも少なかった。実際、仮想通貨とブロックチェーンの仕組みや、この言葉がアートの購買にこれほど早く浸透した理由については、いまだに頭を悩ませているひとがほとんどだろう。バス・グラスメイヤーは今年3月、i-Dの記事で次のように述べた。「1年前、デジタル画像を数千ドルで売るということは、不可能ではないにしろ、常軌を逸していると思われていた。しかし、それこそが今起こっていることなのだ」

ひとつ確かなのは、NFTに秘められたポジティブな影響だけだ。Artpriceの報告書によれば、昨年の現代アートの落札総額は、NFTの後押しもあり、史上最高の27億ドル(約3000億円)に達した。デジタルの世界で活動するアーティスト、特に名を上げようとしている駆け出しのアーティストにとっては、この売上が命綱になる可能性もある。さらに、これまで疎外されていたオーディエンスに向けてアートの世界の扉が開かれるかもしれない。

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John Yuyi

「これを見て、みんなが立ち止まってくれるといいですね」と語るのは「物理空間と仮想空間をつなぐ」シミュレーションやオブジェクトを制作するデジタルスカルプター、オーリア・ハーヴェイだ。彼女はこのプロジェクトのために自らの頭をスキャンし、「美しさと死を思い出させる」彫刻作品に変身させた。i-Dが〈アート界のウィリー・ウォンカ〉と称した台北出身のデジタルアーティスト、ジョン・ヨウイによれば、彼女の作品は、SNSのロゴを顔に貼り付けた代表作『Face Post』(彼女が制作したFacebookのファンページが2000人のファンを獲得したことから着想)に基づくものだという。Global Galleryに寄せた作品も同様に挑戦的で、片目にはiPhoneのカメラを付け、反対側にはInstagramの〈sensitive content(センシティブな内容を含むコンテンツ)〉という警告を書き、私たちの生活に蔓延するコンテンツを表現した。

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Jonas Lund

ベン・エリオットも最先端テクノロジーやそれが形づくる新たな世界にインスピレーションを見出すと同時に、SNSの普及や、それが提示する新たな美の基準に疑問を呈している。「僕にはアバターがあります」とベンは語る。「セルフィーを売っていて、自分の仮想通貨も持っています」。ベンは自らの作品から「新しい生活を送るエネルギーをもらってほしい」と語る。Global Galleryに出品した作品では、美化フィルターと頬に描かれた炎でそれを表現した。

アンディ・ピッチの作品は「超デジタル化の時代におけるセレブを取り巻く事象やアイデンティティの研究」を中心に展開している。同時に、彼の作品は、私たちは自分のプライベートを親しい人びとよりも見知らぬ他人とのほうが共有しやすいのではないか、という彼の疑惑を表現したものでもある。アンディによると、今回のチャンスは、批評家に自身の作品を「アートではない」と一蹴されたあと、アートの世界における自らの居場所を再確認させてくれたという。

アーティストのヨナス・ランドは、「ポルシェはアーティストに特定の分野での制作を実現し、より多くのオーディエンスにリーチし、プラットフォームを獲得させてくれる」と語る。これらのアーティストのより詳細なプロフィールや、Global Galleryの作品の購入については、MISA.ART/GGをチェックしよう。

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Jon Burgerman
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Auriea Harvey
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Banz & Bowinkel
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Junuwana
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kennedy+swan
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Ben Elliot
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Manuel Rossner
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Nicole Ruggiero
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