All clothing and accessories (worn throughout) Feben. Shoes Feben x Ugo Paulon.

最優先するのはコミュニティ──気鋭のデザイナー、フィーベンが語る創作と他者への思いやり

新人ながらビヨンセの衣装を手がけ、大きな話題を呼んだデザイナー、フィーベン。彼女がパンデミック下に思いついたという社会に貢献する方法や、作品の根底にある想いを明かす。

by Mahoro Seward; translated by Nozomi Otaki
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08 April 2021, 7:00am

All clothing and accessories (worn throughout) Feben. Shoes Feben x Ugo Paulon.

これまでのファッションシューティングのクレジットを見れば、何の疑いもなく鵜呑みにされているイメージ制作のヒエラルキーのトップは、ある3つの職業が独占していることがわかる。それはフォトグラファー、スタイリスト、デザイナーだ。

この3人の役割が必要不可欠であることに誰も異論はないだろうが、むやみやたらにその才能を持てはやす風潮は、イメージ制作に携わる高い技術を持つ多くの人びとの貢献を覆い隠してしまう可能性もある。彼らがいなければ、最終的なイメージは私たちが目にする素晴らしいイメージの劣化コピーになっていたのかもしれないにもかかわらずだ。

「雑誌には素晴らしいシューティングが載っているけれど、それに貢献したすべての人びとの作品の美しさが取り上げられているとは限らない」とロンドンを拠点とする若きデザイナー、フィーベンは語る。

だからこそ、彼女は自らがスタイリングとクリエイティブディレクションを手がけ、ジョイス・ウンが撮影した今号のプロジェクト〈Face Me〉でパラダイムシフトに挑み、「人びとの芸術的才能にスポットライトを当て、それを本当の意味で引き出した」という。

フィーベンのデザインやクリエイティブなヴィジョンでは、どちらかといえばインパクトが強調されがちだが、今回の撮影の狙いは、ヘアスタイリストのヴァージニー・モレイラ、メイクアップアーティストのアミー・ドラマ、ネイリストのシルヴィ・マクミラン、セットデザイナーのドーラ・ミラー、プロデューサーのヤッサー・アビュベッカーなど、彼女自身が所属するロンドンのクリエイティブ・コミュニティの一流の仕事に、公平に焦点を当てることだった。

フィーベンがこの業界で初めて関心を集めたのは今からまだ1年前、セントラル・セント・マーチンズ校ウィメンズウェア修士課程の卒業コレクション〈It’s Not Right, But It’s OK〉を発表したときだった。

自身のようなアフリカ系の女性の体を排除してきたファッション業界の戦略を風刺、抗議し、服に政治的なメッセージを込める手腕によって瞬く間に注目を集めたフィーベン。平壌に生まれた彼女は、スウェーデンでエチオピア人の母親に育てられ、18歳のときロンドン・カレッジ・オブ・ファッションで学ぶためにロンドンに引っ越す。

多様な文化に根ざすアイデンティティから生み出されるフィーベンの服は、彼女が身を置いてきたさまざまな環境で歩んできた波乱万丈な道のりの、どこか非現実感すら漂う物語を提示している。例えば、ヒップの部分が広がり、バストを強調したデザインのスーツ。

ストレッチの効いたメッシュ生地にスーツの絵がプリントされたワンサイズのトップスもある。これらの斬新なデザインを通して、彼女はスーツというアイテムが長年ステータスにしてきた、痩せた白人の体を理想とするイメージを覆した。

ロンドンの学校のアトリエを去った直後にパンデミックが到来するも、この1年で彼女はますますパワーアップした。ビヨンセがアフリカ系の女性の美しさを讃える「BROWN SKIN GIRL」のMVで着用した豪奢なロングドレスのデザインとスタイリングを手がけ、その他にもエリカ・バドゥ、ジャネール・モネイ、ミカエラ・コールなどが彼女のアイテムを着用している。

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フィーベンの卒業コレクションを知っているなら、なかでも一際目を引いた、胸を覆うアクアマリンのパッドと麦わら色のフードの付いたフューシャピンクのキャンバス地のボリューミーなドレスを覚えているだろう。数歩離れたところから眺めると、パーツの配置がずれた人の顔のようにも見える。

 その他には、ニーナ・シモーンのヌードがプリントされたタイトなドレス、故郷のエチオピアからスウェーデンに到着したばかりの母親の写真をビーズで再現したバッグなどのアイテムが揃う。

 このように文字通り顔と体を表象することで、ファッションの対話から排除されがちな人びとの居場所を創り出す揺るぎない、パンキッシュな戦略は、彼女の作品のトレードマークとなった。

 フィーベンの創作へのアプローチが時流に沿っている、という表現は、100%正確とはいえない。むしろ、彼女の作品は、昨年私たちが散々議論していた〈未来〉をテーマとしている。ファッション業界がより多くのコミュニティに配慮するべく考えを改めるなか、フィーベンの創作の核にある哲学は、誰もが向かうべき方向性を示す道しるべとなっている。

 昨年9月、彼女はメタリック・ファンド(Metallic Fund)の5人の受給者のひとりに選ばれた。メタリック・ファンドは、英国を拠点とするメタリック社のグレース・ラドージャとアレックス・ソッサが次世代のアフリカ系クリエイター育成のために立ち上げた助成金・メンターシッププログラム。フィーベンがi-Dのファッション・ディレクター、カルロス・ナザリオと知り合ったのもこのプログラムがきっかけで、今回の特集で彼女のヴィジョンが実現するに至った。

「こんなふうに自分を信頼してくれる人はなかなかいない」とフィーベンは語る。「新たなアーティストや働き方をサポートすることはすごく大切。彼の励ましには心から感謝してる」

 
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サポートは持ちつ持たれつであるべきというのは周知の事実だが、リソースが限られている若いフリーのデザイナーがアイデアを実行に移すのは難しい場合もある。

しかし昨年の夏、ブラック・ライヴズ・マター運動の高まりのなかで、フィーベンは小規模ながら、自身の仕事が社会に役立つことを証明した。彼女はフォトグラファーのデクスター・ランダーとのコラボレーションでTシャツをデザインし、その収益は英国を拠点にアフリカ系の人びとにメンタルヘルス支援を行う慈善団体〈Black Minds Matter〉に全額寄付された。

「私はあくまでもデザイナー、アーティストで、医者じゃない。ドレスを作って世界を救うことはできない」とフィーベンはいう。

「でも、私にだって起こせる変化はある。パンデミックに誰かの力になれる色んな方法を思いついたの。しかも、ほんの小さなアクションでね。誰かの1日を変えたり、笑顔にすることができたとしたら、それで十分。あなたのおかげで誰かが無料のセラピーを受けられたらもっといい。お金のない私にできるんだから、大企業にできないわけがない」

もちろん、彼女は利他的だからといって、ビジネスの拡大に無関心というわけではない。この記事が公開される頃には、本記事にも掲載されている新たなアイテムを加えた卒業コレクションの復刻版が、業界を牽引するインディペンデントデザイナーを擁するカナダの通販サイトSSENSEで発売されているはずだ。

 この先もさらなる成長が期待され、そこには必然的に妥協も伴うだろうが、彼女の作品の根底にある他者への思いやりは変わらない。「これからもずっと大切にし続けるものだと思う」と彼女は断言する。

 「いろいろと状況は変わるだろうけど、自分に合わないものにははっきりノーと言えることが大事。大切なのは自分がどんな人間なのか、何を支持するのか、ということだから」

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Credits


Photography Joyce NG
Creative direction and styling Feben

Hair Virginie Moreira at MA+World Group using Oribe.
Make-up Ammy Drammeh at Bryant Artists using Mac Cosmetics.
Nail technician Sylvie Macmillan at MA+World Group using Chanel.
Set design Dora Miller.
Photography assistance Matt Kelly, Víctor Paré and Adela Campbell.
Styling assistance Eduardo Veloso Moreira.
Hair assistance Alisha Ferguson-Adu.
Make-up assistance Quelle Bester.
Set design assistance Jess Griffin and Lucy Barsegian.
Production Yasser Abubeker.
Retouching Midnight Studio.
Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING.
Casting assistance Alexandra Antonova
Models AJ Yel and Akoul Den at Milk. Jay Jay Bol at Wilhelmina. Azita Thanigasalam.

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Fashion
emerging designers