Collage of photography by Ivan Ruberto

16歳の環境アクティビストによる、2021年の気候危機マニフェスト

英国の環境アクティビスト、スカーレット・ウェストブルックが、コロナ禍に蔓延する絶望をいかに乗り越えるのか、そして今起こすべきアクションについて語る。

by Scarlett Westbrook; translated by Nozomi Otaki
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18 March 2021, 3:41am

Collage of photography by Ivan Ruberto

ほとんどの学生にとって、2020年は何もかもがオンラインで行われ、家に引きこもる生活を強いられた1年だったはずだ。でも、私にとって、自分が外の世界と切り離される体験は、これが2度目だった。

 13歳のとき、私は人付き合いを犠牲にして部屋に閉じこもり、Aレベルテスト(※英国の公立大学進学のための統一試験)に向けてひたすら勉強していた。7ヶ月間独学で勉強を続け、2018年には最年少で政治学のAレベル資格を取得した。

この資格をもとに、気候変動アクティビストとして活動するための基盤をつくるために気候・教育政策を専攻した。友達がZoomに頼る生活を送るようになったのはつい最近のことだけれど、私はこの2年、学校ストライキから活動方針まで、あらゆることを決めるために延々とオンラインミーティングを繰り返してきた。



試験への不安や、絶え間なく襲ってくる死別や孤独に苛まれる世界では、すぐに絶望感に呑まれてしまう。今、そんな空気が国中に広がっている。でも、必ずしも絶望する必要はない。

そして16歳になった今、私はまた友達に会えなくなり、寝室もAレベルの教室へと逆戻りした。唯一違うのは、その原因が世界的なパンデミックであるということだ。

 今の生活の大部分が、まるでパンデミック前の生活のパロディみたいになってしまったいっぽうで(オンラインのダンスレッスンは一度は体験してみるべき!)、ほとんど影響を受けなかったのは気候変動を訴える活動だった。大勢でのストライキやデモで直接訴えかけたりはできないかもしれないが、若者の活動はこれまでもずっとオンラインで展開されてきた。Slackや数え切れないほどのグループチャット、電波も音質もお粗末なZoomなど、今の学生の〈日常〉になったツールを長年使ってきたのだ。試験への不安や、絶え間なく襲ってくる死別や孤独に苛まれる世界では、すぐに絶望感に呑まれてしまう。今、そんな空気が国中に広がっている。でも、必ずしも絶望する必要はない。

 今の悲惨な現状は、無能な政府のせいだ。そしてこんな状況は、決して不可避なものではなかったはずだ。パンデミックがこれほどまで拡大してしまったこと、それに伴う問題の原因は、すべて搾取的なシステムと、気候危機に拍車をかけている政府にある。新型コロナウイルスのパンデミックと差し迫った気候危機には、ある共通点がある。それは企業の欲望と政府の愚かさによって引き起こされ、人びとを抑圧する不平等によって助長しているということ。私たちが学校で気候危機の人道的影響について学ぶ機会を奪われているという事実と相まって、みんなが無力感を覚えているのも無理はない。この気持ちと向き合うために必要な知識が、私たちから隠されているのだから。

 短期的な利潤を追求する政府によって私たちの未来が犠牲にされている今こそ、力は国会だけのものでなく、コミュニティや大衆のなかにもあるのだということを思い出さなければいけない。

特に立ち直る強靱さも体力も兼ね備えている若者には、パワーが有り余るほどある。私たちは大人になる前に、不景気、緊縮財政、世界的なパンデミック、試験制度の改悪を経験した世代。そんな私たちが、世界の数十万人の人びとを動かしたのだ。しかも、これはほんの始まりに過ぎない。私たちはこれからも成長を続け、今まで以上に懸命に闘い、まだ発見していないパワーも活用できるようになるはずだ。


今こそ教育制度のあらゆる側面に気候正義を取り入れ、理科3科目や地理などの選択科目ではなく、GCSEからAレベル、BTEC(※国家職業資格)から実習まで、あらゆる段階のすべての科目で教えるべきだ。

 気候危機との闘いとは、単に地球温暖化に立ち向かうだけではなく、それを永続させてきた資本主義体制を打ち壊すことだ。あらゆる不平等との闘いが、すべて気候正義への一歩となる。

 これらの問題に包括的に取り組むには、〈グリーン・ニューディール〉とも呼ばれるグリーン産業革命(Green Industrial Revolution)を推し進めていく必要がある。グリーン・ニューディールとは、化石燃料の使用を段階的に減らし、同時に今の社会に存在する格差を解消するための、政府による10年間の計画。さらに、脅かされている動植物の生息地を守り、元の状態に戻し、環境に優しく高賃金で安全な仕事を生み出し、根本的な気候正義の実現を目指すものだ。

 グリーン・ニューディールは、労働党の2019年のグリーン産業革命マニフェストなど、これまでの英国にも何らかの形で存在していた。でも、このような政策は、世界のどの国でも法律として定められてはいない。世界のリーダーたち、特にバイデン大統領はグリーンウォッシング(※見せかけだけの環境保護への取り組み)のためにグリーン・ニューディールという言葉を利用してきたが、まだまだ実現にはほど遠い。だからこそ、私たちは今まで以上に必死に闘う必要がある。

 それだけでなく、今は教育改革の時代でもある。私は幼稚園からAレベルまで、あらゆる教育制度を体験してきた。GCSE(※英国の義務教育修了試験)の地理の授業では気候変動による〈メリット〉を列挙させられたが、気候危機の人道的影響や、その原因となる政治制度について教わったことは一度もない。

 今必要な教育制度とは、強靱な社会を築くために、気候危機の避けては通れない影響に向き合い、できるだけその影響を軽減させる努力をするために必要な知識、技術、リソースを与えてくれるものだ。

 今こそ教育制度のあらゆる側面に気候正義を取り入れ、理科3科目や地理などの選択科目ではなく、GCSEからAレベル、BTEC(※国家職業資格)から実習まで、あらゆる段階のすべての科目で教えるべきだ。さらに、有色人種や社会経済的に地位の低い人びとほど教育へのアクセスを制限されやすいという現状を打破し、豊かな暮らしができる特権のある人だけでなく、誰もが活用できる教育制度をつくらなければいけない。

 そのために立ち上げられたのが〈Teach the Future〉というキャンペーンだ。下院議員へのメールや署名運動などを通して、簡単に参加できる。オンラインでの活動は、今までもこれからも変わらない。本当の力はコミュニティ、助け合い、希望の中にある。関心を示して新自由主義に抗うことで、気候変動に抵抗することができるのだ。

 あなたの声を届けたり、不正に立ち向かう方法は数え切れないほどある。今の教育制度では教わらない気候危機の知識を学んだり、オンラインデモやワークショップに参加したり、下院議員や大臣に陳述書を送るなど、可能性は無限大だ。オンラインでの取り組みは初めてだというひともいるかもしれないが、これは若い気候変動アクティビストたちが長年続けてきたことだ。オンラインでの活動を続けていけば、私たちはさらに影響力を強められるはずだ。

 新自由主義は私たちを絶望の淵に突き落とそうとしているが、希望に勝る抵抗はない。

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