Photography @mitchell_sams

i-Dが選ぶ、パリ・ファッションウィーク19AWで見逃せない6ブランド

Thom Browneのレズビアン・アイコンから、環境問題に立ち向かうStella McCartneyの戦士まで。

by Osman Ahmed; translated by Ai Nakayama
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12 March 2019, 12:15pm

Photography @mitchell_sams

Vivienne Westwood:服による服のための主張
ロンドン・ファッションウィークでのVivienne Westwoodは、単にファッションを披露するのではなく、環境問題を声高に訴えるショーを展開。いっぽう、パリでのAndreas Kronthaler for Vivienne Westwoodのショーの主役は、見事な服それ自体だった。アンドレアス・クロンターラーは、スヌード付きのドレープドレス、誇張された広い肩が特徴のミリタリージャケット、立体的なボディスにつながるコルセット、強めのエッジが効いたテカテカのフローラル生地など、Vivienne Westwoodの規範に則りながらも新たなアイテムを提案した。

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Stella McCartney:環境問題に取り組む戦士のためのワードローブ
Stella McCartneyといえば、サステイナビリティを重んじるブランドとして名高いが、今回のコレクションでは、過去に例を見ないほどにサステイナビリティにフォーカスしていた。ステラがスポットライトを当てたのは、インドネシアのルセル・エコシステム森林保護区。500種以上の動物が生息していながら、パーム油製造、森林伐採、製紙業のため危機に瀕している場所だ(1億5000万本のうち多くの木が、布を作るために毎年伐採されている)。Stella McCartneyが立ち上げたハッシュタグ〈#ThereSheGrows〉では、誰かに木を1本プレゼントすると、ランウェイにそのひとの名前が刻まれる、というキャンペーンだ。コレクションアイテムで際立っていたのは、空手の帯やドレープシルエットだが、ステラ本人によると、1960年代に英国北部で生まれたムーブメントの〈ノーザンソウル〉から影響を受けたそうだ。スウェーデンの認証された森林から調達されたサステイナブルビスコース、オーガニックコットン、エコキャンバスのほか、過去のコレクションで登場した生地が用いられているアイテムも多数。ブルックリン出身のラッパー、Leikeli47の「Post That」をBGMにしたショーには、エコファッションに絶対的に必要な、強力なエネルギーがはっきりと現れていた。

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Noir Kei Ninomiya:バラは赤いだけじゃない
日本人デザイナー、二宮啓は、少人数のチームで、しかも全てを手作業で制作しているとは思えないほどに卓越した、素材の魔術師だ。東信の手がけたフローラルヘッドピースを着けたモデルたちがランウェイを歩くと、赤いバラの甘い香りが会場中に漂う。ハニカム構造のアイテムは、縫製ではなく結んだり編んだりして生地を組み合わせるステッチレス技術の賜物で、ドラマティックなシェイプが印象的。上半身はライダースジャケット、下半身はカゴのような形のスカートへと流れるハイブリットなドレスや、みたこともない立体的な形のドレスやテーラードアイテムが次々と現れた。Comme des Garçonsファミリーの一員で、川久保玲の精神を受け継いでいる二宮啓は、自らの見事な才能を存分に発揮し続けている。彼が自分の名を冠したブランドを持つことになったのも納得だ。

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Thom Browne:レズビアンアイコンへのオマージュ
グレーのデスク、デスクライト、タイプライター。よくあるオフィスの風景が、Thom Browneのショーの舞台。会場はエコール・デ・ボザール。各デスクの上には、20世紀初頭の文壇で活躍したレズビアン、ユナ・トルブリッジ(レディ・トルブリッジ)の写真が入ったフォトフレームが置かれていた。レディ・トルブリッジは作家ラドクリフ・ホールのパートナーで、英国版『Vogue』の編集長を務めたドロシー・トッドと同じレズビアンコミュニティの一員(ちなみにこのレズビアンシーン活発化の一翼を担ったのはマレーネ・ディートリッヒ)。彼女たちのユニフォームは、片眼鏡とパンツスーツ。レディ・トルブリッジのイメージは、トム・ブラウンのシグネチャーである見事なテーラードスーツ、テーラードコートと共鳴し、今回のコレクションに一貫して登場するモチーフとなった。最初は、一様に同じ格好をしたモデルたちが席に着きタイピングをしていたがが、徐々に、刺繍入りのゴールドコート、トロンプルイユのブークレスーツなどで華やかになっていった。ダックスフンドが好きだったレディ・トルブリッジに捧げる、イヌ型のハンドバックも。

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Kwaidan Editions:地下のファーストショー
Balenciaga、Céline、Rick Owens、Diorで経験を積み、ファッション界の純血種といって差し支えないキャリアを誇るレア・ディックリーとハン・ラーが立ち上げた新ブランド、Kwaidan Editions。彼らのデビューとなる今回のショーは、何か新しいものがみられるだろう、という大きな期待が寄せられていた。そんなふたりが選んだ会場は、パリの地下駐車場。パープルのカーペットが敷かれ、席は設けられておらず、低音強めの自立式スピーカーからはアラン・ヴェガの曲が流れている。ファーストショーにあたって、ふたりはこう自問自答した。「プロとなるには?」「女性となるには?」「真面目に受け取ってもらうには?」。そして導き出した答えはシャープネスの追求だった。完璧な流線形のテーラリング、オールドスクールなバゲットバッグ、レイヴパーティのフライヤーを思わせるスワールプリント、ファンキーなイエローのゼブラ柄、ラバーを張ったレザーコートが印象的だった。

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Lacoste:新たな方向性へと導くルイーズ・トロッター
ルイーズ・トロッターのLacosteデビューコレクションは、フェデラーが打つテニスボールのようにパワフルだった。会場はテニスクラブ・ドゥ・パリで、グラスコートを思わせるグリーンのランウェイ。彼女はかつて、英国ブランドのJosephのクリエイティブディレクターとしてブランドを刷新し、スマートで個性的なワードローブを提示した。Lacosteでも、定番アイテムにルイーズ流のひねりが加えられていた。ポロシャツはストライプニットの襟で新鮮な魅力を放ち、ツインセット風のレイヤードスタイリングで登場。ポロシャツから着想を得たオーバーサイズジャージーも。テニススカートはボックスプリーツがあしらわれたチュニックやエプロンになり、ワイドパンツと合わせられていた。もちろん、Lacosteを象徴するクロコダイルは、総柄、派手なパッチワーク、ほぼ全てのルックに合わせられていたベースボールキャップのモノグラムなど、様々な形で使用されていた。

This article originally appeared on i-D UK.