2016年カンヌ国際映画祭で見るべき映画10本

クリステン・スチュワートやリリー・ローズ・デップを始めとするパワフルな女優たち、監督陣にウディ・アレン、グザヴィエ・ドラン、オリヴィエ・アサイヤス、ペドロ・アルモドバル……と豪華な面子が並ぶ。

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13 maj 2016, 5:14am

the neon demon

5月11日から開催されている第69回カンヌ国際映画祭。今年も、レッドカーペットは国際的な名匠監督やハリウッド勢で埋め尽くされている。ベルギーのダルデンヌ兄弟やスペインのペドロ・アルモドバルなど、ヨーロッパからの常連がコンペティション部門に帰ってきたことに加え、他の部門では、スティーヴン・スピルバーグの『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』や、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ジャック・オコネルが出演するジョディ・フォスター監督作品の『マネーモンスター』などが上演される。また、それぞれ出展作品2本の出演を果たしているマリオン・コティヤールとクリステン・スチュワートも参加。5月22日までの開催期間中、カンヌには世界各国から映画出演者だけでなくカメラの後ろで映画界に貢献する才能たちも多く集うこととなる。今回、i-Dは出展されている中から特に注目すべき10本を選んだ。

American Honey』 アンドレア・アーノルド監督
アンドレア・アーノルドは、2006年に長編映画デビュー作『Red Road』で、3年後の2009年に再び『フィッシュ・タンク』でカンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞している。今年は、アメリカで撮影した『American Honey』でカンヌに戻ってきた。今作は、ティーンエイジャーの少女と道中で雑誌定期購読の勧誘のため家々を訪問する人々との出会いを描いたロードムービー。風変わりな設定のようだが、アーノルドの社会的リアリズムの手法により、とても現実味のある仕上がりになっている。『フィッシュ・タンク』で無名のケイティ・ジャーヴィスを起用して絶賛を浴びたアーノルドだが、本作でも悩めるティーンの主人公役に無名のサーシャ・レイン(Sasha Lane)を起用し、シャイア・ラブーフとライリー・キーオが脇を固めている。

The Neon Demon』 ニコラス・ウィンディング・レフン監督
美に激しく執着するLA市民たちに追われる若いモデルを描いた『The Neon Demon』。予告編映像を見る限り、ハイエンドのファッション広告キャンペーン並みの豪華さが際立つ。しかし、『Drive』で完成され、『Only God Forgives』ではさらなる実験を重ねたレフン監督のトレードマークとも言える独特のスタイルが、今作ではあますところなく発揮されている。エル・ファニングが天使のような新人モデルの主人公を演じ、クリスティーナ・ヘンドリックス、アビー・リー、ベラ・ヒースコート、ジェナ・マローンらと共にこのホラーストーリーを描いていく。

Café Society』 ウディ・アレン監督
今年のカンヌ国際映画祭オープニング作品は、30年代のハリウッドを舞台に男女の求愛を描いたウディ・アレンのコメディ映画となった。映画業界のシステムを面白おかしく茶化しながらも、ロマンチックな恋愛につきものの"しくじり"の数々をウィットと共に描いている(コーエン兄弟の『ヘイル、シーザー!』に似ていなくもない世界観)。この映画最大の魅力のひとつは、まずそのキャスティングにあるだろう。グレッグ・モットーラ監督作品『アドベンチャーランドへようこそ』(2009)で共演していたクリステン・スチュワートとジェシー・アイゼンバーグが今作では不運のカップルを演じ、ブレイク・ライブリーが恋を邪魔するグラマラスな女性として出演、スティーヴ・カレルがハリウッドの大物エージェントを演じている。

Rester Vertical』 アラン・ギロディ監督
ゲイの出会いと性の渇きを描いた『湖の見知らぬ男』が、2013年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で波紋を呼んだアラン・ギロディ監督だが、今年はコンペティション部門へのステップアップを果たした。『Rester Vertical』は、ある羊飼いの女性との出会いによって自身の芸術も人生も大きく変えられてしまう、ある映画監督の物語。ギロディ監督の作品であるからには、風変わりなサプライズに満ちた映画となること間違いなしだ。

Toni Erdmann』 マレン・アデ監督

もうひとり、現在の映画界で期待が高まる監督・脚本家に、2009年のベルリン国際映画祭に出展した『Gigante』が銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞したドイツのマレン・アデがいる。アデにとって、今回のカンヌ国際映画祭コンペティション部門出展は3度目となる。仕事ばかりでつまらない人生を送っている娘の今後を案じた父親−−"一度はつながりをなくした娘を、明るく朗らかな女性へと変えていこうと、数々のいたずらを仕掛けて、再び娘の人生に関わっていく父親"というストーリー以外、『Toni Erdmann』に関する情報はほとんど明らかになっていない。

Julieta』 ペドロ・アルモドバル監督
長きにわたりカンヌお気に入り映画監督の1人として、数々の作品を世に送り出してきたペドロ・アルモドバル。スペインの経済危機を笑いとともに描いたコメディ作品『アイム・ソー・エキサイテッド!』(2013)はカンヌへの出展が叶わなかっただけに、今回のコンペティション復帰を誰もが喜んでいることだろう。今作『Julieta』でアルモドバルは、よりシリアスで実質的な手法で、アリス・マンロー原作の短編小説3作をベースに物語を紡いでいる。何の説明もなく姿を消した娘と、その娘の帰りを待つ未亡人の物語を、存在感溢れる女優たちを多く起用して描いている。

Personal Shopper』 オリヴィエ・アサヤス監督
『トワイライト』の大ヒット以来、クリステン・スチュワートは自分で出演作を決められるようになった。奥深く知性溢れる脚本を映画化するべく、彼女はこの権力を有効に活用している。この戦略は功を奏しているようで、今年はケリー・ライヒャルト監督作品『Certain Women』への主演を果たし、また『アクトレス』(2014)での演技が評価されて、フランス映画界最高の栄誉とされるセザール賞を受賞するなどしている。今作『Personal Shopper』で、クリステンは『アクトレス』のオリヴィエ・アサヤス監督と再びタッグを組み、パリファッションの悪の世界を描いた超常的友情ストーリー作品を創り出しているようだ。

Juste la fin du monde (It's Only the End of the World)』 グザヴィエ・ドラン監督
10代でカンヌの常連となったグザヴィエ・ドランは、2014年に『Mommy/マミー』でカンヌ審査員賞を受賞した。今年27歳となる彼は、ジャン=リュック・ラガルス著の戯曲を映画化した今作で、迫る死を家族に告白するべく12年の空白を経て実家を訪れる作家の物語を描いている。『Mommy』と比べ重苦しいトーンで描かれている本作だが、マリオン・コティヤールやレア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル、ナタリー・バイ、そしてギャスパー・ウリエルなど豪華スターが軒並み出演していることに、彼の人気のほどが伺える。

Voir Du Pays (The Stopover)』 デルフィーヌ&ミュリエル・クラン監督
カメラの前でも後ろでも、女性の扱われ方に関して今年のカンヌには厳しい視線が注がれている(コンペティション部門で上映される全作品のうち、女性監督による作品は3作にとどまっている)。だからこそ、クラン姉妹が2作目となる本作でカンヌに復帰したことは喜ばしい出来事といえるだろう。アフガニスタンでの任務を終えたフランス軍女性兵士ふたりが、社会復帰に際し心と体を整えるためキプロスで3日間の休暇を与えられるが、戦争で垣間見た暴力を忘れることは容易ではない—デルフィーヌ・ドゥ・ヴィガンによる同名の小説を映画化した作品。

The Dancer』 ステファニー・ディ・ジュースト監督
Voir Dy Pays』の主演女優のひとりは、ゴシップ好きなら"クリステン・スチュワートと親しい仲"として認識しているかもしれない、フランス人ミュージシャンのソコ(Soko)。そのソコが、このジュースト監督デビュー作『The Dancer』でも主役を務めている。今作は、19世紀末にダンスをアートにまで押し上げたことで知られる実在のパフォーマー、ロイ・フラーが、リリー・ローズ・デップ演じるイサドラ・ダンカンと出会い、転落していく様を描いた作品だ。

Credits


Text Colin Crummy
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.