「アメリカ勢の参戦」:2017年秋冬オートクチュール、初日

2017年秋冬オートクチュールの初日、Proenza SchoulerとRodarteがパリでは初となるプレタポルテ・コレクションを発表。続いてHermesとMiu Miuがクルーズ・コレクションを発表し、オートクチュール界に揺さぶりをかけた。

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jul 19 2017, 6:43am

Rodarte spring/summer 18

This article was originally published by i-D UK.

「つまり、これはオートクチュールなのだろうか?」——この「オートクチュール」を「芸術」に置き換えて考えてみてほしい。それこそは、ファッション界が長きにわたり自問してきた問題だ。2017年秋冬オートクチュールの初日、ファッション界は、そこに存在し続けてきたファッションのルールと規範について自問せずにいられなかった。いまのアメリカを代表する2つのブランド、Proenza SchoulerとRodarteがパリ・オートクチュールのスケジュールに合わせてショーを行なうべく、パリへとやってきた。「クチュール」の定義が揺らいだのだ。とはいえ、パリ・クチュール組合によって決められた、「ひとつひとつの服に規定以上の時間が費やされていなければならない」「メゾンはパリを拠点に活動を展開していなければならない」などのルールに疑問が突きつけられたのは、これが初めてのことではない。昨シーズンではVetementsがプレタポルテ・コレクションをオートクチュールの日程にぶつけて開催した。「ふつう、ショーの最中は何も食べないわ。だけど今回は、"さあ、ディナーの時間よ!"とでも言いだしそうな雰囲気だった。人間的だった、とでもいうべきかしら」と、Rodarteのデザイナー、ローラ・マレヴィは、パリでの初となるショーの後に語った。「楽しくてワクワクして、すべてが素晴らしかった。ご飯まで楽しかった」。言っていることは、パリを楽しむ観光客そのものだ。ファッションの都パリは、これまでも常に外国からのお友達を寛大に受け入れてきた。それはオートクチュールでも同じだ(Ralph Rucciを受け入れた過去もある)。

Proenza Schouler spring/summer 18

しかし、そのときと今回では明確な違いがある。Ralph Rucciがオートクチュールであったのに対し、RodarteとProenza Schoulerが発表したのは(少なくとも資料によると)、プレタポルテのコレクションだった。それとも、彼女たちが作っていたのはプレタポルテ(既製服)ではなかったのだろうか? 「パリまで来て挑戦しないわけがない。"舞台的になりすぎず、それでいてロマンチック"という、わたしたちの世界観は保ちながら、クチュールの歴史や、それを築きあげてきたメゾンたちへ敬意を払うようなものを作りたい」とローラ・マレヴィは説明する。「それをわたしたちなりのやり方でやっていこうと思うの」。その言葉どおり、Rodarteは軽やかさを体現したようなドレスのスタイリングにカスミソウの花をふんだんに使い、結婚情報誌の世界観も真っ青といった素晴らしいショーを行なった。会場となったのは、ポール・ロワイヤル修道院。かつてそこを実際に歩き回っていた17世紀の修道女たちもRodarteのフリルや、そこに表現された無垢の精神をもって、卑猥にも見えうるレザーの服や、そこに覗くお腹なども許してしまったことだろう。厳密なルールに照らし合わせたならば、それはクチュールではない。しかし、マルヴィー姉妹が作りあげたものはオートクチュールをなす重要な構成要素である「高級(オート)」に溢れていた。Proenza Schoulerもまた、Rodarteとはまったく違う世界観をもってではあるものの、オートクチュールの要素を含むコレクションを発表していた。

Hermès Resort 2018

強く打ち出されていたのはシェイプだった。オートクチュールでよく見られるような、考え抜かれた複雑なシェイプが多く登場した。それはクリストバル・バレンシアガやアズディン・アライアのそれを思わせる。Proenza Schoulerのデザイナー、ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスはパリで新たな香水の開発に取り組んできたが、そこでパリ独自の職人技を知り、熱中するようになった。「仕事以外の時間にも僕たちはリボンやフェザー、手織りなど、分野に特化したアトリエをまわってリサーチをした。そこから、もっとこの世界を知りたいと思うようになったんだ」とヘルナンデスは語った。「かれこれ1ヶ月くらい刺繍に専念している。あのフェザー・ジャケットも作るのに1ヶ月かかったよ」と、ショーではサーシャ・ピヴォラヴォヴァが着て登場し、誰もが息を飲んだジャケットについて、ヘルナンデスは話す。「3人だけでやっているようなアトリエがたくさんあって、それがひとつの産業になっているんだ。アパルトマンに織機がひとつだけあるような」——「でもその織機が400年も使われ続けているモノだったりするんだ」とマックローが付け加える。

Miu Miu Resort 2018

Proenza Schoulerのコレクションは、オートクチュールのように見えたし、オートクチュールのように感じられもした。「いくつかのアイテムは既製服だけど、オーダーメイドでしかできないものもある。そのミックスなんだ。どちらの要素も含んだひとつのコレクション。ひとつの世界」と、ヘルナンデスは正確な言葉を探しながらコレクションを説明する。しかし、突き詰めればProenza Schoulerの今季コレクションはオートクチュールではない。アイテムの数々は、ひとりの職人の手によってひとつひとつオーダーメイドされるわけではない。顧客の具体的な要望に応えながら作り上げるオートクチュールとは少し勝手が違うのだ。だからといってProenza Schoulerの今季コレクションが美しさに欠けたというわけではない。しかし、だからこそ、ファッション業界に愛され続けてきた年4日間のパリ・オートクチュールの未来が見えなくなった。もちろんCHANELやDior、Valentinoといったクチュール協会が認めたメゾンが発表するコレクション以外、他ブランドが発表するのはプレ・コレクションだ。今回、そんな"プレ・コレクション"を発表したのがHermesとMiu Miuだった。Hermesではデザイナーのナデージュ・ヴァネ=シビュルスキーが、クチュールの顧客のための2018年クルーズ・コレクションを発表した。Hermesの顧客は、冬になると実際にクルーズ船で旅行へ出かけるような有閑層だ。Hermesのデザイナーに就任して数シーズンを経たシビュルスキーは、肩の力も大分抜け、Hermesでのデザインを楽しんでいるようだ。フォーブール・サン=トノレ通りにあるHermes本店で開催されたショーはバケーションの雰囲気に溢れながらも、元気なカラーや奇抜なフェイスペイントなどが見られ、アマゾンの戦士を想起させるコレクションだった。

Miu Miu Resort 2018

Miu Miuは<オートモービル・クラブ>をショーガールの舞台へと変身させた。フレデリック・サンチェスがミックスしたさまざまなミュージカル曲が流れ、トミー・ジェネシスによるパフォーマンスも行なわれた。ミウッチャ・プラダによる2018年Miu Miuクルーズ・コレクションは、引き続き女の子らしく楽しい世界観を追求し、スタッズやクリスタル、パッチ、テクノ・プリントなどを太ももを強調するホットパンツに配していた。それはオートクチュールではなく、正確を期すならばプレタポルテでもなかった。その表現と見せ方はProenza SchoulerやRodarteといったアメリカ勢がやってみせたものとも共通しており、また、これからの3日間でクチュリエたちがみせるオートクチュールの世界観でもあった。彼らは、限界の存在しないリミックス時代へとファッション界を推し進めていた。

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Credits


Text Anders Christian Madsen
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.