MARVELと初めて契約を交わした黒人女性、ロクサーヌ・ゲイ

アメコミ界で不動の人気を誇るタネヒシ・コーテスの『ブラックパンサー』。これに連動したシリーズとして始まる『ワールド・オブ・ワカンダ』の原作を書いているフェミニストでクィアの黒人作家ロクサーヌ・ゲイに注目が集まる。

by Hannah Ongley
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25 August 2016, 2:12am

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作家ロクサーヌ・ゲイ(Roxane Gay)が、アメコミ出版の最大手マーベルのもとで、インターセクショナル・フェミニズム(※1)のコミックを執筆しているという。著書『Bad Feminist:バッド・フェミニスト』のほか、秀逸なツイートの数々で注目を集めてきたゲイだが、今回、マーベルのベストセラー作品『ブラックパンサー』と連動する作品を手掛けるにあたり、詩人のヨナ・ハーヴェイ(Yona Harvey)とタッグを組んで制作にあたっているそうだ。『ブラックパンサー』の作者は、ゲイの友人であり、ともに社会と闘っているリアルなアベンジャー仲間でもあるタネヒシ・コーテス(Ta-Nehisi Coates)。この企画を快諾したゲイは、マーベルが起用した初の黒人女性作家となった。そして、彼女が書くコミック『World of Wakanda:ワールド・オブ・ワカンダ』には、有色人種の大物クリエイターたちの参加も決まっているようだ。ゲイのツイートによれば、表紙と絵は、ともに黒人女性であるアフア・リチャードソン(Afua Richardson)とアリサ・E・マルティネス(Alitha E. Martinez)が手掛けるという。

「私のエージェントは、私がほかのプロジェクトに関わることに難色を示したわ」とゲイは『The New York Times』紙に明かしている。しかし、彼女はこれまで挑戦したことのなかった領域で自身のスキルを磨く機会を逃したくなかったようだ。「私のキャリアにおいて、これはもっとも"私らしくない"こと。良い意味でね」と彼女は言っている。『ワールド・オブ・ワカンダ』には、『ブラックパンサー』の元警備隊員女性、アヤとアネカが登場する。ふたりは恋人同士という設定だ。ゲイは「黒人女性とクィア黒人女性をマーベルで描くことができる」チャンスをフルに活用したいと語っている。「こんな提案に対して、ノーとは言えないわ」

『ワールド・オブ・ワカンダ』の発表は、コミック界における多様性に広がりが見られ始めた今、とても大きな意味を持つ。マーベルは最近になり、歴代のスーパーヒーローたちに、新たにパキスタン系アメリカ人のティーン、カマラ・カーンを加え、『アイアンマン』ではリリ・ウィリアムズというスーパーヒロインを生み出している。しかし、多様性を描く制作現場にはそれほど多様性が見られるわけではないらしく、リリというキャラクターを生み出しているのが白人男性作家ブライアン・マイケル・ベンディス(Brian Michael Bendis)であると知ったコミックファンたちのあいだには、少なからず落胆の声が広がった。「これまでマーベルで書いた女性作家が思い浮かばないな」とコラムニストのジョセフ・P・イレッジ(Joseph P. Illedge)は今月初旬のツイートで嘆き、「人々がそれぞれの物語を表現できるチャンスを、人種やジェンダーの隔たりなく誰にでも平等に与えるべき」と訴えている。「私が最初だなんて......21世紀を迎えて16年も経っているというのに」とゲイはツイートしている。「でも、私が最後にならないことは確かね」

※1 :異性愛者の白人女性だけではなく、有色人種の女性やレズビアン、トランスジェンダー、障害のある女性など多様な女性の問題に目を向けるべきというフェミニズムの考え方のひとつ

Credits


Text Hannah Ongley
Image Marvel Entertainment
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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