植物と人間が織りなす妖艶の美

植物や花を用いて、想像の世界を写真に再現するアウグスティン・フェルナンデス。奇妙でありながらもどこか妖艶な彼の作品は見るものを魅了して離さない。

by Zio Baritaux
|
03 October 2016, 5:35am

ポートランド出身のフォトグラファー、アウグスティン・フェルナンデス(Agustin Hernandez)の作品は、不気味でエロティックだ。そこに溢れるのは、説明のつかない魅力だ。それは悪夢が性的な夢へと様相を変えるときの混乱にも似ている。ある写真では、街路にうつ伏せで横たわるモデルの上に、きらきらと金色に輝くチープなウィッグが舞い降りる。また別の写真では、ロブスターの尾で隠された胸に誰かの手がレモンを絞っている。「いつも頭の中にイメージが浮かんでくるんだ——白昼夢みたいに」とアウグスティンは言う。「それを写真のなかに構築して、作品にしていく」。突飛な小道具やポーズが彼の作品の特徴だ。豊かな自然も印象的だ。ほぼすべての作品に植物が、ときに被写体として、ときに背景として用いられている。実際に登場しない場合でも、植物は花柄プリントなどの形でも用いられる(シルクの着物や、血が染み付いたマットレスなどが好例だ)。中でもバラは彼が好んで使うモチーフだ。不気味なマスクや物憂げなモデルに花びらが散りばめられているなど、特徴的で魅惑的な作品には、バラが繰り返し登場する。「僕の心はバラに捧げられているんだ」と彼はインタビューの中で語っている。「バラが持つ世界観は、タイムレスでありながらも儚い。棘こそ鋭いけれど、花の色は情熱的——そういうところが好きなんだ」

フォトグラファーとしてのビジョンについて教えてください。
僕にとって写真とは認識すること。ビジョンを刺激する要因はたくさんあるけど、感じたことや思い浮かんだイメージを形にするアイデアが一番かな。フェミニンで興味をそそると同時に、パワーを与えるような世界観のようにね。

あなたは写真にすることで夢想の世界を再現しているとお聞きしました。それについてもう少し詳しく教えてください。
僕は大の夢想家だ。すぐに自分の思考に没頭したり、周囲で起こっていることに心を持って行かれてしまう。刺激を受けた心が生み出すファンタジー、それが僕にとっての夢想。そんなファンタジーの世界によく迷い込んでしまうんだ。状況やシナリオ、もしくは静物のイメージが心に浮かぶと、それをなんとしても現実の形にしたくなってしまうんだ。

最後に夢想した内容は?
壁に高く赤いバラが生い茂る白い家があって、隣にはワイヤーフェンスが高く張り巡らされている。その向こうには、枝が低く垂れさがったヤシの木みたいな何かが生えているんだ。そこに、黒いクラッシュベルベットのロングドレスの上に、金の刺繍が入った日本製のボマージャケットを着た黒髪の人が現れて。その人がぎこちないんだけど、でも優雅に、低く垂れ下がった木の枝や、赤いバラを守るように張り巡らせたフェンスの周りを歩く、そんな情景だった。

バラの花びらやヤシの葉といった自然の世界を多く作品に扱っていますが、自然の何に惹かれるのですか?
たくさんの植物に囲まれて育ったんだ。母が好きでね。僕も年を重ねるごとに植物のすばらしさが理解できるようになった。植物には、どうにも説明がつかない、何かを悟らせてくれるような美しさがあるでしょ? 両親はバラ園で働いていて、よく家にブーケを持って帰ってきていたんだ。それがいつも楽しみでね。植物にはポジティブなエネルギーに満ちていて、撮影に魅惑的な雰囲気を呼び込む力があるんだよね。

植物の形状や色彩には、たしかに魔法のような力がありますね。植物はセクシーにもなりうるのでしょうか? 最もセクシーだと思うのはどの植物ですか?
植物はセクシーにもなりうるね。見入ってしまう、そんな魔法みたいな魅力が植物にはある。僕の心は完璧にバラに奪われてしまっているんだ。子供の頃、最初に好きになった花がバラだった。バラが持つ世界観はタイムレスにして儚い。その棘こそ鋭いけど、花の色は情熱的。そういうところが好きなんだ。

ご自身の作品で最も気に入っているのは?
何年か前の夏、閉園後のバラ園に友達と忍び込んだことがあったんだ。刈り取ったバラがたくさんビニール袋に詰められていてね。ビニール袋のうちひとつを、並んで咲いてるバラの茂みの間に置いて、その上に赤い口紅を塗ったマスクをのせたんだ。透明のビニール袋にマスクが貼り付けられて、そこに顔があるような視覚的効果が生まれた。カラフルだけど不気味なムードに惹かれて、それを写真に捉えようと思ったんだ。袋に透けるバラの花びらの色と、ビニールに反射するフラッシュの光が、油絵のような質感を生んでいて気に入ってるよ。

あなたの作品を見た人たちに、どんなことを考え、理解してほしいと思っていますか?
それは見る人それぞれの解釈に委ねたいね。解釈するものがあればの話だけど。

Credits


Text Zio Baritaux
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

Tagged:
Culture
Interviews
plants
agustin hernandez
photography interviews