相方を見つけ、制作を続けるmaison de F

元はデザイナーとお客さんの関係性だった高橋と石川が始めたブランドmaison de F。服と人体を"馴染ませる"服作りをする2人が考える、パートナー関係やファッション業界で自分やブランドを"馴染ませる"ということとは?

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feb 20 2018, 10:32am

色やロゴに頼らず、構築的な服作りを続けるmaison de Fはパリでの展示会やメディアでの露出など、着実に活躍の場を広げるブランドである。いわゆる“インスタ映え”しないmaison de Fの洋服には、着用することではじめて実感できる何かがある。それは、日々凄まじいスピードで変化しているファッションが失いつつあるものかもしれない。

デザイナーを務めるのは高橋颯人。そしてプレスを担当するのが石川淳。2人でブランドを始めた当時、高橋はまだ19歳、石川は23歳だった。人見知りな二人だが、洋服に対する情熱は誰よりも熱く、この二人のエネルギーに惹かれるクリエイターは多い。右も左もまだわからなかった高橋と石川は、投資会社などからのバックアップを持たずに、生産から流通のすべてをたった2人でこなし、ブランドは今年で6シーズン目を迎える。彼らは互いを認め合い、そして互いを必要とする。しかしながら、2人で食事をすることもなければ、互いのプライベートのこともよく知らない。ただのビジネスパートナーというには近すぎる、しかしフレンドシップとも違う特別なパートナーシップを持つ2人をつなぐのは、maison de Fというファッションブランドである。

ーまずは2人の出会いについて教えてください。

石川淳: SNSで高橋が当時1人でやっていた、maison de Fの前身であるFの写真をネット見つけて、かっこいいと思ったんです。写真がかっこいいというよりも服自体にものすごく力を感じて、一般的なお客さんとして着てみたいと思ったのが、高橋を知るきっかけになりました。
高橋颯人:14AWに発表したセットアップですね。自分がブランドを始めたのは、前シーズンの14SSからなので、石川が見たのは2シーズン目のコレクションです。
石川:でもクレジットには"F"としか書いていないですし、お客さんとしてもっと色々な洋服が見たかった。どこで買えるのかも検索しましたが、Fだけでは当然出てきませんでした。そんなことを忘れていた頃に、共通の友人に展示会に誘ってもらったんです。欲しいと思っていたセットアップはもう置いていなかったですが、「アトリエに遊びに来てください」と誘われて、その後2〜3回くらい行きましたね。
高橋:「あ、いいお客さんだ」って(笑)。本当にそれだけでした。

-前身のブランドであるFからmaison de Fに変わったことで、洋服作りのコンセプトにも変化はありましたか?

高橋:自分が洋服作りで大事にしている部分は、洋服だけで独立しないということです。つまり身体との関係で、一言で言ってしまうとただ“馴染む”かどうか。つまり、身体に影響を及ぼし及ぼされる関係性の中にある洋服というのが、Fをやっていたころからの自分の服作りに一貫していることになります。ただ、maison de Fのコンセプトがそれなのかというと、また少し違ってくるように思います。まだ完璧なコンセプトはなくてもいいのかなと思っています。ずっとこのコンセプトで行くんだというものは作ろうとも思っていないですし、作れていないし、なくてもいいのかな、と。

-なるほど。maison de Fにブランドを変えた理由を教えてください。

石川:ちょっと恥ずかしいのですが、名刺を作るときです。当時、Fにはプレス担当がいませんでした。高橋からは「ブランドを大きくしたいけど、そういう立ち回りをする人がいないからどうすればいいのかわからない」と聞いていたので、「自分が買った服を着て、友達に宣伝しておくよ!」くらいのノリの延長線上で手伝う予定でした。でも、オフィシャルに宣伝するなら名刺がいるよねということで名刺を作ることにしました。このときはまだお客さん目線だったので、単純に自分がかっこいいと思っているブランドがなくなったら困るという気持ちでしたけど。

ーブランド設立日とかは特になく、自然と始まっていった感じなんですね。

石川:そうですね。気づいたら一緒にやっていました。

ー高橋さんは石川さんが入ったことで、どんな影響があったと思いますか?

高橋:デザイナーズブランドなので、デザイナーが作りたいと思ったものが服に直結していなくているものだと思うんです。自分がmaison de Fを一人でやっていたら、たぶん金銭面で成長していなかったように思います。だけども石川が入ってきたことによって、売れない、売れている、どっちにしてもお金の流れが出来てきて、デザイン性だけに囚われない、何すればこうなるといったロジカルな考え方ができるようになったことでデザインも必然的に変わったと思います。それがないと、ずっと作りたいから作るっていうだけのシンプルな構造でデザインしていたと思います。

ーもともと高橋さんの服のファンだった石川さんを意識して作ることはありますか?

高橋:洋服が仕上がってからの話ですが、この服は似合うだろうな、これは似合わないだろうなっていうのはありますね。あと、「ポケットがない!」と文句言われるだろうなとかも。だけど、デザインの途中で石川に見せることはあまりないです。
石川:サンプルやトワルの段階で触ろうとすると、「それ、まだできていないので見ないでください!」って怒られるんですよ。
高橋:出来上がったときに「おーっ!」てなってほしいじゃないですか。自分がある程度自信を持って作りたいと思いながら作ったものに反応が良かったら、一安心できますしね。

ー最近は衣装のお仕事もされていらっしゃるみたいですが、一度高橋くんに聞いてから判断しているんですか?

石川:そうですね。基本的に全部話しています。というのも、僕は“高橋”というフィルターを通せば何をやってもブレることはないと思っているんです。そこのある種の安心感があるので、任せていると言ったら変ですけど、安心していろんな話を持ってこれるというのがあります。高橋は、maison de Fがなかったらたぶん一生交わらないだろう人種ですが、もともと感性が近くて感覚的に交わる部分があったから、今のようにパートナーになっているんだと思います。

ー今、maison de Fでチャレンジしてみたいことは何ですか?

石川:ランウェイでのプレゼンテーションですね。自分たちが若いというか、もっとファッションに夢を見ていたときは、やっぱりすべてはランウェイでの出来事だったんですね。今のようなストリート発信ではなく。だから当時の自分が見ていたもの、影響を受けたものにmaison de Fとして携わってみたいという気持ちです。

ー高橋さん、1人でやっていくのは難しいと思いますか?

高橋:そうですね。でも、どんな形であれ、1人でも洋服を作っていると思います。
石川:自分もあの頃のまま、お客さんだったら今高橋がどうやって続けているのかなって、たまに想像するんです。でも、当時は当時で既にスタイルが確立されていたので、また違う形でやっているんだと思いますけどね。
高橋:それでも、きっと今の方が洋服作るのを楽しんでいると思いますね。

「好きなことを仕事にしない方がいい」とはよく聞くし、間違っているとも思わない。しかし彼らを見ていると、「一生好きだと思うことなら仕事にした方がいい」と思わされる。キラキラした夢を追う姿というよりも、泥水を飲んででもいいから、やりたいことを実現させる覚悟を当たり前のように身にまとうmaison de Fの2人。この強い気持ちこそが、周りに刺激を与え、日本のファッションを更新していくのだろう。