ロックにミステリーとマッドネスを復活させるスタークローラー

「このアルバムを聞けば、ロックンロールに再び顔をひっぱたかれたかのように感じる」

by Frankie Dunn; photos by Cameron McCool
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26 January 2018, 10:33am

This article originally appeared in The Sounding Off Issue, no. 350, Winter 2017.

「LAで一番美味しいミディアムレアのチーズバーガーと、ポテトにサウザンドレッシングを添えてもらえるかな?」とウェイターに聞くのは、スタークローラーのギタリスト、ヘンリー・キャッシュ。「そーれーかーらー、ミートローフのサンドウィッチをグレイビーソースで」と、ヴォーカルのアロウ・デ・ワイルド。この最高にクールなデュオがいるのは、シルヴァー・レイクにある24時間営業のダイナー〈アストロ〉だ。60年代に建てられたその店舗は、今や伸び放題の植え込みに囲まれ、パウダーピンクのレザーが張られたボックス席、そしてウッドテーブルが並ぶ。店のモットーは「ママに出せるほどの料理じゃなければ、あなたに出せるほどのものでもない」。その日i-Dと食事を共にしたのは、18歳のアロウ、若干17歳でベビーフェイスのヘンリー。90年代の学園もの映画から抜け出たような、風変わりなグランジキッズといった風情だ。アロウは自信に満ちあふれ、ヘンリーは物静かな熟考タイプ。ふたりともフレンドリーで賢い若者だった。長髪のドラマー、オースティン・スミスとかわいい顔をしたベースのティム・フランコは彼らよりいくつか年上で、今は大学に行っていて不在だという。

バンドが結成されたのは学校だった。ヘンリーがうんざりしながらチューバのケースを手に階段を降りているとき、アロウが話しかけてきたのだ。彼女は彼がクールだと言い、ギターを弾くかどうか尋ねた。「彼は私のことをそれほど好きじゃないなと思ったの。なんかぶっきらぼうだったから」と彼女は話す。「びっくりしただけだよ! 君のせいでうろたえたんだ」とヘンリー。「僕はアロウを見て、彼女が何者か知りたくなった。彼女が学校にいるほかの誰とも違って見えたからね」。音楽仲間だったオースティンに彼女を引き合わせて誘い、その3人でスタークローラーを結成。そしてすぐに、単なるバンド仲間以上の、きょうだい愛にも似た友情を育むようになる。今年の夏に、ふたりは芸術に特化したその高校生活を終えた。アロウは卒業したばかりで、ヘンリーはバンド活動を円滑に行うため、最終学年の授業をオンラインで受けている。

「息をするのを忘れるくらい演奏にすべてのエネルギーを費やして、ステージを去るとき吐きそうになる。それがいいライブ」

スタークローラーはロック精神にあふている。だからそのインスピレーションが先人たちにあることについては、驚くに当たらない。「オジーが大好きなの」。アロウはその永遠のアイドルについて夢中で話す。「彼は私のインスピレーション。7年生のときに『ブリザード・オブ・オズ』を聴いて、すっかり虜になったの。ザ・ランナウェイズのシェリー・カーリーも。ジョーン・ジェットはクールだったけど、それは誰でも知ってることだし。シェリーは超クールだと思う。彼女が今チェーンソーアートをしてるっていうのは、すごく残念だけど」。一方ヘンリーは、ジャック・ホワイトに入れ込んでいる。「彼がすっかりおかしくなってしまうホワイト・ストライプスのPVのおかげで、音楽をしたいと思うようになったんだ」。ライブで、188cmあるアロウの肉体は、すっかり取り憑かれてしまったように見える。尻を振り、服を引き裂き、その顔は狂気に満ちて、しかもしばしばオプションで拘束衣や病院用のガウン、ニセモノの血糊まで取り入れるのだ。性質という意味でも運命という意味でも、彼女は生まれながらのロックスターなのである。なにしろドラマーのアーロン・スパーズク(アリエル・ピンクとビーチウッド・スパークスで活動)と、フォトグラファーのオータム・デ・ワイルドの娘なのだ。バンドメンバーは全員完璧主義者で、そのパフォーマンスにすべてを注ぎ込む。「息をするのを忘れるくらい演奏にすべてのエネルギーを費やして、ステージを去るとき吐きそうになる。それがいいライブ」とヘンリーがそれを裏付けた。

「私は以前別のバンドにいたんだけど、すごくシャイだった」とアロウは説明する。「シャーリー・マンソンが、一度ライブに来てくれたことがあるの。母の友人だったから。そしてこんなようなことを言ってくれた。『観客を怖がってはダメ。彼らを目で見ることを怖がったらいけない。あなたは観客に対して力を持っているんだから』」。ガービッジのヴォーカルからのアドバイスは、その後も心に残った。「それが私の感じ方をすっかり変えたの。何をそんなに怖がっていたのか不思議になるくらい」。それからアロウは長いときを経て、今では観客に血を浴びせる前に死ぬほど凝視するまでになった。「最初のライブをする前まで、アロウの分身はその姿を現してなかったんだ」。1年半ほど前を振り返りながら、ヘンリーはそう言った。「彼女から発されるそういうすべてのエネルギーと相対するのは、すごくエキサイティングだよ」

今年の初め、彼らの2分もないデビューシングル『Ants』が、たちまちApple Radioにピックアップされた。その後、エルトン・ジョンが同曲を自身のラジオ番組ロケット・アワーのパワープレイ曲に選出。この曲は、ヘンリーの家にアリ(ants)が発生したときのことについてのもので、彼は食べ残しのサンドウィッチをリュックに入れっぱなしにするという愚かなミスを犯してしまったのだ。アリの大群がそれに群がり、彼の身体中を這っているのに気づいたのは、学校に着いてからだったという。「そう、ホントにそれはアリについてだけの曲」とアロウが無表情に付け加える。「隠喩にもなるかもだけど。超むかつくハッタリ人間の隠喩。そこら中にいるんだから!」 この曲のB面には、キャッチーな「Used To Know」がコンパイルされており、9月には「Let Her Be」がリリースされた。この誌面が印刷されるまでにまだこの3曲しか発表されていないにもかかわらず、ファンはライブでもっと多くの曲を耳にしている。例えば騒々しい娼婦についての曲「Pussy Tower」など。

ライアン・アダムスがプロデュースしたそのデビューアルバム(ハリウッドにある彼のスタジオでアナログ録音された)はすでに完成し、スタークローラーを結成初日から見守ってきたように見えるラフ・トレードから、2018年初めにリリースされるのを待つばかりとなっている。数年前に彼らがコンタクトしたとき、ロンドンを拠点とするこのレーベルからの反応はなかったが、今は喜んで彼らと契約を結び、その非常に生っぽく、非常にLAっぽい作品に期待を寄せていた。「このアルバムを聞けば、ロックンロールに再び顔をひっぱたかれたかのように感じる」とヘンリーはニヤニヤした。「『なんだこれは?』となること間違いなしだよ」

LAには彼らのサウンド、そのバイブと存在そのものが染み込んでいると、スタークローラーは請け合う。当時は荒れ放題だったエコー・パークで育ったアロウは、現在イーグル・ロックに住んでいる。ヘンリーはずっとアルタデナなので、裏庭で鶏を飼い、アンプはいつも爆音なのだという。「今ではほとんどのバンドが使ってないけど、LAはたくさんのエネルギーに満ちた場所なんだ」と彼は言う。「だから、ほかのバンドが持っていかないうちは、どんどん利用できちゃうってわけ」。アロウの家族は皆LAで育っている。「もう誰も自分の街にプライドを持っていない。LA出身の人っていうのが少なくなったもの。でもうちのバンドは全員がこの街出身。それが気に入ってるの」

彼らが将来もここに住み続けるであろうことは間違いない。そしてその将来が極めてロックであることも。「年をとったら、炎の絵を描いた50年代のマッスルカーにピンクのプードルを乗せて走り回ってるっていつも想像するの」とアロウは笑う。「ぜったいにあの醜い老人用の靴は履かないと思う。だからレミー(・キルミスター)のカウボーイブーツを作ってる人に頼んで、そのブーツに心地いいインソールを入れてもらうように頼むわ。家はハリウッド・ヒルズ。そういう計画なの」。一方ヘンリーは、アルタデナに住み続けたいようだ。彼の計画は、そのコミュニティで知られた顔になること。「古い車を改造して、通りを走るときは〈Champagne And Reefer〉を大音量でかける。するとみんながそれを見てこう言うんだ。『見て! またあのおじいさんだ!』」

Arrow wears shirt model’s own. T-shirt G-Star RAW. TROUSERS MODEL’S OWN. Austin wears Jacket 3.1 PhilLip Lim. Top and jeans Topman. Henri wears blazer and jeans Topman. Shirt model’s own. Tim wears all clothing model’s own.

Credits


Photography Cameron McCool
Styling Nicolas Klam
Translation Aya Takatsu

This article originally appeared on i-D UK.