Merry Lamb Lamb for Gucci Eyewear

メリー・ラム・ラムについて知っておくべき10のこと

香港を拠点に活動するエレクトロニック・ミュージシャン、メリー・ラム・ラム。寂しさや感傷的な気持ちを歌う彼女が、自らの音楽、デビューアルバム『Genesis』、十代の頃の葛藤を語る。

by Frankie Dunn; translated by Nozomi Otaki
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16 July 2019, 8:38am

Merry Lamb Lamb for Gucci Eyewear

今から4年前、メリー・ラム・ラム(Merry Lamb Lamb)は、トロントの中心部でアートを学んでいた。とても狭く、がらんとした寮の部屋で、卒業を目前に控えた彼女は、たびたび将来への不安に襲われた。「思わず涙が溢れてきた」とメリーは当時を振り返る。

「ずっとひとりぼっちで、絶望的な気分になって。日記を取り出し、こんな詞を書いた。『あなたと私 隣に並んで/少しだけ一緒に泣こう/隣同士のあなたと私』」。この歌詞から、彼女の最初の曲「Pity Party」が完成する。彼女がパーティで感じた感傷的、悲観的な気持ちを打ち明ける、誰もが共感せずにはいられないスイートな1曲だ。

彼女の作曲スキルはみるみる上達し、YouTubeのチュートリアルで楽曲制作を学んだあと、独自のローファイなエレクトロニック・サウンドをつくりだし、自分だけのユートピアを築きあげた。インターナショナルスクールと広東語の学校、故郷の香港と留学先のトロントを行き来しながら育った彼女が、ようやく見つけた安心できる居場所。それが、デジタルの世界に存在する、空想のなかの安全な空間だった。

詳しい話を聞く前に、メリー・ラム・ラムという名前の意味を訊いてみた。「メリーは、私が生まれたときに母がつけてくれた名前。毎日好きなことをして楽しく過ごせますように、っていう願いが込められてる。ラム・ラムは高校時代のあだ名。アニメみたいなステージネームがほしくて、この名前を使ってた」

現在26歳で、レコードレーベル〈doub club〉に所属している彼女は、MVではSimone Rochaのアイテムを身にまとい、Gucciとのコラボレーションも実現させた。彼女はいわば、悲しい映画、雨の日々、真夜中の気持ちを着想源にシンセサイザーを操る天使だ。

「特に寂しいときは、詩を書いたり、絵を描くことにしてる。幸せな思い出は特に印象に残らないから、あまり興味がない。私が惹かれるのは、心に傷を残すような悲しい出来事。その傷を癒すには、曲を書いて乗り越えるしかない」

今年8月には、広東語と英語の楽曲を収めたデビューアルバム『Genesis』の発売を控えているメリー。悲しみや寂しさを歌い、それらを肯定してくれる作品だ。そんな彼女をもっとよく知るための、10の事実を紹介する。

1. 彼女の音楽ジャンルはエレクトロニック・ミュージック
「この世界は広いし、私はエレクトロニック・ミュージックの世界も同じくらい広大だと思ってる。地下鉄の駅で録音したキックドラム、街を行き交うひとのざわめきのループ音など、あらゆる音を使って自分を表現できる。ハウスとかテクノのプロデューサーを名乗って、自分のジャンルを限定したくない。私はただ、エレクトロニック・ミュージックを通して、自分の気持ちを表現せずにはいられないの」

2. メリーは牡牛座
「私はいかにも牡牛座っぽい性格で、作品を創るとなると、自分のこだわりは譲れない。でも、だからこそ、曲への批判的なコメントは無視して、自分は最高だって信じることができる」

3. 十代の頃のお気に入りはアヴリル・ラヴィーンとBELLE AND SEBASTIAN
「当時はポップパンクをよく聴いてて、アヴリル・ラヴィーンは今でも私のヒーロー。最初はインターナショナルスクールに通ってたんだけど、私が広東語を忘れてしまうんじゃないかって母が心配して。それで13歳のときに公立高校に転校させられたんだけど、全く馴染めなかった。15歳でトロントに留学して、そのとき聴き始めたのがBELLE AND SEBASTIAN。十代の頃はつらかった。自分がどこに所属してるのか、いつも自問し続けていたけど、結局答えは出なくて。でもそのかわりに、安心して自分を表現できる自分だけのユートピアをつくった」

4. 2018年、中国のリアリティ番組『Rave Now』に出演
「『Rave Now』は、世界中のエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーが出演する、上海で収録・放送される番組。毎回24時間以内に曲を書いて、互いに競う。精神的にクタクタになったけど、曲を素早く完成させたり、大きなステージでのパフォーマンスに挑戦することで、かなり成長できたと思う」

5. 8月に発売されるデビューアルバム『Genesis』では、自分を雲にたとえた
「このアルバムのテーマは、自然ともう一度つながることだったから、自分のいろんな気持ちを雲で表現した。雲は気分屋で、雨を降らせることもある。でも幸せなときは、太陽が出て晴れに変わる。自分を雲にたとえたのは、私自身が気まぐれだから。コーヒーをひと口飲んだら、すぐハッピーモードに戻れるけどね」

6. もっと香港のインディミュージック・シーンを知ってほしい
「香港の海外でのイメージは、ブルース・リーやジャッキー・チェンみたいな映画スターだと思う。でも、ここのインディミュージック・シーンは今、すごい勢いで急成長してる。MY LITTLE AIRPORT、Dough-Boy、SCIENCE NOODLESは、今の香港を代表するアーティスト」

7. メリーは両利き
「書くのも食べるのも両手でできる。昔は左利きだったけど、母に直されて、右手で何でもできるように教えられた。中国の親はみんな、左利きを矯正しようとする。右手を使うのは、物事を正しく行なうっていう意味だから。でも、私は食事中に右手が疲れたら、左手も使うことにしてる」

8. 親友はデジタルアーティスト/ヴァーチャルインフルエンサーで、FENDIともコラボしたルビー・グルーム(Ruby Gloom)
「ルビーはすごく仲のいい友だち。ルビーがInstagramで偶然私の曲を見つけて、一緒にMVをつくらない?って誘ってくれたのがきっかけで知り合った。そのあと直接会って『Do you think about me every day?』っていう曲を披露して、360°のVR動画でMVをつくってもらった。ルビーと仲良くなったのは、寂しさについて、それからネットの世界によっていかに私たちが内向的で感情を表に出さなくなったか、ということについて、同じような考えを持ってたから。こんなに繊細なのに、アートを通してこれほどパワフルになれるひとには会ったことがない。ルビーのことはすごく尊敬してる」

9. ミュージカル『ライオン・キング』観劇中に寝てしまったことがある
「8歳のとき、初めて両親とトロントに行った。いとこが私の大好きなディズニー映画『ライオン・キング』のミュージカルに連れていってくれて。『王様になるのが待ちきれない』を一緒に歌えてすごく嬉しかったのはよく覚えてる。何もかも魔法みたいですごく楽しかったんだけど、そのあとは時差ボケで寝ぼけてたから、このシンバの曲しか覚えてない」

10. 10年前に戻れるなら、16歳の自分にアドバイスを贈りたい
「何事もためらわず、直感を信じて前に進むことが大切。私は高校でひどいイジメにあって、ほとんど誰とも話さなかった。でも、もしイジメが原因で自分の感情を抑えこんでしまっているなら、その癖は直したほうがいい。自分がユニークな存在であることを大切にして。自分の能力を過小評価してはダメ。可能性は無限大なんだから!」

This article originally appeared on i-D UK.