普遍と可変:HYKE 19SS

白い壁に覆われたミニマルなショールームでのインスタレーションから、無骨な天王洲アイルの倉庫に発表の場を移したHYKE。いくつかの変化はあれど、服が発する特有の“フェミニティ”は健在だった。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Houmi Sakata
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19 October 2018, 4:43am

吉原秀明と大出由紀子が手がけるHYKEは、2013-14年秋冬に前身のブランドgreenから改名して以来、首尾一貫したアティチュードがある。たとえば、シーズンテーマは設けず、激流のごとく移り変わるファッションシーンの動きに決して迎合しないこと。そして「HERITAGE AND EVOLUTION(服飾の歴史、遺産を自らの感性で独自に進化させる)」をブランドのコンセプトに掲げていることだ。ただ、AFWTの4日目にあたる10月18日は、HYKEにとってひとつの転換点となったといえるだろう。

HYKE

自社ショールームのミニマルな空間で3シーズン継続してきたプレゼンテーションの場を天王洲アイルの寺田倉庫G1に移し、スケール感を拡張したランウェイショー形式をとったのだ。見上げるほど高い天井、剥き出しのコンクリートの壁に太陽の光が差し込み、太い柱が林立する空間に、常に凛然としたコレクションがどのように映えるのか。一定のテンポでリズムを刻む音——縫製工場や機屋といった“服が作られていく現場”で採取した音を使い、吉原と上村真俊、香田悠真によるユニット〈UYK〉が今季のショーのために製作した楽曲「WORK:10 / UYK」でショーが始まった。

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ファーストルックは、1940年代にアメリカ海軍で使用されていたサルベージパーカーをベースにしたプルオーバーと、オーガンジーのアコーディオンプリーツのスカート……。ミリタリー特有の一種の“男性性”を、鋭い技巧によって独自のフェミニティに転換する、その“知性”が宿ったスタイルは不変だ。フライトジャケットのスリーブの量感をシャツに反映させたり、フロントを円形にカッティングを施しボレロ風に仕上げたり——ディテール単位での巧妙な差し引き、それらの配置の転換、ときに素材やフォルムの大胆な転用は、いわばHYKEを象徴するデザインだ。今季では、“本来は”前身頃を背中に移し替えたシャツやデニムジャケットの詰まった首元は、ごくプレーンかつクリーンな表情を生み出していた。決して短絡的なミニマリズムに陥ることなく、確かなテクニックに裏打ちされた再構築の美意識は、ところどころに数十年前のヴィンテージのニュアンスを正確に吹き戻しながら、現代の女性に向けた上質なエレガンスに変換し続けているのだ。

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一方、インスピレーションソースは各国のミリタリークロージングにありながら、2019年春夏での新たな要素はランウェイに強い色彩が持ち込まれたことだ。鮮明なブルーのストライプパターン、モデルの動きに合わせてたなびくプリーツドレスは真紅に彩られ、2018年春夏を思い起こさせるパイソン柄もまた色に変化がある。さらに忘れてはならないのが、HYKEの中軸にコラボレーションが深く根付いていることだ。CHACOLIとのバッグ、2017年春夏から続く竹ヶ原敏之介のBEAUTIFUL SHOESとのコラボシューズもカラーパレットを豊かに。3シーズン目となるTHE NORTH FACE × HYKEのラインには、身体に巻きつくようなスカート、タイポグラフィの入ったタイツやソックスシューズなどが新たに加わり、スポーティな要素がコレクションに強度を与えた。

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普遍的なデザイン精神を保ちながら、常に新たなアプローチを探求することはそう容易なことではないはず。HYKEがそれを飄々と成し得ているかのように見えるのは、デザイナーの明瞭な意志と無二の美学が、ブランドのコアとして厳然と存在しているからにほかならない。

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Credit


Text Tatsuya Yamaguchi
Photography Houmi Sakata
Editor Noriko Wada

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