tofubeatsが語る『RUN』、映画音楽、川

最新アルバム『RUN』をリリースしたtofubeatsが語る、自分にとっての音楽とそれに付随するもの。

by Saki yamada
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22 October 2018, 4:52am

「5年前の自分は、まだメジャーシーンに残っていることすら想像できなかった」。そう語るtofubeatsがメジャー通算4枚目となるアルバム「RUN」を10月3日にリリースした。これまでに森高千里や藤井隆など名だたるミュージシャンとのコラボレーションを重ねてきた彼が今回発表した“自分一人で作ってみる作品”は、彼自身の変化を系譜している。そのソロ作品リリースを記念した公開取材が9月に行われ、『Wired』元編集長でありtofubeatsの前作「Fantasy Club」のライナーノーツを執筆した若林惠がゲストとして登壇。ポップスシーンを渡り歩く好奇心旺盛で深慮深いプロデューサー・DJのtofubeatsが作品を通して自分の意思を追求する。

「デビューしたときはこれからもっといろんな人とコラボレーションをして、好きなものがさらに増えて、最後は全部好きになるって思ってました。愛、みたいな。昨年から上海や台湾でもライブするようになって、良い音楽をもっと知るようになったんですけど、意外にも一緒に音楽を作りたいと思えるアーティストを日本にもアジアにも見つけられなかった。それよりも自分らしさが問われている気がして、全部好きになるはずが好きなものもめちゃくちゃ絞られてきたんです。今までは世間頼りなところがあったんですけど自分がやるしかないんだって絶望的なムードになって、結果として『RUN』が出来上がりました」ー tofubeats

「RUNって言うけど、爽快感はないよね。砂の上を走ってるみたいな。ある種の空虚さを感じた」と、若林が笑った。この空虚さとはtofubeatsがソロというフォーマットを選んだ故に生まれた感覚だろう。彼はアルバム制作にあたり『ニュータウンの社会学』(金子淳著)という多摩ニュータウンの歴史を辿った本を一読した。なんでも今までコラボすることで引き出していた自分の魅力を、本を読むことでも引き出せることに気が付いたそうだ。多摩ニュータウンが開発されたとき、街の人々は自分たちのお金でバスを開通させ、病院が完成する前は自ら医者を街に呼んで生活の向上に務めたと言う。熱意に溢れた人々の存在を知り、彼は人に頼りすぎている自分の姿に気が付いた。頑張るのは自分で、そろそろ自分の中にある闇を自ら否定するべきだと。ソロ作品の制作過程に置いて自分を掘り深めることで、彼は新しい作曲方法や音楽に対する向き合い方を学んでいった。

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tofubeatsと若林惠のトークは勢いを増すアジアの音楽シーンから始まり、カニエ・ウエストが果たした5週連続リリースを例にとった作品発表スタイルからアルバムの存在意義についての話まで達し、まるで彼らが流す情報の川を傍観している気分だった。本作の皮切りとなった楽曲「River」は映画「寝ても覚めても」の主題歌として書き下ろされている。

「映像もゼロベースでお題を課されたので、とりあえず脚本を100回くらい読みました。海のイメージならすぐに浮かぶんですけど、地元の川を思い出しても綺麗なイメージが出てこなくて、まずは川の勉強をしようと思って藤岡換太郎の『川はどうしてできるのか』を手に取りました。中国は迂回して形を変えた川によってできあがったという第1章の内容に惹かれて完読したんですけど、読んでみると川は人の暮らしと密接に関係していることが分かってめちゃ面白かったです。ストーリー自体とは大きく関係していない川が、どうして映画のモチーフになっているか謎だったんですけど、川の機能を調べているうちにその疑問を自分の中で解決できました。この映画の中では、川が神の機能を果たしているのかなと感じました」ーtofubeats

楽曲の制作過程において、tofubeatsは自分の無知と向き合い学びを得ることで、本来は仕事として見られる作品までも自分のアートワークとしての命を吹き込んだ。若林はtofubeatsが川の書籍を制作に利用したという話を聞いて、自らも『社会的共通資本としての川』と『ローカルな思想を創る〈1〉技術にも自治がある―治水技術の伝統と近代』の2冊を紹介した。tofubeatsは言う。「僕の音楽を聴くだけでこんなに沢山の面白い話が聞けるなんて、お得ですよ」。

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映画音楽という新たなチャレンジ、そして自分と向き合うこと。tofubeatsにとって2018年は特別な1年となったに違いない。脚本から読み解き、本からヒントを得るインテリジェンスなアプローチをするように見える彼が目指すの先は、あくまでも“音楽”なのだ。

「『River』を制作して何が面白かったかって、例えば森高さんとコラボして生まれた『Don’t Stop The Music』のようにゲストの存在で引き出していた新しい自分を、“川”というテーマを与えられることで一人でも見つけられるって分かったこと。めっちゃ面白かったけど、難しかったです。映画音楽を作るってなって初めて意識したんですけど、自分の好きな映画のサントラを思い出そうとしても1ミリも浮かばないんですよ。それで僕は印象に残る音楽を制作したんですけど監督からそういうことじゃないんだよって言われて、映画音楽で重要なのは印象じゃないと気が付きました。映画において、意識はしてないけど思ったより音楽が支配してる。そういう距離感の発見が面白かったです」ーtofubeats

「僕は逆に面白そうな映画を見つけると、まずサントラを買っちゃうんですよね。細野晴臣さんが手掛けた『万引き家族』のサントラとか最高ですよ」と若林が続いた。カンヌ国際映画祭に出品された2作品を見て、tofubeatsは新たな領域に踏み出たことに幸運を感じながらも、細野氏の作品と自分の作品が大舞台で並んでいる現実に震えたそうだ。音楽を通じて前進を続ける彼が今後どのようなチャレンジを続けるのか。

「僕の中で一番は音楽で、音楽しか好きなものはないです。映画とかアート、読書は好きなんですけど音楽に付随しているから好きで、音楽に戻ってこれるからいい。直接的にやりたいことは音楽を作る、聴いてもらう、僕が聴くってことなんですけど、それを通じて自分も皆も好きなものが増えればいいなって思います。音楽を通じてやりたいことっていう目標はなくて、最終的には暗い部屋で音楽だけ流れてて、それを聴いて皆がめちゃ盛り上がってる光景をみたいです(笑)。僕としては、何かを付け加えるんではなくて、そうやって削ぎ落として音楽だけにしたいって欲の方があります」

tofubeatsの揺らぎない音楽への想いは、5年後も変わらず彼のビートを刻み続けているはずだ。

「New Album『RUN』Release Party」

日程:2018年11月22日(木)
会場:LIQUIDROOM
時間:18:00会場 / 19:00開演
入場:3,000円

https://www.liquidroom.net/

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