マフィアは物語る:TTT_MSW 18aw

24歳のデザイナー、玉田翔太が手がけるTTT_MSW(ティー)のショーが開かれた。まずはじめに、この1分間のムービーを観て欲しい。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Houmi Sakata
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23 March 2018, 4:43am

3月21日の夜。文化服装学院在学中の19歳にブランドを立ち上げた、24歳の新鋭デザイナー、玉田翔太が、“AT TOKYO”枠として初となるランウェイショーを催した。今季のAFWTに参加するブランドのなかで最年少だ。彼と同い年であるCGクリエイターの衛藤隆世がこの夜のために制作したティザームービーは、とある“マフィア”の車と一般人の車がクラッシュして、前者は木に衝突、後者は池の中に突っ込んでしまう。そりゃ、マフィアのほうは黙っちゃいない。

東京プリンスホテル内にあるガーデンアイランドに設えられた空間は、フラットな映像世界が具現化したものだった。マフィアが乗るクラシックカーのボンネットが、草花に覆われながら木(もちろんリアル)に食い込んでいる。会場中央は白い幕で覆われていて、落ち葉と稲穂でつくられた道がある。このビックストーリーを綴り、空間のトータルディレクションを手がけたのは、野崎くんこと野崎浩貴だ。「一癖も二癖もある、自分が普段遊んでいる仲間たちと真剣になって作り上げたショーです」と、ショーを終えたばかりの玉田翔太が話す。「架空のマフィアチーム」であり、彼と同世代の仲間たちで結成したというクリエイター集団「Half Eyes Purple Dragon(H.E.P.D)」が、饒舌に“物語る”ショーが始まった。

能天気な口笛が会場に響くと、ブレーキ音と衝突音——。白い幕が開いて現れたのは、枝木に囲われた例の“池”。車は突っ込んではいないが、フロントライトの破片はそこらに飛散している。スタイリストの猪塚慶太によって生み出された、キャラクター豊かなマフィアの子分や構成員らしき人々と、さしずめボスの愛人らしき人(こんな一大事なのに窓でヘアスタイルを確認しているあたり肝が据わってる)たちが、廃車の後部座席のドアから立て続けに現れる。フェイクファーコート、レザーブルゾン、ジャージにフーディ……。あくまでストリート&カジュアルウェアだが、ギラギラと光るベルトのバックルと絶妙なアウターのボリュームが“マフィア”感を引き立たせるのに一役買っている。“腰パン”したり、ドューラグもゴールドメッキのグリル光りも、もうクールだと言わざるをえない。「一人ひとりに“役”があるという設定でつくりました」

「自分なりのマフィアを想像して、テーラードやスーツ以外のものでは、ベルベットや光沢感のある素材でセクシーさを出してカジュアルな洋服に落とし込みました」。ショーが進むにつれ、どうやら幹部らしき人たちが。ジャケットやコートと、“子分”たちよりフォーマルにキメている。そして遂に、深い溜息をついたマフィアのボスが現れる……。フィナーレ。池に突っ込んだ車の水飛沫のようなものがフラッシュバックするような演出。救急車のサイレンが、暗転した会場に鳴り響いた。

「モデルには、周りの友達ばっかり出演してもらいました。感謝の気持ちを胸に、スタッフだけでなく、信頼できる仲間たちとセッションしながら創り上げました」。とくにメンズモデルのキャスティングが冴える。KANDYTOWNのIO、YENTOWNのkZm、太田莉菜、YOUTHQUAKEのSUNHYUP KIM、Yudai Tanaka、Udai……。活躍するジャンルを越えて同世代感覚を共有する、玉田翔太にとってかけがえのない友人たちだ。さらに、オフィシャルフォトグラファーを担ったのは、OKAMOTO’Sのオカモトレイジ、kudosのデザイナーである工藤司、デザイナーでありフォトグラファーの池谷陸の3人、ビデオグラファーは山田健人という面々。彼らの傑出した表現によって、この夜は、ブランドヒストリーに鮮やかに刻まれるにちがいない。

玉田翔太の友人である、同世代のデザイナーやクリエイター、モデルらも多く会場に駆けつけていた。「俺たちはこれをクールだと直感するんだ」と言わんとして、“自分たち”が包括したものでもない退屈な世代論を、図らずして打ち破らんとする鋭いエネルギーがこの空間に渦を巻いていた。TTT_MSWによる、セルフ・イントロダクション的ドラマトゥルグだ。