北村匠海インタビュー:蜘蛛の巣の上で

弱冠二十歳にしてキャリア10年。ときおり少女のようにも見える外見とは裏腹に、自分の武器で自己発信を叶えようと奮闘する新世代の表現者。とらえどころのない北村匠海の素顔を追いかけて。

by Wakako Shudo
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17 April 2018, 9:40am

小学校3年生でスカウトされてデビューしてから、数々のドラマや映画に出演してきた北村匠海。子役からスタートして主役級の俳優に育つのは稀といえる日本の芸能界において、着実にその存在感を大きくしている。注目の若手俳優であり、ダンスロックバンドDISH//のリーダーとしての顔も持つ多忙な二十歳(はたち)。そして自身のSNSではミレニアル世代らしく、簡潔な文章と詩的な写真で個性を打ち出す。その器用さは天から授かった賜物なのか、それとも努力で勝ち取ったものなのか。

「僕は一つのものを突き詰められないんです。芝居だけじゃなく、バンドのDISH//ではボーカルとギター、作詞作曲にも挑戦しています。音楽を始めたのが中学生のときだったので最初は試行錯誤しながら歌っていた部分もありましたが、だんだん自分のやりたいジャンル、歌いたい曲が見えてきて、作詞作曲もするようになりました。写真も撮ってるんですが、今後は映像も撮ってみたい。ストイックになれない人間だからこそいろんなものに目を向けるべき、と感じています。ファッションでも違う時代のものに袖を通せるから古着が好きで、40年代、50年代の服も着ます。その時代の空気をまとえるってすごいな、ファッションでしかこれは味わえないな、と思います」

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父親からライカのフィルムカメラを貰って17歳から始めたという写真は、撮影現場やオフの日に友人の姿を撮るだけでなく、スタジオに入って照明を組んで挑戦的な撮影をしたり、と本格派。「高校3年生の頃、映画『ディストラクション・ベイビーズ』の撮影をしていたときから写真にハマり出したんですけど。この作品で同世代の俳優、村上虹郎に出会えたことが大きくて。彼の影響で、“俳優“という職業の可能性、その自由度に気がついたんです。カテゴリーに縛られず、“俳優“でいることで、どんな表現でも貪欲にトライできる、すごい得してる職業なんだな、と気づいてから自分が変わりました。芝居をずっと続けていく? 音楽もやっていく? って決める必要はなくて、自分からしか生まれない何か、いわゆるオリジナリティを出せる。それがこの世界の魅力だと思うんです。そういう、僕だけのカルチャーみたいなものをこの先も作っていければいいな、と。つまり、僕はずっと表現者でいたいんです」

2017年の主演作『君の膵臓をたべたい』が興行収入30億円を突破するブロックバスターとなり、自身も同作で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2018年1月から3月まで放送していたドラマ『隣の家族は青く見える』では、年上の恋人と暮らす同性愛者の青年という挑戦的な役柄を等身大に、かつ魅力的に演じて話題をさらった。

「役作りとして実際にLGBTの方にお会いしてお話を伺ったんですけど。みなさん『いや別に普通なんだけどね〜』って言うんです。当然ですよね。恋愛感情っていうのは、人間なんで、同じなんですよ。人を好きになるときって、男女でも、男同士でも、女同士でも、なんら変わりはないはず。だからあのドラマの中では、恋愛してる人の素敵な感情、その人の可愛さみたいなものを伝えよう、と強く意識しました」

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子役時代の自然な演技がいまだに高く評価されているが、本人には“芝居“していたという意識はなく、セリフの意味も理解せずに発していたという。小さい頃から現場に出ているとそんな特別な環境にも慣れてしまい、これが“仕事”だという意識を持てるまでに何年もかかった。「10歳のとき出演した映画『重力ピエロ』ではレイプされて生まれた子を演じて、お会いする方々に『北村くんて、あの役を演ってた子か!』と覚えていただけてるんですけど、実はあれは演技でも何でもなくて。役の重みも、セリフにあるレイプって言葉の意味も知らずに、ただ子どもの僕が喋っているだけ。それが演出の力で名演に見えているだけ」以来、注目の子役として主人公の幼少期、主要な登場人物の回想シーンなど、いわゆる誰かの影を演じることが増えた。そんな彼が中学生でバンド活動を始めフロントマンとなり、自分自身を表現することで変化が訪れたという。

「自分も少しずつ成長していろんな人との出会いで周りが見えてきて、役の幅のために自分自身の深みをもっと掘り下げていきたい、と思い始めたんです。芝居は自分がつねに白紙なイメージ。そこに監督と話して色をつけていく作業。でも音楽の仕事はつねに自分の色を持っていないといけないと思っているんです。音楽をやってなかったら、芝居でたどり着けなかった感情はきっとあるし、芝居をやっているからこそ音楽で活用できる表現力もある。それが自分の強みでもあります。僕自身のバランスは、自分が真ん中で、芝居、音楽、写真、服とか……いろんな要素で蜘蛛の巣みたいなものができて、宙に浮いていられる感じ」

彼のように“芸能界”というフィールドにいなくても、吸収したものをデジタルツールを駆使して自分なりの表現で誰もが発信できる時代になっている。表現者としての北村匠海は、そんな未来をどう見据えているのか。「いまは自分でメディアを持てたり、自分の世界を展開する自由があるからこそ、自分の発する言葉の影響力や重みも感じないといけない。もっと言葉も大事にしていきたいですね」

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Credit


Text Wakako Shudo.
Photography Bungo Tsuchiya.
Styling Shinya Tokita.
Hair and Make-up HORI at Be Natural.
Photography assistance Wakaba Noda and Masaki Nagahama.
Hair assistance Akimi Kono.

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