吉沢亮:流動的に、まっすぐに

突出した美形であることが先行しがちだが、その演技力から与えられる役柄はさまざま。飾り気のない等身大な自分と役の間を行き来する24歳、吉沢亮という底知れない魅力。

by TOMOKO OGAWA
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11 April 2018, 7:20am

澄んだ瞳に端正な顔立ちながら、三枚目から地味役まで驚くほど馴染む。作品によって印象も髪型もくるくると変わる役者・吉沢亮。人見知りな少年だった彼が母の勧めで芸能の世界に入ることになったのは、15歳のとき。現在、若手実力派俳優の中でも最も旬を迎える彼が、役者として生きていく覚悟をしたのは、20歳を越えてからだったという。「小さい頃は、いろんなことに反抗していた気がする。まつ毛が上を向いているので、『女の子みたいだね』と言われるのがすごく嫌で、同級生の男子とよく喧嘩してました。役者もバイト感覚でやっていたので、全然やる気がなくて、ずっと辞めたいと思っていたんです。でも、成人するにあたって、周りも大学に入るのか就職するのかを悩む時期だったりするなかで、何となくこれが自分の仕事なのかなと実感が湧いてきたというのもあって。役者を辞めたときに自分には何もないなと思って、責任感みたいなものが生まれてきた感じです」

芝居と向き合うことを決めた2015年頃から、映画の出演作が徐々に増えていく。2017年には、世界で活躍するイスラエルのコンテンポラリー・ダンスの演出・振付家ユニット、インバル・ピントとアブシャロム・ポラックが手がけた「百鬼オペラ『羅生門』」にも参加し、堂々たる美声とパフォーマンスを披露していたのも記憶に新しい。「やりごたえがあったというか、初めて舞台って楽しいんだという感覚があった。精神的に辛いことも、今まで以上に多かったんですけどね。それまでは、舞台は稽古を積み重ねて作り上げたものを完璧にこなすものだと思っていたんですが、共演者のみなさんを見ていても、その場その場で芝居が変わっていくので、それでいいんだなと。前にやったことをなぞろうと思っても絶対に同じ芝居にはならないから、その場で生まれることを正直にやっていったほうが、初めて観る人にとっては一番いいのかなって考えるようになりました」

2018年は、映画出演作がすでに7本待機している。廣木隆一監督による人気少女コミックの映画化『マーマレード・ボーイ』の主演や、犬童一心監督作『猫は抱くもの』では猫役を演じるなど注目作が続く。そして、ゲイとして生きづらさを感じているいじめられっ子の山田一郎を演じた、行定勲監督による岡崎京子の人気漫画の映画化『リバーズ・エッジ』で見せてくれた、原作の山田でしかない!と思わせる佇まいも印象的だった。吉沢は、「掘り下げても底が見えない役だった」と山田という役について振り返る。

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「最近は、漫画原作をやることが多かったんです。そういう場合、漫画や台本に答えが書いてあるから、掘り下げられるんですけど、『リバーズ・エッジ』は作品にも役にもすごく余白があって、わからないことが多かった。でも、読んでいると生まれてくる衝動みたいなものはあるんです。山田を演じるならそれを言語化できるくらい理解しなきゃと思ったので、ずっと彼のことを考えていました。ちゃんと掘り下げないと、表面だけになっちゃうような役だったし。現場に入る前も現場でもずっと悩んで、その悩みが晴れないまま終わったという感じでした(笑)。まあ、結果的にそれで良かったのかなと思うんですけど。芝居の技術的なことじゃなく、どうやってその場で生きているかってことをずっと考えていましたね。そういう役には、今まであまり出会ってこなかったので」

最近では、根暗な役が続いていたという吉沢だが、その素顔がネガティブ&シャイだというのは自他共に認める事実。これは年齢を経ても変わらないところだという。「ポジティブに考えられない人間なので。でも、役を演じるうえでは気持ち悪いとか、闇を抱えているとか、ネガティブな役のほうが力を入れずにできる。そういう心情は体質的に出しやすいんだと思います。明るい役となると、“ヨシ!”って気合いを入れないとできないですね(笑)。でも、最近は根暗な役が続きすぎて少し疲れてしまったので、今は久々に馬鹿な役をやってみたいなって。コメディをやるのは好きなので」

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これまでの会話を通じて、自意識やエゴを表にダダ漏らすことを美徳としない人だということはひしひしと伝わってきたが、ここは人とは違うなと思う部分についてたずねてみると、「絶対こうしなきゃいけないという芯だったり、絶対にこれは通すという筋が一切ないところ」ときっぱり。「だから、周りの意見をすぐ素直に受け入れて、やっちゃったりする。芯がある人は、この人ってこういう感じだよねというのが伝わりやすくていいなとか、接しやすいんだろうなと思うこともありますけど、僕はもともとそういうのは苦手だし、別にこれでいっかと。僕の場合、自分はこういうのがやりたいというのが見えた瞬間、冷める気がするんです。それが格好良ければいいんですけど、僕の持っているものがそういう格好良さを生む気がしないので」

そんな彼は、オリジナリティとは「自分が好きなものとか、自分がやっているうえで信じているものをやるということ」だと考える。「いろんなものが出尽くしている今、オリジナルってなかなか生まれないと思うんですよね。それっぽくやっているだけだと自分の色が出てこないというか。そういう中でも、自分が好きなものとか、やっていることを正しいと信じられてはじめて、自分の色が出てくる気がする。僕の特徴とは真逆ですけど(笑)」流動的かつ可変的で絶妙なバランス感覚を持つ彼が、役者でい続けることを選択した理由は、常に自分で答えを模索しながら、変化をしていくことを求められる飽きのこないこの仕事が、彼の性分にぴったりと合っていたからなのだろう。だから、彼はいつかくる未来ではなく、今この瞬間をまっすぐに見つめる。「こなせるようになっちゃうと、つまんなくなるんだろうなって気はしています。楽しいと思わないと、絶対できないことですし。今の仕事を一つひとつ大事にして、ちゃんとぶつかっていたら毎回楽しいんですよ。もちろん、悩みも多いですけど。それが、僕が役者を続けていられる理由だと思います」

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Credit


Text Tomoko Ogawa.
Photography Yusuke Abe.
Styling Daisuke Araki.
Hair Masanori Kobayashi At Shima.
Styling Assistance Yang Yu.

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