『さよなら、僕のマンハッタン』:カラム・ターナー interview

若手俳優の注目株カラム・ターナーが、自身の反抗期、共演者から学んだこと、そしてその旺盛な野望を語る。「ソフィア・コッポラの作品にも出てみたい。もし死から蘇ってくれるならば、黒澤明とも仕事をしてみたい」

by Takuya Tsunekawa
|
10 April 2018, 8:36am

『(500)日のサマー』(2009)のマーク・ウェブ最新作『さよなら、僕のマンハッタン』を特徴づけるのは、現在28歳のロンドンはチェルシー生まれの英国俳優カラム・ターナーだ。初主演作『クィーン アンド カントリー』(2014)の監督ジョン・ブアマンから演技を「ナチュラル」と高く評価され、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)の続編『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』では主演のエディ・レッドメインの兄役も射止めた若手有望株である。

© 2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

本作では、アダム・レオンによるボーイ・ミーツ・ガールである『浮き草たち』(2016)においてポーランド系移民のダニー役で新鮮な印象を残した彼が、再びニューヨークを舞台に、憂いに沈んだ表情を浮かべる素朴な青年トーマス・ウェブを演じている(当初はマイルズ・テラーの起用が予定されていたようだ)。不思議なことに、彼の瑞々しく端正な佇まいはニューヨークの街とよく似合う。この両作で演じる対照的な階級に属すふたりからは異なるNYの姿が見えてくるが、どちらも自分の人生や家族の問題に囚われて立ち往生している状況にいるのだろう。

「やはり大きな違いは、トーマスが恵まれた家庭のお坊ちゃんで大学の学費や家賃を払ってもらったり、親と離れていても守ってくれる安全地帯にいる一方、料理人を目指しているダニーは母親を支えつつ、フライドチキンのファーストフード店で働いて家計を支えていることだと思います。そういった状況にいるため、ダニーの方が自分自身をよくわかっている。ダニーは金銭的に行き詰まっている状況にいますが、トーマスは精神的に行き詰まっている状況にいます。トーマスは彼の精神状態を妨げている自分の知らない真実によって混乱している部分があるけれど、意識的にどこかに行って何かやっていきたい強い気持ちがある。ダニーの方は、自分でもっと突き抜けていきたいところはあるものの、父親が亡くなってしまい、兄も家計を支えるべきところをやっていないため、彼が母親と一緒にやっている。逆に言えば、ダニーの場合はそばに母親がいるわけです。トーマスの場合は自分ひとりでやっている。そういう点がこのふたりは少し違うと思います」

© 2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

マンハッタンはアッパー・ウェスト・サイドで育ち、大学卒業後、就職はせず親元を離れ小説家を目指しながらロウアー・イースト・サイドでひとり暮らしを始めたばかりのトーマスは、彼を愛していない古書店員の女の子ミミ(カーシー・クレモンズ)に恋をしている。ある日、彼はミミと赴いたナイトクラブで父(ピアース・ブロスナン)とその愛人ジョハンナ(ケイト・ベッキンセール)の密会を目撃してしまう。ジョハンナを父から引き離そうと彼女の跡を追う内に、トーマスはミステリアスな年上の彼女との情事に溺れていくことになる──探偵やスパイのように追跡する場面をアルフレッド・ヒッチコックを彷彿とさせるタッチでウェブは撮っている(彼の長編第2作『アメイジング・スパイダーマン』(2012)では主人公ピーターの部屋に『裏窓』(1954)のポスターが貼ってあったことも思い出される)。大人になることへの不安や焦燥を解消しようとするかのように汚れていくその姿は、確かに『卒業』(1967)を彷彿とさせるものがある。

© 2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

「19歳から21歳ぐらいまでのあいだ、すごく自分で反抗していた部分がありました。特に母親に対してです。母親に自分自身を見出してしまって、似ているが故に自分は別の人間になりたいという強い気持ちが芽生えていたのです。その頃、ぼく自身、実はトーマスに非常に似た行動も取りました。ロンドン内で行ける一番遠いところまで行きました。ロンドンの南から北へ移動したのです。トーマスはアッパー・イースト・サイドからロウアー・イースト・サイドに行った。トーマスのような自己発見ではなかったけれど、それによってぼくも色々な経験を通して自分を見つけられた部分がありました」

この映画の中心にはトーマスと同じアパートに住む隣人で小説家のW.F.ジェラルド(ジェフ・ブリッジス)のメンターの関係がある。ウェブはこれまで男女間のロマンスに注視してきたが、『gifted/ギフテッド』(2017)に続き、本作でも(擬似的な)親子関係を探求していると言える。

「実は、隣人ではないけれど、ぼくにもW.F.に相当するような人がいます。年長で尊敬する人です。ひとりはアクティング・コーチ。年長の人だけれども、友人としてすごく近しい関係です。もうひとりは、ジョージというエジプト出身のロンドンのご近所さん。子どもの頃から知っていて、いまは70代ですが、とても大事な人生の先輩です。最近はぼくも若い人にアドバイスをすることもありますが、年長の人も若い人と意見交換をすることで色々なことをお互いに学ぶことができると思います。このW.F.は、トーマスに好きな女の子を追っかけるべきだと背中を押してくれるような存在だと思う」

© 2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

トーマスとは異なり、ターナー自身は16歳で学校を辞め、大学へは進学しなかったという。幼少期よりずっとサッカー選手になることを夢見ていたが19歳で怪我を負ってしまった彼は、20歳頃より演技を始めた。今作では彼はベテラン俳優と面と向かって演技に臨んでいる。

「ドラマ・スクールに通って演技を学んだわけではなく、すべて現場で学んできました。錚々たる面子に囲まれ、彼らと一対一で演技をする経験は学び以外の何者でもないものでした。ジェフ・ブリッジスはこの映画の尊敬すべきアイコンのような存在であり、彼とは2週間がっつり取り組んで演技をさせてもらいました。ピアース・ブロスナンは『007』で演じた中で最高のボンドのひとりだと確信している人。ケイトは信じられないぐらい優れた俳優で、シンシア・ニクソンはすべての中枢にいるような存在でした。ベテランの人たちだけではなく、ミミ役のカーシー・クレモンズもすごくいい俳優でした。残りの3週間は、主に彼らとアンサンブルだったり一対一だったりで演技をさせてもらいました。ただ、この経験で何を学んだかはなかなか言葉にはできないところがあります。いまはそれが段々と体に染み付いて落ち着いてくる時期なのかもしれない。でも、今回のいちばん大きな学びを挙げるとすれば、それはリラックスすることだと思う。信頼感を持ってリラックスすることによって、緊張したり神経的に繊細になってしまう部分をコントロールできる。そういう緊張感を否定的に考えるのではなくポジティヴなものに持っていくこと、どうやってその昂ぶる神経と上手くやり合っていくかということを学んだと思います。だって普通に考えたら、パニックに陥ってしまう面子ですよね。だけど彼らが愛情を持って接してくれたことで、落ち着いて演じられたのだと思います」

サイモン&ガーファンクルの同名曲から取られた原題(『The Only Living Boy in New York』)を持つこの映画で、この悩める主人公の名前は、その曲に登場するトムの名と『卒業』の原作者チャールズ・ウェッブの姓──あるいは『サマー』の主人公の名と監督自身の姓──に由来するだろう。興味深いことに、トムもトーマスも(あるいはピーターも)芸術的で理想主義的な男性だが、彼らは好意を寄せる女性から最終的にボーイフレンドにするには悪い選択だと見なされる点で共通しているかもしれない。思えば、『サマー』で初めてサマーと結ばれたトムは、その喜びのまま街に出ると、鏡に映る自分がハリソン・フォードに見える場面があったが、ターナーは彼(あるいはリチャード・ギア)の若い頃とどこか似ている気もする。

© 2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

「マーク・ウェブがどういったムービー・マジックを仕掛けるかその雰囲気を理解したかったから『サマー』は事前に観ていました。すごく面白い作品だし、本作と共通する部分は確かにあると思います。特に今回のトーマスの役に関して、映画の冒頭で歩いてまた戻ってくるミミとのやりとりの場面、ふたりの距離感の撮り方の軽い雰囲気なんかに共通点があると思う。マークは、演出的に映画を重くしないで、軽く楽しく撮ってみせるのです」

なお、ターナーは幼少期より『フリー・ウィリー』(1993)を何度も観るほど愛し、最も感銘を受けた映画にシェーン・メドウズ『A Room for Romeo Brass』(1999)を挙げているが、アメリカ映画にも積極的に出演している彼にほかの好きな作品や監督についても訊いてみた。よい役割やよい物語を求めて、今後どのような映画への出演を志向しているのだろうか。

「シェーン・メドウズは大好きな監督なので、彼とは機会があればぜひ仕事をしてみたい。マーティン・スコセッシやボブ・ラフェルソン、それから最近では『神様なんかくそくらえ』(2014)や『グッド・タイム』(2017)のサフディ兄弟の作品が好きです。ソフィア・コッポラの作品にも出てみたい。もし死から蘇ってくれるならば、黒澤明とも仕事をしてみたい。決まったような作品ではなく、様々な種類の監督の異なるタイプの作品に出たいのです。『浮き草たち』でアダム・レオンと仕事ができたのもすごく恵まれていることだと思う。異なる文脈の様々なタイプの映画──たとえばピクサーのアニメだってやってみたいし、スリラーやコメディと幅広くやってみたい。『ファンタスティック・ビースト』でのデヴィッド・イェーツとの仕事も楽しかったし、あのようなファンタジー系の作品ももっとやりたい。あと、『Kissing Candice』(2017)を撮ったアイルランドの女性監督イーファ・マッカードル(Aoife McArdle)は素晴らしい才能があると思う。それと、もしぼくがいま時空を超えられるなら、70年代に行きたい。『ファイブ・イージー・ピーセス』『キング・オブ・マーヴィン・ガーデン 儚き夢の果て』『大統領の陰謀』、そしてアラン・J・パクラ『コールガール』、この辺りの作品に出てみたいからです。パクラは『ソフィーの選択』も作った素晴らしい監督だと思う」

さよなら、僕のマンハッタン
4月14日(土)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国順次公開

Tagged:
Gifted
(500) Days of Summer
kiersey clemons
The Only Living Boy In New York
Marc Webb
Callum Turner