Photos courtesy Palace

夢の協働:PALACEとRalph Laurenのコラボはなぜ最高か?

これはまぎれもない事実。

by Felix Petty; translated by Nozomi Otaki
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16 November 2018, 7:30am

Photos courtesy Palace

今年9月、Ralph Laurenの創立50周年を記念するショーには、各界から200名を超えるゲストが駆けつけた。カニエ・ウェスト、オプラ・ウィンフリー、ロバート・デ・ニーロ、スティーブン・スピルバーグ、トミー・ヒルフィガー、ダイアン・フォン・ファステンバーグ、マイケル・コース、カルバン・クライン…。錚々たる顔触れと同様、まさに圧巻のショーだった。

ランウェイには、西部のフロンティア精神から東部の上流階級まで、米国らしさを象徴するこのブランドが築き上げてきた歴史を称える111のルックが登場。プレッピーから、ジョッキー、ネオ・カウボーイ、アル・カポネ風、NYのクルー〈Lo Life〉まで、半世紀にわたって多様なスタイルや文化を生み出してきたRalph Lauren。ひとつの世界を創り上げ、あらゆる人びとを迎え入れてきたブランドにふさわしい祝祭だった。

このショーから約1ヶ月、今回のPALACE×Ralph Laurenのコラボレーションのヴィジュアルでは、フォルクスワーゲンのゴルフが米国の低木地帯を駆け抜け、モデルは馬を引き連れている。マルボロレッド片手にバドワイザーを飲むような、すこぶる米国的な光景だ。ゴルフの車体はPALACEのロゴ入りで、車番はRalph Laurenのカスタム仕様。馬にまたがるのはPALACEに所属するスケーター、ルシアン・クラークだ。ブランド創立50周年を記念して、Ralph Laurenはロンドンの若きスケーターたちに自らの遺産を託し、自由にアレンジする機会を与えた。このコラボレーションが発表されたのは10月19日。東京の交差点の電光掲示板に、突如としてPALACEとRalph Laurenのロゴが並んで映し出された。

Palace Ralph Lauren Collaboration

これをここ最近ブームとなっている、ハイブランド×ストリートウェアのコラボのひとつとみなすこともできる。SupremeLouis Vuittonコラボ以来、ストリートウェアの衰退が宣言されたと思えば復活し、かと思えばハイファッションの衰退、復活…とめまぐるしい。それぞれのスタンスや見据える方向によって意見はさまざまだ。キム・ジョーンズの後任として、Louis Vuittonメンズウェアのアーティスティック・ディレクターに就任したヴァージル・アブローが、ストリート感溢れるデビューコレクションを発表したあと、この論争はさらに激しさを増した。

ファッション/ストリートウェアをめぐる議論が白熱しているいっぽう、転売業者、いわゆるfuckboi(ブランド物を好み、周りからオシャレだと思われたい男性)、カルチャーを利用した金儲け、インフルエンサーに憧れる若者の勢いは、徐々に収まりつつある。近年のコラボレーションは目新しさを失いつつあり、いずれも予想を超えるものではない。Louis Vuittonには貴重なコラボ、限定版、独自の世界観を発信してきた歴史があり、それはSupremeも同じだ。スタイルは違っても、これらのブランドの信念は共通している。

しかし、PALACE×Ralph Laurenの場合は少し違う。なぜなら、PALACEはずっと異質なブランドだったからだ。彼らの活動には、非常に英国的なユーモアのセンス、英国の価値観が反映されている。ロンドン、サウスバンクのスケートクルー〈Palace Wayward Boys Choir(PWBC)〉から自然発生的に成長していったこのブランドは、より現実に根ざしているのだ。

Palace Ralph Lauren Collaboration

「スケートカルチャー自体はかなり米国的だけど、PALACEはすごく英国的」と写真家のアラスデア・マクレランは2016年、PALACEのスケーターを撮影した写真集発売時のインタビューで語った。「これまでのスタイルとはまったく違います。彼らの服装はとても英国的で、カジュアルズとかフットボールのテラス(スタジアムの立ち見席)文化に近い。〈PWBC〉のメンバーはスケーターっぽくない、カジュアルズみたいな格好をしていました」。このような〈カジュアルズっぽさ〉こそが、PALACEの核、またはその魂であり、PALACEというブランドを際立たせている。テラスカルチャーのファッション、イタリア製スポーツウェア、adidasのスニーカーを取り込んだスケートウェアだ。

PALACEとRalph Laurenのコラボがごく自然で対等に感じられるのも、このテラス文化的な要素のためだろう。今回のRalph Laurenのターゲットは、米国の白人エリート層ではない。もっと庶民的で、カントリークラブよりナイトクラブ、本物の馬より馬力のある車。兄の友人の改造ハッチバック、郊外での娯楽、街への日帰り旅行、オンボロのスクーター、ミートパイとニセモノのBurberry、缶詰の万引き、サッカーボールの壁当てなどを想起させる。

Ralph Laurenは、これまでのPALACEの活動や表現、つまり広い意味での〈英国らしさ〉に見事にマッチしている。しかしこのコラボはチープさや安易さ、〈Lo Life〉のスタイルとは一線を画し、より落ち着いた上品な仕上がりになっている。洗練されたブラウンのダウンジャケット、上品なチェックパンツ、汚れるのでクラブには絶対履いていけないローファー。ゴルフが刺繍されたシャツ、絹のパジャマ、キックフリップを決めるテディベアが編み込まれたニットもある。

Palace Ralph Lauren Collaboration

これは私にとって史上最高の、もっとも心躍る協働であり、〈コラボ疲れ〉したファッション業界にもたらされた1杯のエスプレッソだ。単にロゴを並べ、ふたつの世界観を結びつける以上のことを成し遂げている。東京に旗艦店をオープンしたばかりで、来年には10周年を迎えるPALACEにとっては、またとない機会だ。しかしビッグブランドに仲間入りを果たした今も、PALACEは親しみやすさ、ユーモア、誠実さを失っていない。すばらしいことだ。

数日前、私はFacebookで、自分がヘッドライナーを務めたDJイベントのフライヤーを見つけた。開催はたしか2010年頃。そのラインナップのなかに、なんとPALACEの前身となったスケートクルー〈PWBC〉の名前があった。人生は思いがけない出来事に溢れている。

This article originally appeared on i-D UK.