まさかのカムバックを果たしたファッションブランド7選

2000年代への懐かしさが溢れて止まらない!

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23 October 2018, 7:46am

カムバックするなら慎重に、これが鉄則だ。2度目のチャンスは最後のチャンス。いちどシカトされれば永遠に忘れ去られる。成功の掟は忍耐、そしてタイミングだ。カムバックは結構だが、正しい時機にカムバックすればなお良い。ファッション業界だけではない。音楽業界においてもそうだし(好例:ALL SAINTS)、政界においてもそうだ(悪例:ジョー・アルパイオ)。ファッションにおける〈ノスタルジア・サイクル〉は今や簡単に予想できるので、ブランドがカムバックの的確な時機を選ぶことは難しくない。FILA、Ellesse、Esprit、Kappa、Sergio Tachini、Championなど数々のブランドが、90sリバイバルの波に乗り成功した。しかし予想もしなかったカムバックが実現することもある。例えば2018年は、90年代後半から2000年代前半のティーンを熱狂させたフランスのブランド、DDPが復活した。今年の夏、あの見覚えのあるロゴのついた黄色いパーカーを着ているA$AP Rockyを目にするまでは、誰もが忘れていたブランドだ。ここ最近まさかのカムバックを果たした、計7ブランドをご紹介。

DDP
〈Docks Dupont〉という名前に心当たりがあるかたは? 1980年、ロラン・カイエとディディエ・モルーが立ち上げたボルドー初のマルチブランドストアだ。これが前身となって生まれたのがDDP。1996年に誕生して以来、2000年代初頭までティーンたちを熱狂させたブランドだ。ブランドロゴは黄色いデカあたまのキャラが使われているひどい代物で、イケてるティーン向けブランドというより、子どもの頃使っていた安い〈Bic〉のボールペンを思い出す。当時絶大な人気を誇ったが、DDPが本当にクールとされるブランドとなるためには2018年まで待つ必要があったのだろう。そして今年、ブランドのルーツに戻って、パーカーオーバーオールなどを発表すると、今年の空気に100%フィットし、見事なカムバックを果たす。待てば海路の日和あり、とはよく言ったものだ。実は2009年にこっそりプレタポルテのウィメンズ・ラインをたたんでいたのだが、今やDDPのInstagramは、思いがけない新たなハイプの場と化している。火をつけた張本人は、A$AP Rockyだ。

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Vetements spring/summer 16, photography Mitchell Sams

Juicy Couture
ファッション業界への進出という夢を抱いていた友人同士のカリフォルニアガールズ、ジェラ・ナッシュとパメラ・スカイスト=レヴィは、1996年、いかにも90年代的なゴテゴテのロゴを考案し、「Made in the glamorous USA」を標榜するブランドを立ち上げた。2000年代初頭、Juicy Coutureはセレブのお墨付きを得る。ナッシュとスカイスト=レヴィが贈ったベロアのトラックスーツを、マドンナが着用したのだ。それからJuicy Coutureの快進撃が始まる。当時のスターたちがこぞって、Juicy Coutureのド派手な色とゴールドの〈JC〉ロゴに身を包み始め、Juicy Coutureはリアリティ番組『シンプル・ライフ』世代の女子たちの、ゴージャスなユニフォームと化す。いつのまにかパリス・ヒルトンがブランドを代表する非公式アンバサダーとなっていたが、彼女同様、ブランドも2010年代まで生き延びることはできず、徐々に忘れ去られていく。しかし2016年にVetementsによってよみがえり、ニューヨーク・ファッションウィークで注目される。以来、ゼロ年代リバイバルに救われながら、新たなクリエイティブディレクター、ジェイミー・ミズラヒのもとで、第2の春を謳歌している(パリスも同様のようだ)。

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Image courtesy of Opening Ceremony

Esprit
カムバックを成功させるには、謙虚でなくてはならない。つまり、現在流行しており、まだ「どうカムバックすればいいんだ」と頭を抱える必要のないブランドのサポートを得る方法を知っていなくてはならない。Espritはそれを知っていた。1980~90年代、カラフルなストライプで人気を博した同ブランドは、2011年に全米の店舗撤退、2015年に世界の主要店舗の大半を閉店するに至るほどの憂き目を見る。そこから起死回生を図るべく、2017年にOpening Ceremonyとパートナーを組んだ。Opening Ceremonyのウンベルト・レオンとキャロル・リムによる、抜本的な対策が必要だったのだ。店舗を失ったEspritは、オンラインで新しい世代に接触を図りながら、自らの定番アイテムへ回帰する。ランニングウェア、Tシャツ、ダウンジャケットなど全てに、Espritのシグネチャーカラーやパターンを使用し、全アイテムをリーズナブルな価格で提供する…。それがOpening Ceremonyによる決断であり、ブランドの核にある精神を守っていくための策だった。この2017年のコラボ以来、Espritはブランドのシックなスポーツウェアを少しずつ更新しつつある。少しずつだが、着実に成功している。

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A$AP Rocky x Guess Originals, photography Kimi Selfridge

Guess
A$AP Rockyは、落ち目の企業の救世主となる、という使命に目覚めでもしたのだろうか? DDPを立て直す数年前、彼はGuessのリバイバルにも協力していた。Guessは、マルセイユからハリウッドへ移住したマルシアーノ兄弟が1981年に創業したブランド。Guessといえば、スリムジーンズ流行を仕掛けたブランドというイメージが強い。ひと昔前、2000年代半ばの若手ロッカーを席巻したあのスリムジーンズだ。しかしそれ以上に、このフレンチ=カリフォルニアブランドは、超一流のアンバサダーをそろえていた。アンナ・ニコル・スミス、エヴァ・ハーツィゴヴァ、ドリュー・バリモア、クラウディア・シファー、ナオミ・キャンベル…。これでもごくいち部だ。Guessの場合、2010年代に厳しい財政状況に陥ったわけでないが、影響力は確実に落ちていた。しかし2016年後半、創業35周年を迎えたGuessはアイコニックなアイテムを数百種リイシュー。その会場は今はなきクールの殿堂、パリのColetteだった。2017年10月、ブランドはA$AP Rockyとコラボしたカプセルコレクションを発表。今年4月にはスイス系フランス人の人気タレント、ナビラ・ベナティアが、ブランドの〈#newface〉に就任したと標榜。Guessがいまだ時流に乗っている証拠はたっぷりある(もし証拠が必要であれば、だが)。

Von Dutch
Von Dutchをカムバックブランドと称すにはまだ時期尚早かもしれない。一世を風靡したブランドとして私たちの記憶に残っているDDPやJuicy Coutureとは違い、故クリスチャン・オディジェが率いた米国ブランドVon Dutchの復活を望んでいたファッション狂はそこまで多くないだろうし、公式Instagramアカウントのフォロワーが3万人にも満たないVon Dutchは、見事なカムバックを果たしたとは言い難い。しかし、2004年に生きる若者たちの頭を征服したトラッカーキャップは、勇敢なセレブのあいだではいまだに人気だ。2018年の〈MTV Video Music Awards〉では、カリフォルニアのデザイナー、バナ・ボンゴランがリメイクしたVon Dutchキャップを、トラヴィス・スコットが着用していた。ちなみに彼のガールフレンド、カイリー・ジェンナーは、2016年にVon Dutchアイテムを身につけた自らのセルフィーを公開している。少なくとも今だけは、少々時代遅れのブランドに注目し、高校時代の流行りのファッションへの情熱を思い出してみてもいいのかもしれない。しかし、ラッパーのスタイルを夢見ては、失敗する愚民は数多い。とりあえず手を出さないでおくことをオススメする。

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Balenciaga spring/summer 18, photography Mitchell Sams

Crocs
自らの社会的地位向上に必要なのは、よく計画されたパートナーシップだ。2002年創業のCrocsは、その説を2度も証明した。当初、救いようもないほどに実用的な履き物とされていたCrocsは、Christopher Kaneの2017年春夏コレクションのランウェイでファッション業界に進出を果たす。程なくして賛否両論を巻き起こしたが、ファッション業界を制するには〈賛否両論〉が必須だ。そしてデムナ・ヴァザリアによるBalenciagaの2018年春夏コレクションで、Crocsにしかるべき勲章が授けられた。ネットを炎上させた、プラットフォーム型Crocsだ。発表当時、Crocsのマーケティングディレクターはこう説明した。「Balenciagaのオファーを受けたとき、わが社の伝統的なデザインと成型技術の見直しができるチャンスだ、ととらえました」。ファッションアイテムとして、これ以上の醜さは考えられない。しかし昨今のファッション業界では、醜さこそが至高だ。Crocsは、時代をかなり先取りしていたといえるだろう。

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Y/Project fall/winter 18, photography Mitchell Sams

UGG
2000年代を席巻した〈変な〉フットウェアへの、ファッション業界の想いの強さが現れたもうひとつの好例が、UGGだ。元々、オーストラリアのサーファーの冷えた足を温めるためにつくられたUGGブーツは、履き心地が抜群であり、どんなアイテムとも違う唯一無二の見た目であり、90年~00年代を席巻した。ファッション業界が飛びつくには本来それで充分なのだが、グレン・マーティンス率いるY/Projectチームは、才能を全力で投入して、おもしろいアイテムを実現した。今年1月のパリ・ファッションウィークで披露された、暖かいUGGサイハイブーツだ。グレンはUGGらしい特徴にY/Projectならではのひねりを加え、UGGの最高のカムバックを演出した。グレンはこうコメントしている。「UGGを履くと、自分の脚を温かいバターに漬けているような気分になります。太ももまで温かいバターに漬けられるなんて最高じゃないですか?」。Y/ProjectとUGGのコラボは、私たちが想像もしていなかった珠玉のラブストーリーだった。

This article originally appeared on i-D France.